ファッション

エアークローゼット天沼社長 服選びからサイズ、天候、洗濯まで「膨大なデータで日々進化」

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 日本おける月額制アパレルレンタルサービスの先駆けであるエアークローゼットは、2020年12月末で45万人だった会員数が21年6月末には55万人に増えた。300以上のブランドの約35万点の服の中から、300人所属するプロのスタイリストが利用者のために選んだ3着が届く。利便性やお得感以上に、従来の店舗やEC(ネット通販)の買い物では味わえない服との出合いの提供が女性から支持される。創業からわずか7年だが、株式上場を視野に準備を進めており、マーケットからの注目度も高い。(この記事は「WWDJAPAN」2021年9月6日号からの抜粋です)

 天沼聰社長は「サブスクの本質はお客さまとのコミュニケーションを軸に、変革を重ねることだ」と強調する。服のサブスクは次々に誕生したが、同社の存在が抜きん出ているのは新しい機能の追加やサービス改善を次々に行ってきたからだ。例えば19年に導入したマイクローゼット機能は利用者が手持ちの服を写真データで登録すれば、それらとのコーディネートの相性や重複を考慮した服を提供できるようにするもの。スタイリスト指名機能は、文字通りお気に入りのスタイリストを何度も指名できる。同じ月額料金、あるいはわずかな課金でそれを実現する。購入したら終わりではなく、新しい価値を次々に提供して顧客の満足度を高めて長い関係を築く。「メーカーが商品開発にコストをかけるのに対し、サブスクはお客さまとのリレーションシップが一番重要」と話す。

 同社の相次ぐ変革の土台になっているのが膨大なデータである。目玉のパーソナルスタイリング自体が膨大なデータをAI(人工知能)で処理し、それをスタイリストが活用する仕組みだ(下図を参照)。利用者全体のマクロなデータと、利用者個人のパーソナルなデータを付き合わせる。「例えばA様にスカートを提案する際、過去に丈が59cmだと短いと感想を述べ、別の時に63cmだと長いと答えていたとすれば、何cmがベストなのだろうか。その時々の流行も加味しつつ、本人が気づかないベストを探る」。ブランドや商品ごとに基準が異なるサイズも1点1点採寸してデータ化している。

 バックヤードもデータをもとに業務フローの改善を重ねる。服の出荷・入荷予定をデータ解析し、広い倉庫の中で最も効率のよい場所に保管する。クリーニング後も汚れや匂いが残ってしまった服のデータを分析し、洗濯方法や洗剤を変える。物流においてもデータ分析によって、顧客にとってストレスが少ない方法を常に探る。

 同社では社長室直轄のデータサイエンスチームを置いている。商品、流行、顧客、天候、物流、クレームなど業務に紐づくあらゆるデータを横断的に分析し、利用者の満足度につなげる。天沼社長は「アパレルは毎シーズン膨大なSKU(最小在庫管理単位)が生み出される。だからこそデータ活用が武器になる」と話す。

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