ファッション

百貨店の高額サブスクの実力はいかほど? 大丸松坂屋の「アナザーアドレス」を体験してみた

 

 東京都や大阪府など、9都道府県の緊急事態宣言が再延長されました。4月末以降、休業ないしはフロアを絞って営業してきた多くの百貨店やファッションビルなどは平日の通常営業再開へと向かっていますが、とはいえ引き続き平時とは異なるムードもあり、思いっきり買い物が楽しめないことに息が詰まる思いをしている人は多いと思います。こんな環境だからというわけではないですが、大丸松坂屋百貨店が3月に立ち上げたウィメンズファッションのサブスクリプションサービス「アナザーアドレス(ANOTHERADDRESS)」を体験してみました。「『メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)』や『マルニ(MARNI)』が借りられる!」と話題になったサービスです。

 「アナザーアドレス」は1カ月に3着まで借りることができ、料金は月額1万1880円。配送料やクリーニング代は料金に含まれており、気に入った商品はそのまま買い取りも可能です。ちなみに、競合である「エアークローゼット(AIRCLOSET)」の類似プランは6800円(送料別)、「メチャカリ」は5800円(返却手数料別)。「アナザーアドレス」はそれらの約2倍の料金設定ですが、前述の「メゾン マルジェラ」「マルニ」だけでなく、「3.1フィリップ リム(3.1PHILIPP LIM)」など、ファッション好きにはよく知られた海外デザイナーズブランドを多数ラインアップしていている点が競合との差別化ポイントです。

 利用する際は、まず公式サイトで会員情報を登録します。LINEアカウントとの連携も可能で、登録は非常に簡単。LINEと連携すると、以降は新着商品やおすすめアイテムの紹介、返却案内などが全てLINEで届きます。通常のメールだと埋もれてしまいがちなので、LINEでつながるという形は私は非常に使いやすいと感じました。何か疑問点が発生した場合も、LINEでメッセージを送れば半日ほどでカスタマーサービス担当者から返信がもらえました。

“自分のほしい服が自分で分かっている人”向け?

 会員登録が済んだらいよいよ服を借りるステップへ。競合サービスは好みのテイストを伝えると、それに合わせたスタイリングを自動で送ってきてくれますが、「アナザーアドレス」は自分でサイト上の写真や説明を見ながら借りる商品を選びます。ブランド別やアイテム別、サイズ別で検索ができ、目当てのブランドがある人や、“自分のほしい服が自分で分かっている人”にはすごくいいサービスだと思います。ただ、「“自分のほしい服が自分で分かっている人”って、実はそんなにいないのでは?」とも思うんですよね。正直、私も年齢を重ねる中で最近はよく分からなくなってきています。

 そんな人に向いているのがシーン別検索です。「デイリーワーク」「ウイークエンド」「ワークイベント(おそらくプレゼンなどを想定)」「アットホーム」「バケーション」「パーティー」「フォーマル(明るい色柄のパーティーに対して、モノトーン中心でよりコンサバな感じ)」「エッセンシャル」という8シーン別でアイテムを提案しています。今はニーズが減っていますが、結婚式用のゲストドレスや、外せないビジネスプレゼンの服など、借りる目的がはっきりしている人はシーン別検索が便利だと思います。

 私は仕事柄、仕事着と週末着が非常にあいまいなので(コロナによる働き方の変化で、世の中の多くの人も同様になっているとは思いますが)、「デイリーワーク」「ウイークエンド」を行ったり来たりしながら借りるアイテムを探しました。そして、「せっかく借りるからには人気ブランドがいい!」という貧乏根性も発揮。その結果、選んだのは「マルニ」のワンピース、「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」のブラウス、プリーツスカート(=セットアップ)の3点でした。

写真のみでスタイリングを考えるのにやや苦戦

 正直なところ、ワンピースとセットアップを選んだのは、スタイリングを考えなくていいからです。トップスとボトムス、アウターなどの組み合わせをイチから考えるのは、販売員さんと話しながら何度も試着ができる店頭ではとても楽しい行為ですよね(買い物好きや服好きにとっては)。しかし、写真だけでそれを行おうとすると、かなりのファッション練度が求められると私は感じました。サイト上にはスタイリングサンプルの写真がいくつか載っているのですが、それらのアイテムを一括で借りられるような仕組みには現状なっていないんですよね。ただし、借りようと狙っているブランドのサイズ感やクセなどをもともと熟知しているファッション猛者にとっては、お茶の子さいさいかもしれません。

 そのように、自分でアイテムを選び、自分でスタイリングを組む、という点はややハードルが高いと感じましたが、今後会員データがどんどん溜まっていけば、「このアイテムはこちらのアイテムとよく一緒に借りられています」といった自動レコメンドも可能になるのかもしれないし、販売員やスタイリストによるレコメンド機能が搭載されることもあるかもしれません(あくまで私の勝手な想像です)。そうなれば、ファッション大好き層だけでなく、「忙しくて服を選ぶ時間が惜しい」「ファッションはそこまで詳しくないけど、立場上ちゃんとした服を着なければならない」といった女性にとっても、より使い勝手がよいサービスになるのではないでしょうか。

 さて、いよいよ指定した商品が届きました。段ボールの中には薄紙も敷かれていて、梱包はとてもきれい。段ボールやハンガーは返送時も使用するので、取っておく必要があります。まず1着目、「マルニ」のワンピースです。ピンク地に大柄プリントという、普段自分では絶対買わないタイプの服をここぞとばかりに選んでみました。このように冒険ができるのがサブスクの醍醐味ですね。こちら、Sサイズが借りられていたので、「オーバーサイズの流れもまだまだあるし、Mサイズでいっか」と判断してみましたが、やっぱり私にはちょっと大きかった。ただ、同僚からは「春らしくていいね」と好評でした。

 次は「エムエム6」のブラウスとプリーツスカートです。セットアップで着れば間違いがないし、それぞれをジーンズやセーターなどの手持ちの服ともスタイリングできたらラッキー、と思って借りてみましたが、その狙いは当たりました。特にプリーツスカートは非常に汎用性が高かったです。ここ数年、さまざまなブランドでプリーツスカートがシーズンを問わず売れていますが、改めて「やっぱりプリーツスカートは便利。そりゃあ売れるわ」と実感した次第です。あと、独特のサックスブルーもお気に入りポイントでした。「今後、店頭でも『MM6』のカラーアイテムはチェックしよう」と思ったので、サブスクにはそうした店頭への誘客効果も一定期待できるのかもしれません。

“銘品”アイテムのお試しの場としても期待

 あっという間に時はたち、返却期限の1週間前となりました。LINEに返却日を知らせるメッセージが届くので、そのまま買い取りたい場合はここで購入手続きに進みます。私は返却期限当日が「WWDJAPAN」のオンラインセミナーと重なり、セミナーで「エムエム6」のセットアップを着ようと考えていたので「返却日に着ていて間に合うのか?」と当初ヒヤヒヤしたのですが、そんな心配は全くの杞憂でした。終業後、自宅で3着をダンボールに詰め、自宅最寄りのコンビニに持っていて、QRコードを読み込ませた後に専用のボックスにダンボールを入れればそれで終了!「メルカリ(MERCARI)」や競合のサブスクサービスなどと同じ配送の仕組みで、宛名記入なども不要。この点は本当に楽で素晴らしい仕組みです!

 正直、ワンピースはサイズが大きかったこともあり1回しか着ませんでしたが、数カ月間サービスを継続利用していけば、サイズ間違いといった凡ミスも減ってより使いやすくなるはず
※サイズを間違えた際などは着用せずに返却することも可能。その場合、即次返却して別アイテムを借りることはできず、連絡したうえで1カ月間手元で保管し、他のアイテムと同時に返却する。次月以降、4点借りることが可能になる

 あと、個人的には「“銘品”と言われているけれど、実は手に取ったことがない」というような服がもっと充実していると、購入前に検討できていいなと感じました。「バーバリー(BURBERRY)」のトレンチコートや「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のテーラードジャケットといったアイテムが、果たして自分には似合うのか家で試せたらいいなと思いませんか?実際、「ローレン ラルフ ローレン(LAUREN RALPH LAUREN)」の金ボタンのブレザーは私が借りるアイテムを探していたときには出払っていたので、「“銘品”的なものって、需要があるのかも」と思った次第です(ラルフ ローレン社は米国で既にサブスク事業を始めていますね)。後輩のファッション大好き男性記者も「僕はデザイナーズブランドを店頭にも見に行くけど、敷居が高くてなかなか何着も試着できないので、レンタルして家でじっくり他のアイテムとスタイリングできる点がいいな」と話していました。同様に、「アナザーアドレス」を試着室代わりに使っているお客さんは多いのかもしれません。


4000人以上が登録、今登録すると年明けからレンタル開始の見込み

【大丸松坂屋百貨店広報担当者より】

 3月のサービス立ち上げ時は会員枠を数百人に絞ってスタートしたが、結果的に4000人以上の会員登録があった。順次利用案内を送っているが、待っていただいている状態だ。待ち時間を短縮するため、取り扱いブランドや商品の拡充に努めている。現在の取り扱いは50ブランドで、サイトに掲載済みのアイテムは約3500着、倉庫にあるものも含むと計4000着。6月時点で会員登録すると、2022年1〜2月から利用いただける見込みとなっている。利用しているお客さまからは、「服を手放すときに生じる、もったいないという心の葛藤から解放された」「1カ月着てみることで、好きな服と似合う服のギャップに気付けた」「値段を気にせずさまざまな服が着られるのが楽しい」といった声があがっている。
 

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3月25日発売号の「WWDJAPAN」は、2024-25年秋冬シーズンの「楽天ファッション・ウィーク東京(RAKUTEN FASHION WEEK TOKYO以下、東コレ)」特集です。3月11日〜16日の6日間で、全43ブランドが参加しました。今季のハイライトの1つは、今まで以上にウィメンズブランドが、ジェンダーの固定観念を吹っ切ったことでした。

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