ファッション
特集 NY・ロンドンコレクション2025-26年秋冬

「マーク ジェイコブス」が紡ぐおとぎ話の続章は、新たなクリエーションを生み出す“勇気“が原点

「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」がニューヨーク現地時間の2月3日に2025年春夏コレクションを行った(実売期は秋冬)。非公式スケジュールとなるが、同ショーは事実上、ニューヨーク・ファッション・ウィークの幕開けを意味する。ニューヨーク公共図書館で行われたショーは恒例通りオンタイムでスタートした。
 
長い廊下に一列に並んだ座席の上に置かれたコレクションノートに記された今シーズンのテーマは“勇気(Courage)”。「心、謙虚さ、感謝の心に導かれ、私は恐れが敵ではなく、創造性、誠実さ、そして人生に不可欠な伴侶であることを理解した。自由があるからこそ、私たちは限りなく夢を見て想像し、批判や失敗を恐れずに脆さをさらけ出す(以下略)」と続いている。
 

シンプルなアイテムを際立たせるデフォルメされたシルエット

お馴染みフィリップ・グラスの旋律が流れる中、ランウェイに登場したのは、ボディーアーマーのように身体を保護したニットにボリューム感のあるハイウエストパンツという誇張されたスタイル。ポインテッドトゥのパンプスも不自然なほどにつま先部分が前に突き出している。ここ数シーズン、マークが見せたワンダーランドの続章とも言えるデフォルメされたシルエットで、ダイナミックさを表現したコレクションだ。中綿の入ったローゲージのニットとコーデュロイパンツの組み合わせやノルディック風のニットと丸くパターン取ったスカート、中綿を入れてボリュームを出したトレンチのように、派手さのないアイテムは大袈裟にデフォルメさせることで存在感を出している。こういった、一点投入することでスタイリングにメリハリを付けることができるアイテムも、パワフルなシルエットでありながらデザイン自体はシンプルなものが多く、店頭でも需要がありそうだ。
 
マークは毎シーズン、勇気を味方につけてドリーミーな世界観と新たなクリエーションを行ってきた。ここ数シーズンは誇張されたプロポーションを作ることで新たな世界観を形成しているようにも感じられる。ツンと極端に上を向いたポインテッドトゥのブーツ、逆に丸く膨らんだトゥのプラットフォームパンプスなど、滑稽さがアクセントになるアクセサリーの合わせもマークの常套句だ。パット・マクグラス(Pat McGrath)によるメイクもマークの紡ぐ物語に登場するキャラクターの存在感を強めている。

 
後半は大きなボウを胸元にあしらったガーリーなドレス、アニマル柄のパッド入りコートドレス、丸く膨れ上がったビッグスパンコールのドレスが続く。フィナーレは違った色味の赤でまとめた彫刻のような、それでいて軽さもあるドレスで、お伽話のような夢見心地な世界を締めくくった。フィナーレに現れたデザイナーのマーク・ジェイコブスは深々とお辞儀をし、そっと歩きながら袖へと消えた。コレクションノートの冒頭に記された一文を体現したような謙虚さの表れる振る舞いに心打たれた。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

デムナの「グッチ」は賛否両論? 「ジバンシィ」「トム フォード」「ドリス」も注目の2025-26年パリコレ特集 【WWDJAPAN BEAUTY付録:「第8回WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト」結果発表!】

3月24日発売の「WWDJAPAN」は、2025-26年秋冬パリ・ファッション・ウイーク特集をお送りします。デザイナーのシャッフル人事が続く中、今シーズンは「ジバンシィ(GIVENCHY)」がサラ・バートン(Sarah Burton)で、「トム フォード(TOM FORD)」がハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)で、そして「ドリス ヴァン ノッテン(DIRES VAN NOT…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。