百貨店で特選(ラグジュアリーブランド)や宝飾が好調であることの最大のドライバーが富裕層であることは間違いないが、一方で「ラグジュアリーブランドが一般の若年層も取り込んでいる」とも百貨店各社は口をそろえる。2022年1〜6月の百貨店高額品商況を取材した。(この記事は「WWDJAPAN」2022年8月29日号別冊付録の定期購読者特典「ビジネスリポート」からの抜粋です)
「コロナ禍以降、特選フロアで20〜30代の比率が高まっている」と話すのは松屋銀座本店。「従来は“アクセシブルラグジュアリー”ブランドや国内ブランドを購入していた若い客層までラグジュアリーを買うようになっている」(そごう・西武)といった流れを各社が指摘する。ラグジュアリーブランドはSNS広告やセレブリティ起用などでメディア露出が多く、サステナビリティの発信も盛ん。ブランドの歴史を語る大型展覧会などもコロナ禍以前のように増えてきた。そうした数々のマーケティング施策が、「今の若い世代は、買い物で失敗したくないという意識が強い」(大丸松坂屋百貨店)という傾向とがっちりかみ合っている。
ただし、アイコンバッグは言うに及ばず、財布などの革小物も数年前に比べると値上がりしており、若い世代の入門商品とはなりにくい。ピアス、シュシュなどのファッションアクセサリーや香水などが革小物に代わる入門商品となっており、それらを手厚くそろえているブランドがZ世代を含む若年層をつかんでいる。

投資ができる大型ブランドがさらに人気に
ここからはブランド別に傾向を見ていく。「WWDJAPAN」では全国27の百貨店特選売り場に、1〜6月のブランド別売上高伸長率をアンケート調査した。伸長率1位の「セリーヌ(CELINE)」、2位の「ディオール(DIOR)」は、富裕層からも一般若年層からも支持を集めている。高額なアイコンバッグが富裕層に売れ、若年層には買いやすいアクセサリーやロゴアイテムがヒットした。
3位はトレンド性が支持されている「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」。5位には、定番のチェーンバッグが今や100万円以上となっても勢いを増す「シャネル(CHANEL)」と、やや落ち着いていた状況から盛り返してきている「グッチ(GUCCI)」が入った。表にはないが、6位は「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、7位は「ロエベ(LOEWE)」と続く。LVMHグループとケリング、「シャネル」という大型ブランド群の間を縫って浮上してきたのが4位の「トッズ(TOD’S)」だ。バッグの“T タイムレス ショッピング”がヒットして伸ばした。
中堅ブランドにも復調の兆しあり
ラグジュアリーの中でも、マーケティングに多大な投資ができる大型ブランドがさらに強くなるサイクルが一層強まっている。一方、バッグではなくウエアが中心の、中堅規模のブランドは前年実績は超えているが、伸び幅は小さい。ただし、「今春夏はイベントや旅行が徐々に復活してきたことで、スーツやドレスなどを得意とする中堅ブランドも回復基調にある」(伊勢丹新宿本店)という声もある。
宝飾ブランドも傾向は同じだ。「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」といった、アイコンアイテムを持つ大型ブランドが、値上げしても支持を集め続けている。富裕層にはハイジュエリーも好調で、これまでハイジュエリーを扱っていなかったバッグ中心の特選ブランドが高額ジュエリーを企画する動きも増えそうだ。また、コロナ禍前に海外観光客からの支持が厚かったパールも復調。「タサキ(TASAKI)」「ミキモト(MIKIMOTO)」が伸長率ランキング上位に入った。