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「ルイ・ヴィトン」が新作ウオッチを発表 時計部門トップも絶賛「ジェームズ・ボンドの時計に一歩近づいた」

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のウオッチ部門は今年、設立20周年を迎える。そんなアニバーサリーイヤーに、新作ウオッチ“タンブール スピン タイム エア クアンタム(Tambour Spin Time Air Quantum)”を発表した。深海に潜む生き物が暗闇の中で発光する様子からインスパイアされた時計は、マットなブラックとビビッドなイエローを用いた。さらに宙に浮かぶ数字はメカニックなクリック音とともに1時間ごとに1/4回転するように設計されている。

 フロスト加工したチタンケースは磨き上げられた縁とシャープなフォルムを特徴とする。フランジ(見返しリング)はマットに仕上げられ、時間を記す刻み込みはさりげないV字をかたどる。サファイアガラス製の裏面にはブランドのモノグラムを回路基板風のデザインに仕立てた。ストラップはアリゲーターレザーを用い、鮮やかなイエローで縁取った。さらに数字のキューブはシリカガラスを用い、発光エフェクトを加えた。

 ジャン・アルノー(Jean Arnault) =ルイ・ヴィトン ウオッチ部門マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクターはこの腕時計を開発するのに2年かかったといい、その魅力は「手に取ればすぐに分かる」と話す。

 また同時に3つのタイムピース“タンブール スリム ヴィヴィエンヌ ジャンピング アワーズ”も発表した。ブランドを代表する“タンブール スリム”シリーズが、3つのジュエルトーンに染まって登場する。それぞれには、「ルイ・ヴィトン」のマスコットであるヴィヴィエンヌが占い師、カジノディーラー、サーカスパフォーマーに変身したイラストが添えられている。

 米「WWD」は、ウオッチ部門を率いるアルノー=ディレクターに新作ウオッチに込めた思いやこだわりを聞いた。

WWD:「ルイ・ヴィトン」は時計を20年作ってきた。“タンブール スピン タイム エア クアンタム”はそれを象徴するタイムピースだと捉える?

ジャン・アルノー =ルイ・ヴィトン ウォッチ部門マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクター(以下、アルノー):これはアニバーサリーアイテムではないが、「ルイ・ヴィトン」が他ブランドが挑戦しない領域にまで時計の世界を広げてきたことを讃えるピースだと思う。例えばメカニカルムーブメントとエレクトロニックなモジュールを組み合わせたりしているが、このような複雑な作り方は現代の時計市場でも稀に見るものだ。

WWD:ラグジュアリーウオッチと、近年人気が高まるスマートウオッチの世界の橋渡しのような存在になるのか。

アルノー:その通り。どちらにも魅力があるし、それぞれ単独としても、組み合わせても素晴らしい時計を生み出す。メカニカルとエレクトロニックを融合することのポテンシャルは大きいと感じるし、今後もっと探求していきたいと思うカテゴリーだ。ある意味ジェームズ・ボンド(James Bond)のウオッチに一歩近づいているよ。ボタンひとつ押せばデジタルなディスプレーが表示されるような時計は想像するだけでワクワクするし、すぐに実現できるかは分からないが、夢のある話だ。

WWD:新作ウオッチで最も誇りに思う点は。

アルノー:エレクトロニックなモジュールを用いながらも、ケースを薄く、大きさもコンパクトに保てたことかな。機能性がきちんとありながら、それを意識させない。“タンブール カルペ・ディエム(Tambour Carpe Diem)”と同じ作りで、時間も読める、「腕に着けるアートピース」だ。

 われわれが誇る“スピン タイム エア”ムーブメントを、夜間でも読みやすいようにアップグレードしたのも特徴だ。また個人的に気に入っているのは、バッテリーレベルの表示。ボタンを押す回数が残り100プッシュに達したら、明滅して知らせてくれる。こうした細かいこだわりこそが、設計するのに一番難しくもあるのだ。

デザインだけでない、使いやすさも重視した時計づくり

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計作りにおいて、(デザインに加え)操作のしやすさにもこだわっている。

アルノー:市場の調査をしていると、現代の消費者はより使いやすく頑丈な時計を求めていることが分かった。巻き方や設定を一つ間違えるだけで直すのが大変な時計も多くある中で、壊れにくく誤操作があっても簡単に戻せるように作っている。また文字の読みやすさや大胆なディスプレーにもこだわっており、新作ウオッチも1/4回転といった細かく美しい動作と、読みやすさの両方を追求した。これは「ルイ・ヴィトン」にしか成し遂げられない技術力を物語る。

WWD:その技術力に引かれて時計部門のトップに就いたのか。

アルノー:メゾンの中のさまざまな部門を経験する中で、時計部門は2021年1月に入った。そこで感じたのは、まるで家族のようなチームの雰囲気。また、他メゾンに負けない高い技術力とサヴォワフェール(受け継がれる職人技術)も目の当たりにし、感銘を受けた。ここで働く一人ひとりの職人は、デザインから技術的な話まで、卓越したクラフツマンシップを誇る。

WWD:グループにはいくつかのウオッチメゾンがあるが、最新技術などをシェアしているのか。

アルノー:今はそれぞれのブランドが独立して運営している。でもメゾン同士でシナジーを生み出すことは、近い将来考えるべきことかもしれない。個人的に各メゾンが所有するノウハウを共有しないのはもったいないと感じるが、今のところ技術の共有などはない。

「ルイ・ヴィトン」の時計の顧客は「普通では満足できない」

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計を購入する顧客はどんな人?

アルノー:大胆なクリエイションを求める人。われわれは高度な技術に裏付けされた最高品質のタイムピースを作っている。同時にデザインにもこだわり、エングレービング(彫刻)を手掛けるディック・スティーンマン(Dick Steenman)やエナメルアーティストのアニータ・ポルシェ(Anita Porchet)など、業界トップのアーティストと協業している。「ルイ・ヴィトン」のウオッチを購入する人は、“普通”では満足しない。特にわれわれはほかのウオッチメゾンに比べて歴史が浅いだけに、新規プレイヤーとしての新しいアプローチや他とは少し違う魅力を求められている。またスペシャルなオーダーをする人も多く、ムーブメントからダイアル、ケースまでをパーソナライズするニーズが高まっている。こういったサービスには今後も注力していく。

WWD:近年は女性の間でもデザインだけでなく技術を求める人が増えているが、そういったことにも目を向けているのか。

アルノー:「ルイ・ヴィトン」の魅力の一つは、幅広い顧客層にアプローチできていること。現在ウィメンズ・メンズウオッチの位置付けを考えている中で、改めてアイコンピースの強化を図っている。

WWD:ウオッチ部門の今後の展望は。

アルノー:言うまでもないが、20周年は大きなマイルストーンだ。われわれはまだ若いが、歴史は立派なものだ。過去の作品を振り返ると、これまで歩んできた技術的な進歩が一目瞭然だ。またジュネーブ時計グランプリ(GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENEVE)で受賞したオーダシティ賞も20周年に先駆けてうれしかった。この賞によって業界からオフィシャルに認められた証になったし、これまでの20年の努力が報われたような気持ちになった。今後も前進し続けて、素晴らしい成果を出し続けたい。

 今後は引き続き技術力を磨きつつ、“タンブール スピン タイム エア クアンタム”や“タンブール カルペ・ディエム”のように業界を驚かせる傑作を作りたい。複雑で高度な技術を巧みに用いながら、使いやすさも妥協しないクリエイションを続ける。楽しみにしていてほしい。

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