ファッション

創業70周年を迎えた「マックスマーラ」 女性の役割の変化と共に歩んできた軌跡を表現

 「マックスマーラ(MAX MARA)」は今年、創業70周年を迎えた。2月25日にミラノ・ファッション・ウイークで発表された2021-22年秋冬コレクション「1951」もそんなブランドの節目を祝うものだ。設立当初から同ブランドが追求しているのは、女性たちに寄り添い、自信や心地よさをもたらすウエアラブルな服づくり。今季はブランドらしいイタリアのアクセントを効かせたブリティッシュスタイルに、英国のカントリームードを取り入れた。今年で勤続34年になるというイアン・グリフィス(Ian Griffiths)=クリエイティブ・ディレクターに、初めてデジタルのみでの発表となった今シーズンのクリエイションから、長いキャリアの中でのブランドや環境の変化までを尋ねた。

――今シーズンのコレクション制作において、70周年という点は意識しましたか?そして、コレクションを通して表現したかったメッセージとは?

イアン・グリフィス「マックスマーラ」クリエイティブ・ディレクター(以下、グリフィス):もちろん!アーカイブを見ることに多くの時間を費やしました。今シーズンのコレクションの出発点は、「マックスマーラ」が1951年から70年間、いかに女性の役割の変化と共に歩んできたかを反映することです。50年代当時、多くの女性は結婚して妻になり、必ずしも自分自身のキャリアがあるわけではなかった。しかし、創業者のアキーレ・マラモッティ(Achille Maramotti)は、志の高い女性たちの役割が変わっていくことを感じ取り、彼女たちに向けた服を作るために「マックスマーラ」を立ち上げました。その方向性は正しく、やがて“妻”でしかなかった女性たちは自分の会社を経営したり、弁護士や医師として活躍したりと素晴らしいキャリアを築くようになりました。そんな女性たちの変化を祝い、女性たちのエネルギーや高揚感を表現したかったのです。

――では、アーカイブが今シーズンのインスピレーションとなったのでしょうか?

グリフィス:アーカイブを見ると、「マックスマーラ」は昔からずっとブリティッシュスタイルを愛していることが分かります。それはオーセンティックかつクラシックでありながら、着こなし方によって個性が生まれるもの。今回は英国人である私自身が田舎に行った時に着るようなアイテムに着目し、カントリースタイルを都会的に仕上げました。つまり、英国からのインスピレーションをイタリアが誇る最高級の素材や職人の力で形にしたのです。そして、私は「マックスマーラ」を着る女性たちを自身の力で称号を手にしたクイーンのように考えているので、“クイーン”の代表格である英エリザベス2世からもインスピレーションを得ました。彼女のスタイルは、まさに英国クラシック。ワックスジャケットとキルトを着用している写真などから、デザインのアイデアをふくらませました。

――ショー冒頭に登場したキャメルは、色としても素材としても「マックスマーラ」にとって重要な要素ですが、キャメルに対する思いを教えてください。

グリフィス:いつだってキャメルについて考えていて、私の世界はキャメルに染まっています。夢に出てくることさえあるくらいですよ(笑)。キャメルはもともと1950年代にメンズウエアのワードローブから借りてきたのが始まりでしたが、やがて「マックスマーラ」を特徴付けるカラーとなり、今回も含め多くのショーでオープニングを飾っています。今では、「マックスマーラ」に自分のコートを探しに来られる男性もいるんですよ。

――今回は初めてデジタルのみでコレクション発表となりましたが、実際に取り組んでみてどうでしたか?

グリフィス:リアルなショーを開くのとは、全く異なるプロセスでした。コレクションのビデオは普通のファッションショーのように見えますが、さまざまなアングルで撮影する必要があるので、実は6回ショーをやりました。ヘアメイクなどの準備も含めると、1日がかりの撮影でしたね。そして、ディテールやシーン別の撮影もあるので、編集を経て完成するまで実際のショーのようなエネルギーやワクワクを感じられないというのは、なんとも不思議な感覚でした。一方、デジタルになったことで世界中のたくさんの人に同じものを届けることができるようになりました。なので、リアルなショーは再開させたいですが、閉ざされたショーに戻ることはないでしょう。これからはデジタルの要素を取り入れたリアルなショーに取り組んでいきたいと考えています。

――ロケーションも印象的でしたが、会場についても教えてください。

グリフィス:会場に選んだのは、ミラノにあるトリエンナーレ・デザイン美術館の一部。そのカーブしたデザインをロンドンのリージェントストリートと重ね合わせました。リージェントストリートには、特別なお祝いの時にいくつもの英国旗が吊るされます。そのアイデアを取り入れ、「マックスマーラ」の1950年代のブランドの広告に使われていたグラフィックを用いた旗を吊るしました。窓から大きな公園を見渡せるという点も、ケンジントン宮殿など英国王室の宮殿を少し感じさせます。

――長年「マックスマーラ」で働いてきからこそ分かるずっと変わらないこと、そして変わったことは?

グリフィス:まず変わっていないとはっきり言えることは、アキーレ・マラモッティが掲げた「リアルな女性のためのリアルな服」という考え方です。それはクラシックな服ですが、重要なのは必ずしもクラシックは保守的ではないということ。モダンにも、時には少し反骨的にだってなります。そして変わったのは、女性の仕事着に対する考え方。私が「マックスマーラ」に入ったころ、職場で女性が真剣だと認めてもらうためには“パワー・ドレッシング”、つまりとても厳格なドレスコードやユニフォームがありました。しかし今では、女性は自分に似合うものや自分が心地よく感じるものを着られるようになった。スーツだけでなく、選べる服のバリエーションが格段に広がったのです。

――34年のキャリアの中で最も印象的だった出来事や思い出を教えてください。

グリフィス:どこから始めればいいでしょう(笑)。たくさんありますが、最も誇らしかった瞬間の一つは、2018年に当時のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)米下院議長がドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領との会談に「マックスマーラ」の赤いコートを選んだ時のこと。彼女がホワイトハウスから出てくるところを捉えた写真はインターネットを通して世界に広がり大きな話題になりました。そのコートは、彼女が8年前から愛用していて、13年のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領の就任式でも着用していたものです。“勝負”の時に選ばれたことで、「マックスマーラ」が服を通して表現し続けている女性のエンパワーメントの象徴となりました。

――この時代にファッションが持つ役割とは?

グリフィス:私は、着る人を特別な気分をもたらしてくれるファッションの力を信じています。ファッションには自意識過剰に陥らせるようなネガティブな部分もありますが、私はポジティブな面を探求し続けていきたい。コロナ後の世界では、新しいファッションに挑戦したり、ドレスアップを楽しんだりすることから生まれる喜びを再発見できるのではないでしょうか。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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