訴状によると、シーインは「『コーチ』の商標と同一または実質的に区別できない、あるいは混同を招くほど類似した標章を、模倣品の販売・流通・広告において使用した」という。さらに、シーインのECサイトで“coach”と検索すると、第三者の出品者による商品である旨の明確な表示が存在しないと主張する。ユーザーが正規の「コーチ」製品と思しき商品を選択した場合でも、出品者情報は極めて小さく目立たないように表示されているため、シーインがその商品を販売または所有していると誤認する可能性が高いという。
訴状には、模倣品とされる「コーチ」のトートバッグ、ハンドバッグ、靴、帽子、財布などの写真が複数ページにわたって含まれており、タペストリーはこれらが「コーチ」の名称、ロゴ、金具、シグネチャーデザインである「C」のマークなどを不正に使用した模倣品だと主張する。また、これらはいずれもシーインのマーケットプレイスに出品されている商品で、タペストリーは、シーインによって製造・販売・宣伝されたと主張する。
ブランド品の模倣品問題は、ファッション業界の恒常的な問題となっている。ミシガン州立大学の調査によれば、2023年には消費者の約7割がオンラインで少なくとも一度は模倣品を誤って購入した経験があるという。
この問題に対応するため、米国議会は約2年前にオンラインマーケットプレイスにおける模倣品対策を強化する法律である「INFORM消費者法(Integrity, Notification and Fairness in Online Retail Marketplaces for Consumers Act)」を可決。これは、消費者に対して第三者出品者の情報開示を義務づけ、偽造品や盗難品の流通を抑制することを目的とするものだ。