ファッション

エアビーと小山薫堂がタッグを組んだ新感覚ホテル「ヤナカソウ」に試泊 ディープな下町歩き体験も

 放送作家・脚本家として活躍する小山薫堂が率いるブランドデザイン企業オレンジ・アンド・パートナーズ(以下、オレンジ)がエアビーアンドビー(AIRBNB以下、エアビー)と組んでプロデュースしたホテル「ヤナカソウ(YANAKA SOW)」が5月1日、東京・谷中にオープンする。ホテルのオーナーは積水ハウス不動産東京で、オレンジとの共同ホテルブランド第1弾だ。ホテルの運営は民泊事業会社のエアトリステイが行う。「ヤナカソウ」の“ソウ”とは、谷中の文化の“層”を深掘りすること、“住む”と“泊まる”の間のような地域と交わる場“荘”、旅人と地域の住人をつなぐ町に寄り“添う”の3つの意味が込められている。

 「ヤナカソウ」は、民泊の温かみとホテルの快適性を兼備したホテルで、フロントやレストランなどはなく、タブレットを使用した無人チェックイン・チェックアウト。予約はエアビーで行い、全て事前予約性で現地決済もなく、人的オペレーションを抑えることで1泊1万6000円程度というリーズナブルな客室料を実現している。客室は定員4人の部屋が2タイプと和室付き定員6人の部屋が3タイプの全13室で、各客室にはIHコンロ付きキッチンや大型冷蔵庫が設置してあり、宿泊だけでなく長期滞在も可能だ。また、ホテルには15〜18時に谷中の歴史や文化に詳しい“ヤナカディガー(YANAKA DIGGER)”が在席しており、谷中の町歩きのサポートをしてくれる。

“住む”と泊まる“の間、下町滞在を楽しむ隠れ家

 ここでは、ヤナカディガーによる町歩きと「ヤナカソウ」の試泊体験をリポートする。日暮里駅から歩いて10分程度、閑静な住宅街にある「ヤナカソウ」はまるで隠れ家のようだ。セルフチェックインを済ませて畳スペースのあるラウンジへ。そこで、このホテルをプロデュースしたオレンジの佐藤剛史・事業開発デイビジョン・チーフ・プロデューサー(CP)がこのプロジェクトの背景などを説明してくれた。「エアビーとのパートナーシップは、日本で民泊を盛り上げたいという思いから。このホテルは“住む”と“泊まる”の両方を想定しているので、ウイークリーマンションやマンスリーマンションとしての使用もできるし、企業の研修などの話もある」と言う。ラウンジには書籍やアートが飾られ、テーブルには大きな谷中のマップが置いてある。「この辺りは寺町でもあり、昔は遊郭があった。だから、ホテル内のアートのテーマは“坊主の煩悩”。守矢務、Buggy、yanagida masami、中野泰輔といったアーティスト4人を起用して、それをテーマに作品を制作してもらった。各部屋にもコンセプトに合ったアートと書籍が置いてある。選書は、バッハ(BACH)の幅允孝さんにお願いした」と佐藤CP。
 ランドリーコーナーには懐かしいカセットプレーヤーとカセットが並べてある。「これらは、カセットテープ専門店ワルツ(WALTS)の角田太郎さんに選んでもらった」と、至るところにこだわりが見られる。ラウンジでは、少し目線を変えて谷中の地形や歴史、建築などを捉えたオリジナルのガイドブックも販売。アーティストによるポストカードは無料で提供している。佐藤CPは、「ポストカードはゲストとのコミュニケーションツールだ。ポストの投函口は3つあり、左は、大切な人への便り、中央は、次の旅人へのメッセージ、右は、谷中の面白かったスポットを投函できるようになっている。大切な人への便りは普通郵便で郵送するが、中と右に投函されたものは地域の情報として保管する」と話す。これらが、今はまっさらな谷中のマップ上に反映されていくようだ。

エキゾチックスポットから知る人ぞ知るバーまで

 部屋に荷物を置いて、佐藤CPとヤナカディガーの永山慶志郎さんと町歩きに出かけた。ホテルから歩いてすぐ、夕焼けのフォトスポットである谷中銀座への階段を降りると、異国情緒たっぷりの店舗「ザクロ(ZAKURO)」がある。雑貨屋かと思いきや、中はトルコ料理のレストランになっている。カラフルなランプに絨毯が敷き詰められ「ここは谷中か、イスタンブールか?」と錯覚を覚える。お茶だけでも利用可能で、ザクロジュースやチアシードジュースなどを提供している。谷中銀座の商店街を歩いていくと、昔ながらの八百屋や魚屋があり、「越後屋本店」という酒屋の外では夕方早くから立ち飲みをする人の姿が見られた。永山さんは「谷中は、こんな感じでちょい飲みする場所がたくさんある」と言う。日暮里の方に戻り、1949年に開設された初音小路へ。まるで、新宿ゴールデン街を小さくしたような渋いアーケード内のワインバー「セッキー」に案内された。「ここのオーナーはフレンチの料理人で、ワインのセレクトだけでなく料理も美味しい」と永山さん。キャロット・ラペやきゅうりのヨーグルト和えなどにはコブミカンやクミンなどのスパイスがさりげなく使われており、さすがフレンチ料理のプロの味だと実感。町歩きの最後は、根津の知る人ぞ知るバー「天井桟敷の人々」へ。このバーは同名の映画が大好きだった故オーナーが1983年に創業。それ以来、地元の人々に愛され続けている場所だ。ボトルがずらりと並んだカウンターで、現在のオーナーと会話をしながら、築地市場から仕入れた脂の乗ったキビナゴや絶品コーンビーフ丼をいただく。永山さんは「谷中はクオリティーの高い食材が集まる場所。だから、食べ歩きも楽しいし、商店街で食材を買ってホテルで料理して楽しむことができる」と話す。

床の間に障子を施した落ち着きのある部屋

 ホテルの部屋は37~47平方メートルとゆったりしており、和室タイプの部屋は子どものいる家族連れなどにぴったりだ。各部屋には床の間や障子が施され、和風でほっと落ち着く空間になっている。私が宿泊した部屋の床の間には、“東京の風景”をテーマにした書籍が置いてある。キッチンや大型冷蔵庫はもちろんのこと、仕事をしたり食事をしたりするダイニング兼リビングスペースがあるので長期滞在にもおすすめだ。ベッドも快適で朝まで熟睡。
“住む”と“泊まる”の間という「ヤナカソウ」は、谷中の町の暮らしを体験できる場所。都内にいながら小旅行をしている気分になる。1泊というよりは、数日滞在していろいろな過ごし方を楽しみたい。「ヤナカソウ」は、谷中という下町コミュニティーの中に息づく新しいタイプの滞在スポットになりそうだ。

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