カプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)が擁する「ヴェルサーチェ(VERSACE)」と「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」の売却が、大詰めを迎えているようだ。情報筋によれば、買い手の最有力候補と目されるプラダ グループ(PRADA GROUP)は、両ブランドをおよそ15億ユーロ(約2415億円)で買収する交渉の最終段階にあるという。
本件に関し、カプリやプラダ グループからのコメントは得られなかった。
カプリが「ヴェルサーチェ」などを売却したい理由
「ヴェルサーチェ」と「ジミー チュウ」に加えて「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」を擁するカプリは2023年8月、「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)に85億ドル(約1兆2665億円)で事業を売却することに合意した。しかし、両社が保有するブランド間の競争がなくなることで独占状態になるとし、米連邦取引委員会(FTC)は本件を停止する仮処分を求めて4月に提訴。10月に米連邦地方裁判所がFTCの申し立てを認める判決を下したことから、11月に両社は買収契約を双方の合意の上で正式に解消している。業績が悪化しているカプリは、主力「マイケル・コース」の再建に注力するため、ほかの2ブランドを売却するのではないかと以前からいわれていた。

なお、「ヴェルサーチェ」は25年3月13日、クリエイティブ面を率いてきたドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)がチーフ・クリエイティブ・オフィサー職を離れ、4月1日付でチーフ・ブランド・アンバサダーに就任することを発表。後任には、プラダ グループが擁する「ミュウミュウ(MIU MIU)」のデザイン・ディレクターを務めていたダリオ・ヴィターレ(Dario Vitale)が同日付で着任している。
トランプ米大統領の“相互関税”で取引に暗雲?
前述の情報筋によると、最終的な調整が順調に進めば、両社は来週にも買収取引に合意するかもしれないという。しかし、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が4月2日、貿易相手国の関税率などを踏まえて関税を引き上げる“相互関税”を課すと発表したことから、世界の株式市場は大荒れ。カプリの株価は、前日終値比23.6%安の14.99ドル(約2233円)と大幅に下落した。
香港証券取引所に上場しているプラダ グループは、同4.6%安の51.50香港ドル(約927円)とやや緩やかな下げ幅だったものの、予断は許されない。関税のさらなる引き上げ、もしくは引き下げなどがいつ発動されるか予想がつかず、資金調達や事業運営に大きな影響が出るかもしれないことを考えると、事態が落ち着くまで買収取引を延期したり、場合によっては白紙としたりする可能性もあるだろう。