ファッション
特集 メンズ・コレクション2024-25年秋冬

新生「グッチ」のメンズ初披露 ウィメンズ同様のアプローチで日常のラグジュアリー【2024-25年秋冬メンズコレまとめ】

グッチ(GUCCI)」は、サバト・デ・サルノ(Saboto De Sarno)=クリエイティブ・ディレクターが初めて手掛ける2024-25年秋冬メンズ・コレクションを1月12日、ミラノで発表した。会場は、街のはずれにある鋳造工場跡を使ったイベントスペース。その中に、黒を貴重としたミニマルな空間を用意した。そこに流れたのは、聞き覚えのあるマーク・ロンソン(Mark Ronson)による「レイト ナイト プレリュード(Late Night Prelude)」。モデルの登場とともにスポットライトのランウエイを描き、服に焦点を当てたショーを見せた。

ウィメンズに呼応するスタイルで幕開け

幕開けを飾ったのは、広めのショルダーとピークドラペルで仕立てたダブルブレストのロングチェスターコートに胸元を深くえぐった白のタンクトップという、昨年9月に披露した初のウィメンズ・コレクションのファーストルックに呼応するスタイル。ウィメンズでマイクロミニだったパンツは、メンズではくるぶし丈に。前者では厚底“ホースビット”ローファーだった足元は、クリーパーシューズのデザインを取り入れた新作の“ホースビット”ローファーになり、背に赤と緑の“ウェブ”ストライプをあしらった白ソックスを合わせる。首元を飾る大ぶりな“マリナ チェーン”のネックレスはゴールドからシルバーに変わり、アイコンバッグの“ジャッキー”は大ぶりなサイズでアレンジした。

この一目でウィメンズ・コレクションとのつながりが分かるルックは、新たな「グッチ」のイメージやワードローブを確立していく上で同じメッセージを繰り返し伝えていくことが大切と考えるサバトが「ミラーリング」と呼ぶアプローチを象徴するもの。今回のメンズ・コレクションには、そんな「ミラーリング」が随所に見られる。カギとなるメッセージは、ウィメンズで掲げた「ANCORA(イタリア語で「もう一度」の意)」。そこには、「もう一度『グッチ』のファンになり、もう一度ファッションを楽しんでほしい」という想いが込められている。前述の空間デザインや演出も、悪天候のために急遽会場を屋外のブレラ通りから屋内の「グッチ ハブ」に変更したウィメンズのショーと同様。使用したサウンドトラックもラッキーラブ(Lucky Love)の「マスキュリニティー(Masculinity)」を新たに加えた以外は全く同じだ。

デザインにおけるウィメンズとの共通点は、エンボスなどで控えめに描く「GUCCI」のロゴやコートのベンツから覗く“ウェブ”ストライプ、華やかなクリスタル装飾やビーズフリンジといったディテールから、「アンコーラ ロッソ」と呼ぶキーカラーの深みのある赤、リザードで描くストライプなどの色や素材使いまで。セーラーカラーにクリスタルをびっしり飾ったセーターやスイングトップにルーズなデニムを合わせたスタイルなど、ウィメンズと瓜二つのルックも登場した。

バリエーション豊かなアウターとテーラリング

メンズならではの特徴は、充実したアウターとテーラリングだ。艶のあるレザーやウール、ナイロン、人工ファーなどの素材で作るコートは、広い肩と深いベンツ、ロング丈がポイント。中には床をかすめるほどのトレンチコートやチェスターコートもある。一方、よりカジュアルな提案としては、かっちりした肩のラインが目を引くフライトジャケットやハリのあるレザーで仕立てたオーバーサイズのシングルライダースジャケット、同系色で“GGモノグラム”を描いたワークジャケットなど。首元にクリスタルを飾った丸襟の肉厚なカーディガンも、内側に薄い中綿入りでアウターとして活躍する。

「ミニマルテーラリング」と呼ぶジャケットやパンツは、意図的にひじやウエスト、膝裏に入れたシワ加工や、着物の重ね襟のようにラペル内側の端をコントラストカラーで切り替えたデザインがアクセント。丈感にこだわったというパンツは、細身のクロップドもしくは、裾にスリットを入れたよりゆったりしたシルエットのフルレングスで提案する。また、アイコニックなパターンを少しずらして重ねることで陰影をつけた新たな“GGモノグラム”も打ち出す。

注目アクセは、スタイルを仕上げるスカーフタイ

カジュアルからフォーマルまでのバリエーションで現代男性の上質なワードローブを構成するようなコレクションを印象的に仕上げたのは、多くのルックに取り入れた細長いスカーフタイだ。“ジャッキー”と同じシルバーの金具で留めるデザインはチョーカーと組み合わせたかのよう。モデルの動きに合わせて風になびき、比較的シンプルなスタイルにスパイスを加える。今季のスタイルを特徴付ける要素の一つであり、エントリー価格のアイテムとしてのヒットも期待できそうだ。

バッグは、やや柔らかな質感のレザーと発売当時のオリジナルデザインの金具でアップデートした“ジャッキー”。ウィメンズでは定番サイズとより小ぶりなものが登場したが、メンズではビッグサイズで統一した。そのほかは、マチありのビッグトート“ジャッキー ソフトトート”のアレンジや1950年代のアーカイブを再解釈した大ぶりな半月型ショルダーバッグ、型押しでサイドにロゴを描いたドラム型のボストン、オールブラックの“バンブー”、ナイロンや“GGモノグラム”キャンバスのバックパックやバムバッグなど。ストラップなどのディテールには、“ウェブ”ストライプや“ジャッキー”と同じ金具を取り入れている。

シューズは、前述のクリーパースタイルの“ホースビット”ローファーが充実。スタッズやモノグラムでアレンジしたモデルもある。テディ・ボーイズやパンクなどイギリスのサブカルチャーと深いつながりをもつデザインが、サルトリアを軸にしたエレガントなスタイルにも若々しさとほど良いストリート感覚をもたらしている。

今回発表されたコレクションはウィメンズ同様、パッと見の派手さや分かりやすさではなく、ディテールやパターン、素材にこだわり、服作りの本質やウエアラビリティーに重きを置いたもの。「日常に根ざすラグジュアリー」を掲げるサバトは、ウィメンズと一貫したアプローチで新たな「グッチ」のビジョンをより一層明確に示した。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

韓国ブランドの強さに迫る 空間と体験、行き渡る美意識

日本の若者の間で韓国ブランドの存在感が増しています。K- POP ブームが追い風ですが、それだけでは説明できない勢い。本特集では、アジアや世界で存在感を示すKブランドや現地の人気ショップの取材から、近年の韓国ブランドの強さの理由に迫ります。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。