「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」は4月2日、アジアで初となるランウエイショーを中国・上海で実施した。披露したのは、昨年9月にニューヨーク・ハンプトンズでショーを行った2025年春夏コレクションだ。ラルフ・ローレン自身が「第二の故郷」と思いを馳せるハンプトンズに立ち返り、インスピレーション源である雄大な自然や家族愛を込めた特別なショーを再現。アジア最大のポテンシャル市場・中国で、ブランドのアイデンティティーを鮮やかに打ち出した。
会場となったのは、上海中心地のROJOアートスペース。足を踏み入れると、そこはまさに、昨年ショーを開催したNYハンプトンズの馬術施設。厩舎を思わせる木目調の設え、馬具をインテリアとして設えた重厚な空間は、中国や韓国、タイなどから訪れたセレブリティーたちを、ロングアイランド東端のリゾートの世界へと誘った。
「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」と「ラルフ ローレン パープル レーベル(RALPH LAUREN PURPLE LABEL)」の前半では、晴れ渡る空や雄大な海を思わせるホワイトやブルー、砂浜のようなサンドベージュを基調としたカラーパレットが印象的だった。スパンコールのきらめきや風に揺れるドレーピーなドレスがアクセントとなり、ハンプトンズの自然の中で満たされていくような、ふくよかな高揚感が会場を包んだ。
冨永愛、20年以上ぶり凱旋
そして、「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」の後半部に移ろうかという場面で、ハイライトが訪れた。ショーゲストたちの喝采を受けて現れたのは、冨永愛だ。胸元が大きく空いたシアージャケットとドレーピーなワイドパンツを纏い、20年以上ぶりに「ラルフ ローレン」のランウエイを闊歩。ショーの最中にたびたび歓声が巻き起こるなど、ニューヨークのランウエイでは見られない光景も、アジアの目を肥えた招待客に「ラルフ」の真髄が伝わった証だろう。
中国では「まだ」200店舗
日本ではアメリカントラディショナルブランドの象徴として不動の地位を築いている「ラルフ ローレン」だが、意外にも中国における知名度はそれほど高くない。中国進出からは20年以上が経過しているが、本格展開はラルフローレンチャイナを設立した2009年以降。店舗数は日本の約300に対して中国は約200で、うち170店舗がここ8年内でオープンしたもの。中国の市場規模を踏まえると展開はまだ限定的でビジネスの歴史も浅いと言える。
中国の消費は不動産バブル崩壊の影響で減速しているが、コロナ禍以降に世界的に見られた“本物志向”の高まりを考えれば、景気回復の折には、普遍的な価値を持つブランドに再び注目が集まるはずだ。そうした意味でも、「ラルフ ローレン」にとって中国は大きな伸びしろが残されている市場であり、今回のショーは現地でのプレゼンスを本格的に高める契機になりそうだ。