ファッション

「令和のカリスマ店員」に福岡ソラリアの「リエンダ」村岡さん、オンライン接客コンテストで全国7万人の頂点に

 全国7万人の店舗スタッフの頂点に立つ「令和のカリスマ店員」を決めるコンテスト「スタッフ・オブ・ザ・イヤー(STAFF OF THE YEAR)」が8月19日に開催された。主催はコーディネート投稿機能やオンライン接客などの販促支援アプリサービス「スタッフスタート(STAFF START)」を運営するバニッシュ・スタンダードだ。1995年から実施している日本ショッピングセンター協会や2005年からスタートしたルミネを筆頭に、多くのアパレル小売り各社がコロナ禍前までこぞって接客ロールプレイングコンテストを実施してきた。だが、今回取材した初開催の「スタッフ・オブ・ザ・イヤー」は今までとはかなり異なるユニークかつ販売スタッフの個性を引き出すチャレンジングな仕様だった。この時代の変化を取り入れた令和のロープレ大会をレポートする。

 1次審査は「スタッフスタート」経由の売上高やインスタグラムのフォロワー数で7万人の中から上位400人に絞り込み、2次審査では売上げ、フォロワー数、さらには特設サイトからの一般投票を加味して15人を選考。延長投票で復活した3人を加えた、18人がファイナリストとして登場した。企業別ではマッシュホールディングスとアダストリアが各4人と多く、ベイクルーズ、パル、バロックジャパンリミテッドが各2人、WEGO、恵山、ストライプインターナショナル、TSIホールディングスが各1人という顔ぶれだ。

 通常のロープレ大会では、買い物客に扮したエキストラが登場し、ルミネが6分、ユナイテッドアローズが7分や11分といった持ち時間で接客を行うことが多い。それが今回は画面越しにオンライン接客の技術を競うもので、1つ目の課題がLINEコールを使用した「テレビ電話接客」、2つ目が「LINE LIVEでのライブ配信」、3つ目が「自己PR」でそれぞれ1分半とコンパクトだ。ちなみに、今年にバニッシュ・スタンダードはLINEと業務提携しており、9月をめどに新サービス「ライン・スタッフスタート(LINE STAFF START)」の提供を始めることが決まっており、LINEを大いに活用した企画としている。

 「テレビ電話接客」では、画面越しにお客さまのニーズを汲み取る力や、的確な提案、自分らしい言葉や表現で商品の魅力を伝えるコミュニケーション力などを評価した。公平性を期すために、取り扱い商材はバラエティ雑貨やアウトドアグッズ、癒やし商材、暑さ対策グッズ、家電、ぬいぐるみなどを用意。お客さま役の購買目的を「アマゾンに旅行に行くときに持っていくとよいもの」「ホームパーティで意中の人と仲良くなれるグッズ」「10人目の子どもを出産した友人へのギフト」などクスリと笑ってしまうような設定で、その応対には各人のキャラクターや機転の良さ、人間力などがよく表れるものとなった。

 「ライブ接客」では、一般視聴者とつなぎ、協力を仰いだ専門学校生の個性的な作品の魅力を制限時間内に伝え、購入意思を喚起できたかを審査。「自己PR」では販売員としての想いや、自身の魅力を伝える力などを評価した。

 審査員は7人で、アンミカや森泉、自身がデザインするブランド「ラウタシー(LAUTASHI)」も手がける鈴木えみ、秋山恵倭子BRUSH代表取締役会長、元ルイ・ヴィトン顧客保有数ナンバーワンスタッフの土井美和さん、LINEの池端由基執行役員・広報・法人事業担当、小野里寧晃社長が務めた。司会には城田優を起用した。

 審査員の評価と、「LINE LIVE」の視聴者による8万8000票以上のオンライン投票の結果をもとに、令和のカリスマ店員として初代スタッフ・オブ・ザ・イヤー5人を決定。初代グランプリは、バロックの「リエンダ(RIENDA)」福岡ソラリアプラザ店の村岡美里さんが獲得。2次審査を1位で通過していたが、「テレビ電話接客」では、「声が聞き取りにくかったらおっしゃってくださいね」や「ご利用していただいたきっかけは?」といった挨拶や導入部分も好印象で、最近ダイエットのためランニングを始めたというお客さまの要望に対して、「美意識が高いんですね」といった声をかけたり、熱さや汗に対して、「今日をきっかけに快適にしていただきたいので、オススメの商品をお持ちしますね」などと応答し、寄り添い力や提案力も高く、しょっぱなから圧倒的高得点をたたき出していた。

 受賞に際して村岡さんは、入社したばかりのころ、どうしても売れなかった時期に上司に言われた「一番大事なのは人間力だ」という言葉をバネに努力してきたことが今日につながっていると振り返りつつ、「頑張っているねなどとよく言っていただけるが、楽しいと思ったことや、人と話すのが単純に好きなので、それをひたすらやってきただけ。きつくなかった。今日はこれからもそういう思いでやっていっていいと証明してもらえた。ありがとうございました」と感謝を述べるとともに、「販売の形は時代によって変わるが、柔軟に今できることに取り組み、販売の先頭を切っていくつもりでこれからも仕事をしていきたい」と抱負を述べた。

 2位は「マウジー(MOUSSY)」ルミネ立川店のなとりかさんで、平成のカリスマ店員を数多く輩出したバロックがワン・ツーフィニッシュを決めた。3位はパル「ミスティック(MYSTIC)」新宿ミロード店の森川小百合さん、4位は「ウィゴー(WEGO)」あべのキューズモール店のゆめきゃぴさん、5位はアダストリア「ニコアンド(NIKO AND...)」イオンモール宮崎店のMisayoさんだった。5人には、総額500万円相当の賞金、または体験に加え、9月4日開催の東京ガールズコレクションでの「スタッフスタート・ステージ」のプロデュース権とステージに出演できる権利を授与した。

  開催後にアンミカと森泉が取材に対応。「自身が接客を受ける時に大事にしていることは?」の質問に対して、アンミカは「第一印象だ。入ってきたときに、その人自身がワクワクしているような感じだと、吸い込まれて楽しくなり、つい話し込んで自分の身の上話などもすると、スイッチが入る」、森泉は「自分で気付かなかった似合うものや着方などを教えてもらうなど、新しい発見ができること」と回答。「これから販売員の方がより輝くためのアドバイスは?」に対して、アンミカは「ワクワク感に加えて、人間に対して興味を持つこと。今の時代、プライバシーの問題があり、質問するのが難しくなっているが、空気を読み、接客されるのが好きな方、ちょっと距離が欲しい方などタイプを見極めることが大切だ。また、たくさんの知識を持つように、たくさんの映画を見たり、世の中の状況を集めて、ちょっとした話の中で好みのものを感じていろいろなものを提案できる提案力も必要だと思う」とコメント。森泉は「今日参加されていた方々はみなさん、ファッションが大好きで、自分がやっていることが大好きだという気持ちが伝わってきた。その気持ちを忘れずに毎日頑張っていけば、自然と輝きはついてくるものだと思う」とニッコリ。これを受けてアンミカも、「自身に似合う服を知っているなと思った。『この人素敵』『この人に接客されたい』と思われるセンスを、時代の流れの中で持ち続けていて、惹かれた部分があった」と振り返る。

 挨拶に立った重松理ユナイテッドアローズ名誉会長のメッセージもインパクトがあった。「よく7万人の中からこれだけ高い山に上り詰めた」と労うとともに、「自分は販売員の先輩で、販売職をスタートしてから今年で45年たった。販売の仕事はすばらしい仕事だ。仕入れやマネジメントなどいろいろな仕事がファッションビジネスにはあるが、やっぱり一番の感動を自ら得られるのが販売の仕事だ。なぜならば、経験をバックボーンにお客さまに合った形でサービスの提供につなげていくのだが、最終的にお客さまが満足してお買い上げいただき、代金をお支払いいただき、最後に本当に満足していただくと、『ありがとう』と言っていただける。販売職以外の仕事もいろいろしたが、こんな感動できる仕事はあるのか。ないと思う」と力説。「小野里社長から開催の主旨をうかがい、販売員の社会的地位を高めるのだという強い思いを聞き、なんとか応援したいと思った」と明かした。

 小野里寧晃社長は、「ファイナルに進むまでにも熾烈な戦いがあった。ここに立っている18人は、一般のお客さまやスタッフ、仲間たちに後押しされてこの場に立っているプロフェッショナルたちだ。スタッフという仕事、販売職は人に感動を与えられる仕事だ。私たちはスタッフの力を信じ、オンラインを使って、多くの人々に感動を伝えられるサービスを作ってきた。参加ブランドは1600ブランドで、7万人の頂点と言っているが、もう少しで参加スタッフは10万人になる。これからもそんな素晴らしい仕事を『スタッフスタート』を通じてサポートしていきたい」と語った。

【ファイナリスト18名】
村岡美里(rienda、福岡ソラリアプラザ店)
ゆめきゃぴ(WEGO、あべのキューズモール店)
MAYUKA(MIIA、ルミネエスト新宿店)
佐藤(Whim Gazette、青山店)
rinako(FRAY I.D、名古屋ラシック店)
misato(JOURNAL STANDARD relume LADYS、ルミネ新宿店)
愛-ai-(JEANASIS、ルミネエスト店)
endo( IENA、IENA Le Dome丸の内店)
フィー(JEANASIS、ルミネエスト店)
さとみかも(earth music&ecology、イオンモールむさし村山店)
バヤコ(GLOBAL WORK、イオンモール新潟南店)
kaho(FRAY I.D、 岡山一番街店)
Mayo(SNIDEL、なんばCITY店)
森川小百合(mystic、新宿ミロード店)
なとりか(MOUSSY、ルミネ立川店)
Misayo(niko and...、イオンモール宮崎店)
nyam(gelato pique、浦和伊勢丹店)
miki(NATURAL BEAUTY BASIC、柏ステーションモール店)

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