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大丸東京店の新しい売り場が「売らない」理由 ヒトとモノを際立たせる空間設計

 大丸松坂屋百貨店は5日、大丸東京店4階のD2Cブランドのショールーミングストア「明日見世(ASUMISE)」の6日のオープンに先立ち、売り場を報道関係者向けに公開した。

 売り場は白を基調に、木目調の陳列台やラックに商品が並ぶシンプルな空間。中央にはテーブルと椅子数脚のコミュニケーションスペースを設置するなど、百貨店の売り場としてはゆったりと余白を持たせた設計になっている。内装や什器はリサイクルできる素材やユーズドを用いた。

 開店時は“社会を良くするめぐりと出会う”をテーマに19ブランドが出品した。うち11ブランドがビューティカテゴリー。島根・出雲地域で採取された藻塩を原料に使用したネイルブランド「アンディズモ(ANDISMO)」や、モデル・女優の太田莉菜がプロデュースするスイセンジノリが分泌する天然保湿成分を使用した「コガネ バイ サクラン(KOGANE BY SAKURAN)」など。ファッションでは日本環境設計の「ブリング(BRING)」やデザイナー川島幸美のサステナブルブランド「リン(WRINN)」が出品した。テーマは3カ月スパンで変え、ブランドも入れ替える。
 
 リーシングはターゲットと同じミレニアル世代の社員が担当。「自分たちが使いたいもの、共感できるもの」(比留間由依・大丸松坂屋百貨店経営戦略本部DX推進部デジタル事業開発担当)という目線でセレクトした。

 売り場から余計な要素を排除することで「人の力」「モノのストーリー」を際立たせたことも特徴だ。商品見本には商品名、価格以外の情報はなく、常駐する「アンバサダー」が接客に当たる。アンバサダーはあらかじめブランド側からのヒアリングや勉強会を通じ、商品の情報や背景を深く理解している。「ブランドの一方通行の押し付けでは響かない。目利きであるわれわれだからこそ、伝えられるブランドのストーリーがある」。

 また、その場で購入できないショールーム機能に特化したのは、あくまで商品そのものに集中してもらうためだという。「売り場に足を踏み入れると『買わなきゃいけない』と負担に感じてしまう人若いお客さまも多い。この強迫観念を取り払いたかった」。

 ブランド側にとっては、消費者とのリアルなタッチポイントを得られることも大きなメリットだ。百貨店に商品を置いているということ自体、小さなブランドにとっては信用や信頼といった価値につながる。「商品を試用してみての感想や意見など、デジタルでは得られない生の声もフィードバックしていく」。一方、大丸松坂屋側には新客を呼び込む装置になる。QRコード経由で出品ブランドサイトのECサイトから購入できるが、具体的な売上目標などは設定していない。比留間氏は「目先の目標ではなく、ブランドと長期的なビジョンを共有しながら共に成長していける場にしたい」と話す。

 売り場は同社の若手を中心に構成するDX推進部の主導で、昨年11月からスピーディーに開発を進めてきた。「これで完成ではなく、運営しながらさまざまな課題を洗い出していく。今後もお客さまや取引先の声を元に都度ブラッシュアップしながら、最適な形を探っていきたい」。

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