ファッション

丸山敬太デザイナーが語る「ファッションとEC」、BBFと強力タッグでサイトを刷新

 ファッションブランド「ケイタ マルヤマ」は9月、自社サイトを刷新する。これまでブランドの情報サイトと通販サイト(2020年リニューアル)に分かれていた2つのサイトを統合、新たに雑誌のようなメディアコンテンツも併設する。「これまでECにはほとんど関心を払ってこなかった」という丸山敬太デザイナーはコロナ禍を経て、ファッションブランドの新たな在り方に本格的に乗り出す。ベテランの大御所デザイナーだからこそ見えた「デジタル時代のファッションブランドのビジネスモデル」とは?アパレルEC業界屈指のベテランプロデューサーであるビービーエフ(以下、BBF)の安住祐一執行役員と語った。

「ケイタ マルヤマ」が
BBFと組んだワケ

WWDJAPAN(以下、WWD):今回サイトをリニューアルすることになった経緯は?

丸山敬太(以下、丸山):私は元々Eコマース(EC)にあまり興味がありませんでした。私自身もリアルで買い物する方が好きだし、ECサイトで買うのも日用品などが中心。だから私たちのようなファッションブランドはECには向かないと考えていたんです。やっぱりファッションってウィンドーショッピングやメディアでの偶然の出合いや感動、体験が欠かせない。だから、「ケイタ マルヤマ」のECサイトも、担当者任せで自分ではあまり見てませんでした。もちろんネット自体はどんどん便利になっていたし、自分自身でもインスタライブなどを実際にするようになってみて、デジタルならではの新しい体感や共感が生まれることが分かっていたんです。だから、以前から知り合いだった安住さんに「なんでネット通販では、もっといろいろできないの?」って聞いたんです。

安住祐一(以下、安住):最初に敬太さんとサイトのリニューアルについて具体的に話したのは2020年の2~3月頃。BBFが以前よりご支援していたものの、BBFのECサイトをどうする、という話ではなく、リアルでのブランドの魅力やショッピングの体験は、どうすればデジタルやネットに置き換えられるのか、という話をしました。

丸山:その際、実現できないと思っていたようなアイデアについて、安住さんから「敬太さん、それできますよ」と(笑)。

安住:そもそも「ケイタ マルヤマ」には、洋服などの商品はもちろんのことパリコレの際のコレクション写真など、膨大な質の高いコンテンツがありました。なので、もしサイトをリニューアルするとしたら、単にECサイトだけでなく、ブランドの情報サイトと通販サイトを統合した方がいい。その上で敬太さんからは、「メディアのようなこともやりたい」とか「ファンの方々が参加してコミュニケーションができる場にしたい」など、とにかくアイデアがどんどん出てきました。話を聞いていて、単にこれまでのECサイトを拡張するのではなく、デジタル時代にファッションブランドのビジネスモデルを再定義するシステムにすべき、と強く感じました。そこで「ぜひBBFでリニューアルさせてください」と私からお願いしたんです。それから1年半、多くのディスカッションを経て、9月にようやく第一弾となる統合リニューアルサイトを公開します。

デジタルになった途端、
皆が同じになる

WWD:アイデアとはどのようなものだった?

丸山:いろいろ話したけれど、買ってもらうことを目的にするのではなく、来てもらうことを目的にして、ついでに買ってもらえるような形にできないかと考えました。ファッションブランドも通販サイトも無数にある中で、例えば、寝る前にネットサーフィンしている人に「『ケイタ マルヤマ』のサイトはいつも楽しいものがアップされているから行ってみようかな」と思っていただきたいな、と。売り物の背景となるストーリーはもちろん、面白いと思ったものを紹介する「月刊ケイタ マルヤマ」的な雑誌のような読み物コンテンツがあってもいい。興味を引く読み物や動画などがどんどん更新されていれば、ショッピングもしてみよう、と思ってくれるかもしれません。

安住:ちょうど敬太さん自身がリアルなポップアップストアで自ら接客したり、週末にはインスタライブで視聴者からの質問に全部答える、といったこともやられていました。そうした要素もサイトでできたらいいよね、みたいな話もして。システムにもかなりの柔軟性が必要です。BBFシステムだからできる部分でもありました。

丸山氏が感じた、
「通販サイトのSold Out表示」
へのギモン

丸山:一方で従来の自社のECサイトを含め、既存のECサイトについてもいろいろ課題があると考えていました。リアルの店舗であれば他とは全然違う形に見えることを目指すのに、デジタルになった途端「白バックで、写真はこういう風に撮って」とか、サイトのデザインも画一的なのがずっと気になっていた。当たり前になっている機能についても問題を感じていたんです。商品の「Sold Out」という表示。そもそもEC在庫がなくなっているだけで、リアル店舗には在庫があるケースも多いのに、なぜ「売り切れ」なのか。システム的に難しいのなら、せめて「店舗に確認」と表示してリアル店舗の電話番号などの連絡先を出すようにすればいいのに。

安住:商品の並び順についても「リアル店舗ならどこに何の商品を置くか、毎日新鮮に見えるように商品をどう並びかえるかなどを最大限注意するのに、ECサイトでは一覧や商品の並び順などに制限があるのはナゼ?」と。どの話も、デジタル上の施策に置き換えてみても、本質的な考え方でした。そういったことはデジタル支援側のわれわれも忘れがちで、おざなりになってしまっている部分だな、と感じたんです。かといって敬太さんが無茶を言っているわけではなく、こちら側の説明を聞いて納得すれば対案が出てくる。これは多くのブランドのECサイト運営に携わってきたわれわれにとっても、改めて多くの学びがあったし、とても有意義な経験でした。

WWD:9月の統合サイトのリニューアルオープン時には、最初に相談した際のアイデアがどのくらい実現されている?

丸山:まずは第一弾という感じで、独自性の強いデザインにしたり、サイトの更新感や商品の並び順にこだわるといった基本的な部分を実現しています。コンテンツ強化についてはオープン後に徐々に取り組んでいけたらと思っています。

安住:サイトの中で、シーズンや希望によって更新・変更できる部分が通常よりはるかに多いなど、既に独自性の高いものになっています。過去のコンテンツの再展開、新コンテンツの製作・展開などを随時行っていく。今は、1年半かけてやっとスタート地点に立ったような状況。まだ敬太さんがやりたいことの何割かしか実現できていないので、まだまだ挑戦していくつもりです。

店舗のウィンドーと同じように
サイトを変化させていく

WWD:今後サイト上で展開予定のコンテンツは?

安住:「月刊ケイタ マルヤマ」と仮称している雑誌風のコンテンツや、動画コンテンツを作ります。インスタライブについては、よりロイヤルなカスタマー限定にしたライブなどを検討しています。

丸山:月刊、というのは雑誌のようにいろいろなテーマを設け、特集や連載のページを作って、ウェブマガジンに近いものをサイト内のコンテンツとして読めるようにする、ということ。そこから買い物ページに簡単に遷移できるような流れも作りたいですね。

安住:敬太さん自身がセレクトした家具やお菓子などを、サイトで販売することも企画しています。物流などの問題もあり、ファッション以外のアイテムを扱うのは非常に大変ですが、それもBBFだからこそサポートしていきたいんです。

丸山:店舗ではできなかったようなこともサイトなら実現できるかもしれない。過去のコレクションを見ながら私自身が解説するような動画をコアなお客さま向けに作ったり。

安住:基本は無料ですが、一部のデジタルコンテンツを有料で販売するのも面白いかもしれません。

丸山:いろいろなアイディアを取り入れられるよう、サイトはフレキシブルな形にしておきたい。まずは読み物や動画を頻繁に更新できるようにすることが大事です。無数のファッションブランドが世界中にある中で、われわれのページにたどり着いてもらえることは奇跡に近いし、2回来てもらえるならそれはもっと奇跡。でも、2回目に来た時にサイトが初回と全く同じ内容だったら3回目はありません。リアルの店舗では、毎日ウィンドーのディスプレーを変えるといった工夫でお客様をお呼びしてきました。同じことをデジタル上で実現できるようにしたいんです。100あるアイデアの中から1つ実現できたらいいというスタンスで、いろいろなことに取り組んでいきます。

TEXT:YOHEI YOSHIDA
PHOTO:YOHEI KICHIRAKU
問い合わせ先
ビービーエフ
03-5202-4702