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進化する幸せ産業(5)ワーケーション編 東京の旬を五感で味わう23区内のバカンス体験

 この夏にキーワードとなる“ワーケーション”とはワークとバケーションを組み合わせた造語。旅先のような環境で、バカンスを楽しみながら仕事を進めるスタイルだ。感染拡大防止の観点から考えると、遠方へ出向くべきか迷うが、せっかくならリラックスしたいし、刺激も受けたい。そこでこの夏、開業したばかりの「ウォーターズ竹芝(WATERS takeshiba)」内にできたホテル「メズム東京、オートグラフ コレクション」で、東京の“今”を五感で感じるワーケーションを体験してきた。

 旅の醍醐味は、まず目的にたどり着くこと。「メズム東京、オートグラフ コレクション」はJR山手線・京浜東北線の浜松町駅から徒歩でわずか6分。ゆりかもめでは竹芝駅のすぐ近くだ。ホテルが位置する「ウォーターズ竹芝」の敷地内に新しく船着場もオープンし、浅草や両国、お台場などへの定期航路便も開通した。私は最近手に入れたクロスバイクに乗って、荻窪の自宅から向かうことに。

 目指すのは伊豆大島や小笠原諸島への出発点となる、竹芝桟橋にほど近い「ウォーターズ竹芝」だ。都内、飯田橋エリアでの用事を終え、六本木ヒルズ、東京タワーなど名所を通過しながら東京湾へと向かう。たどり着いたときにはもう、感無量。ホテルのある建物の先はすぐ海で、スカイツリーも望むことができるのだ。最終目的地としては申し分ない。

 1階エントランスで体温チェックや消毒を済ませ、16階のフロントへ。自転車は1階のエントランスで預かってくれるので、外出時にもすぐピックアップできる。都内近隣在住者にとって東京湾沿いにある「メズム東京、オートグラフ コレクション」は程よい距離の自転車旅になるだろう。健脚自慢なら事前に荷物を送り、ランニングで向かうのもチャレンジングかもしれない。(実際、そういう方も結構いるのだとか!)

視覚、聴覚、嗅覚…あらゆるアンテナでこの瞬間の東京をキャッチする高揚感

 さて、JR東日本グループの日本ホテルがマリオット・インターナショナルと初提携したホテル「メズム東京、オートグラフ コレクション」とはどんなホテルなのだろう。16階のロビーで出迎えるのは正面の大開口部から望むスカイツリー。TOKYOの鼓動を繊細な糸で表現したアートワークと、ブランドイメージに合わせて調合した爽やかなフレグランス(春夏と秋冬で香りが変わるらしい!)に魅惑されながらロビーに向かうと、9mの開放的な空間が広がる。水面に揺らぐ光のような天井のアートや、波しぶきのようなオブジェ、耳に心地いいホテルオリジナルセレクトの音楽など、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚……あらゆる感覚を駆使して今この瞬間の東京を体感するのがコンセプトであり、その仕掛けが至る所に配されている。

 「スターサービスクルー」と呼ばれる接客スタッフのユニホームはヨウジヤマモト社の「Y‘s BANG ON!」によるデザイン。メンズのパターンをベースにしたジェンダーレスなブランドだけに、一つのサイズでさまざまな体格の人にフィットし、それぞれの個性を引き出すスタイルだ。「ヘアスタイルやメイクは、クルー全員がメイクアップスクールのレッスンを受け、その人らしいモードなメイク法を個別に習得しました」と説明してくれたのは広報のジェーキンス沙織さん。このご時勢なので、みな黒のマスクを着けての接客だが、それも演出の一部であるかのようにスタイリッシュ。クルーはみな、右手を左胸あたりに添えるような所作で挨拶をする。劇団四季の劇場にも隣接していてエンターテインメントの空気が漂うこのエリアらしく、ホテル内をステージに見立てて、「メズム東京」の世界観を築いている。

 空間やサービスに統一感をもたらすブランディング――それをかなえるのが、この規模のホテルでは例を見ないであろうインハウスデザイナーの存在だ。もともとファッションやコスメ業界のデザインの分野で活躍していた、まだ20代の小泉堅太郎氏が抜擢され、ブランディングを担当。そのデザインは多岐にわたり、オリジナルのカートまで作ってしまった。銅や人工大理石、レザーなど素材もラグジュアリーだが、透かし彫りや車輪が見えない細工など職人の技術も生かされている逸品だ。

 中でも小泉氏が力を注いだのは、各客室に備えられたブック型のアメニティーキット。大航海時代の冒険小説のようなボックスの表紙を開くと、歯ブラシやシャワーキャップなどのアメニティーが入った小さなボックスがパズルのように組み合わさっている。中身はもちろん持ち帰り可能。本をかたどったこのボックスを8000円で販売したところ、瞬く間に完売し、現在入荷待ちだという。この反響には「作りたいものを作りたいという思いで、自由にデザインしています」と語る小泉氏も驚いたという。ブランディングが強化されることで、タレント(メズム東京では従業員をそう呼ぶ)一人ひとりの中のイメージも膨らみ、胸に手を添える独特の挨拶や、オリジナルのウェルカムミュージックなど、さまざまなアイデアが寄せられて採用されたという。

ワーケーションの味方は快適環境と東京らしいビュー

 ワーケーションが効率よく進むよう客室の環境もサポートしてくれる。ガーデンビューの部屋にはバルコニーがあり、東京湾や浜離宮恩賜庭園、スカイツリーなど東京らしいビューを見渡せる。ハンドドリップでたのしむ猿田彦珈琲のオリジナルブレンド、茶せんで点てる本格的な抹茶など、ゆったりと過ごすためのアイテムもそろっている。また「メズム東京」では全客室にCASIOの電子ピアノを完備。気分転換に好きな曲を演奏したり、抹茶を点ててみたりと、室内で過ごす時間が娯楽になる環境だ。

 また、おこもりステイプラン「ザ・プライベート」では、チェックインも食事も部屋内ででき、外部との接触を最小限にした滞在も可能だ。また、目の前でソースをかけて仕上げるなど、インルームダイニングでもレストラン「シェフズ・シアター」のクリエィティブなフレンチを堪能できるのだ。バルコニーで潮風を感じながらいただくインルームの朝食も格別だ。

日常を持ち込む滞在だからこそ非日常での刺激が必要

 自分だけの空間で作業に没頭し、目標としていたノルマを達成できたので、16階のバー&ラウンジ「ウィスク」へ。ここはアーティストのアトリエをイメージしたミクソロジーバーで、ゴッホの「ひまわり」やモネの「睡蓮」、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」など、誰もが知る名画をモチーフに、その名を付けたオリジナルカクテルを提供している。あっと驚く斬新なプレゼンテーションばかりだが、見た目だけでなく素材や味にもこだわっている。奇をてらわず、バランスのいいカクテルなので、どれも試してみたくなり困る……!なにせメニューには18種類の名画が並んでいるのだから。フロアでは毎日、クラシックから長唄などの邦楽までジャンルを問わず「ショーケース」という無料イベントが開催され、その音が心地よく流れてくる。「ウィスク」はラストオーダーが2時30分と深夜まで営業しているので、残業後の自分へのご褒美にも最適だ。

 ワーケーション滞在とは、いつもの業務を進めつつ非日常的な空間で自分を解放すること。そのためにも、安らぎと刺激が両立する場がふさわしい。23区内の通勤圏内でありながら東京のトレンドを感じられる「メズム東京」は、そんな対極の望みをかなえてくれる。いつもの東京を別の角度から感じ、五感で楽しむ。海外やリゾート地までの交通費を考えるとすこし贅沢もできそうだ。ポストコロナは私たちに新しい休日の過ごし方を提案している。

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

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