ビューティ

「クリスチャン ルブタン ビューティ」国内百貨店撤退 苦戦の理由は?

クリスチャン ルブタン ビューティ(CHRISTIAN LOUBOUTIN BEAUTY)」が国内の百貨店から撤退する。輸入代理店を務めるエフ・ジー・ジェイとの6月末での契約終了によるもので、現在展開する松屋銀座、伊勢丹新宿本店、ジェイアール名古屋タカシマヤ、阪急うめだ本店、大丸心斎橋店の5つの店舗と各百貨店ECサイトでの販売が順次クローズする。

2016年に日本上陸、
阪急うめだ本店に1号店をオープン

「クリスチャン ルブタン」は、2013年にニューヨークを拠点とするバタルア ビューティ(BATALLURE BEAUTY)と合弁会社クリスチャン ルブタン ボーテ(CHRISTIAN LOUBOUTIN BEAUTE)を設立。14年にブランドのアイコンシューズをモチーフにしたボトルのネイルカラーを発売し、「クリスチャン ルブタン ビューティ」がデビューした。最初のステップで話題を集め、ブランドイメージの構築に成功すると、米国のほかフランスやイギリスをはじめグローバルな市場開拓を進めた。日本市場へは、16年に阪急阪神百貨店を中核とするエイチ・ツー・オー リテイリングの子会社で、セミセルフ型コスメショップのフルーツギャザリング(FRUIT GATHERING)などを展開するエフ・ジー・ジェイがクリスチャン ルブタン ボーテと日本における独占販売権を締結。同年6月に阪急うめだ本店と松屋銀座に店舗をオープンし、上陸を果たした。阪急うめだ本店の初日の売り上げは約500万円を記録するなど、化粧品高感度層に加えてファッション感度の高い層からも注目を集めた。

プーチとライセンス契約を締結し
グローバル展開を加速

以降、高発色リップ“ルビラック リップ ラッカー(Loubilaque Lip Lacquer)”やフレグランス、17年には4つ目のカテゴリーとしてアイメイク中心のメイクアップコレクションを発売して商品カテゴリーを拡充。18年には、流通チャネルの開拓と幅広い購買層の獲得を目的に、スペインのファッション・フレグランス企業プーチ(PUIG)と化粧品の製造と開発、販売に関する長期ライセンスを締結した。これによりバタルア ビューティとの合弁契約は終了。当時、「クリスチャン ルブタン ビューティ」のチーフ・オペレーティング・オフィサー(COO)だったアレクシス・ムーロ(Alexis Mourot)は、「当社同様、プーチもバルセロナで3代続くファミリー経営。共通点も多く、ビジョンが一致した。中国、南米、欧州で参入していない地域も多く、プーチのグローバルな流通チャネルでビューティ事業をステップアップしたい」と意気込み、その後中国にも進出を果たした。実店舗のほか大手ECサイトのTモール(T MALL)やJDドットコム(JD.com)にも出店し、トラベルリテールの要所である海南島で大々的なキャンペーンを打つなど成長を加速させた。

グローバルでは中東や南米の売り上げが伸びており、プーチの直近のメイクアップカテゴリーの成長に貢献している。商品カテゴリーもファンデーションやフェイスパウダーなどのベースメイクまで広げ、日本ではネイル、リップ共にブランドの象徴であるレッドが人気で、シューズ売り場からの買い回りや、男性のギフト購入などが見られることも特徴だった。

同ブランドは、アイコンシューズのヒールを思わせる先の尖ったモチーフをネイルカラーのキャップに用いたり、古代バビロニアにインスパイアされたゴールドとブラックの豪奢なデザインをリップケースに取り入れたり、デコラティブなデザインで認知度を上げてきた。製品開発をリードするメイクアップアーティストには、イサマヤ・フレンチ(Isamaya Ffrench)や、昨年12月に新グローバル メイクアップアーティストとしてパリを拠点に活動するモルガン・マルティニ(Morgane Martini)を起用。イサマヤ・フレンチはメイクアップの既成概念に囚われないユニークなルックを手掛けることで知られ、モルガン・マルティニは油絵、デッサン、ファッションをインスピレーション源とし、1970年代と80年代のグラムスタイルに現代的なひねりを加えたメイクとクリエイティビティの高さが評価されている。

日本は機能や効果重視のトレンド
総合ブランドに押されシューズにも翳り

気鋭のアーティストとのコラボレーションを通してブランドの世界観を作り上げてきたが、日本では近年、化粧品に機能性を重視する傾向が強まっており、使い勝手や効果をうたうメイクアップ商品が増えている。また、コロナ禍でスキンケアニーズが高まり、メイクアップカテゴリーは復調しつつあるものの、メイクアップのみを展開するブランドが苦戦。華美な世界観を打ち出す中国ブランドの存在感も増しており、競争環境は厳しさを増していた。価格帯もアイコン商品のネイルカラーが7590円、リップアイテムが6930〜1万5290円と競合ブランドと比べて高めの設定で、新商品がシーズナルでタイムリーに発売されなかったことも成長にブレーキをかけた。

また、ファッションの世界では「シャネル(CHANEL)」や「ディオール(DIOR)」「エルメス(HERMES)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などの総合ラグジュアリーブランドが、シューズ専業ラグジュアリーブランドを凌駕。シューズ単体のブランドは、「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」を除き、総じて厳しい。

コロナ禍の外出自粛で売り上げを落とした「クリスチャン ルブタン」も、総合ブランドに押され、かつての勢いを取り戻せていない。販路が限られたビューティにとって、シューズの勢いに翳りがあったことも影響しているかもしれない。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

韓国ブランドの強さに迫る 空間と体験、行き渡る美意識

日本の若者の間で韓国ブランドの存在感が増しています。K- POP ブームが追い風ですが、それだけでは説明できない勢い。本特集では、アジアや世界で存在感を示すKブランドや現地の人気ショップの取材から、近年の韓国ブランドの強さの理由に迫ります。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。