コレクション

「コム デ ギャルソン・オム プリュス」2016-17年秋冬パリ・メンズ・コレクション

REPORT

「平和の鎧」が示したファッションの力

やはり、「力」を宿したコレクションを生み出すことにおいて、川久保玲の右に出るものはいなかった。「コム デ ギャルソン・オム プリュス」の2016-17年秋冬コレクションは、「平和の鎧」、「アーマー オブ ピース」がテーマ。肩にはショルダーパットのようなパーツ、パターンに沿ってはスタッズ、そしてコートの上にはハーネスのスタイルは、いつものように強いが、今回の「強さ」は、そこに強烈なシンパシーを抱かせた。観客は、ショーの最中から、今回の「オム プリュス」が今までと少し違うこと、そこにある種の希望や願いが潜んでいることに気付き、フィナーレでモデルが色とりどりの花束を持って会場に現れたとき、その思いを確信へと変えた。バックステージで本人は、制作はそれよりもっと前に始まっていた、と直接の因果関係を否定したようだが、少なくとも観客は、ショーと昨年のパリ同時多発テロをリンクさせた。そして、人々は1月22日午後5時過ぎに始まったわずか10分足らずのショーから、改めて平和の尊さ、人類の課題、そして、ファッションができることについてしばし考え、ある者は涙した。

序盤は、得意の脱構築を繰り返したジャケットのスタイル。肩から袖、もしくは腰回りにかけてはいくつかのパーツに分解され、それを再編することで、中世の鎧のようなシルエットを手に入れた。しかし今シーズンの脱構築には、そこに、希望につながる明るい色と柄があった。起毛感の高いラメ生地にはローズの刺しゅう、そして、バロック調の草を描いたジャカード、明るいベルベット、鮮やかなブロケード。花柄はレザーにもプリントされ、いつもなら重苦しい洋服を彩っていく。コートは袖がもぎ取られ、いくつものベルトループを持つ別の生地で作る袖に置き換えられた。足元は、ジャケットの肩口から袖にかけてと同じく、トーにいくつかのパーツを重ねている。そこからも、男の身を守る、鎧のイメージが浮き上がる。

業界人はこれから、このショーをリポートするたび、誌面で取り上げるたびに平和について考えることだろう。そして消費者は、この洋服を手に入れ、袖を通すたびに、「平和の鎧」を身に着けるたびに、なぜ自分は「平和の鎧」に魅了されたのか?そして、“武装”した自分には何ができるのか?を考えていくハズだ。着るたびに、何らかの意識を喚起させる洋服。しかもその意識が、テロへの怒りだったり、平和だったり、もしくは人類の共存だったりの崇高な理念であるという洋服。こんな意識をもたらす「力」を持つ服が、他にあるだろうか?

ここ数年の「オム プリュス」は、何かに抗う孤高の存在のようで、彼女一人が歯を食いしばって何かと戦っている姿を想起することさえあったが、今回は違う。今回の彼女の戦いは、多くの人を巻き込み、一つの、巨大な「力」になっていくような気さえした。その意味で今回の「力」は、今までとは全く異質の、そして、今までよりはるかに大きな「力」だ。

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