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キム・ジョーンズが原点に戻した「フェンディ」、モードを強めた「プラダ」 ミラノコレ前半リポート7選

 2021-22年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが開催中です。ここでは1日目から3日目までに発表された中から厳選した7ブランドをご紹介。長年メンズとウィメンズのコレクションを取材する村上要「WWDJAPAN.com」編集長と、ウィメンズコレクション担当の大杉真心「WWDジャパン」記者が対談形式でリポートします。

「ミッソーニ」のニットは在宅勤務の最高級アイテム

大杉真心「WWDジャパン」記者(以下、大杉):「ミッソーニ(MISSONI)」は引き込まれてしまう動画でした。映像はボウリング場からスタートし、"どこでもドア"のような窓をくぐって、路上や部屋の中など別の空間へとワープしていきます。ニットワンピースなどを着用したモデルたちが楽しそうに会話をしている姿や、カメラの前を横切る姿は魅力的に見えました。

村上要「WWDJAPAN.com」編集長(以下、村上):ファーストカットのボウリング場から、なぜか全員リゾートウエアの学校でのシーン(笑)、そして屋外のペデストリアンまで、全部が1カットに見える不思議で素敵な映像でしたね。今の時代はオンもオフも境界は曖昧で、僕らの日常も全然違う場面の組み合わせというよりは、いろんなシーンに行ったり来たりするカンジ。そんな日常生活を映像で表現しているように思えました。

大杉:洋服はブランドらしいマルチストライプで、ニットワンピースやトップスとパンツのセットアップなどシンプルな構造のアイテムが多かったように感じます。秋冬ですが、重たい印象がなくて着心地がよさそう。またパーカやショートパンツをスニーカーに合わせるなど、スポーツ要素が増えていたのも新鮮でした。若々しさがあり、アラサー層にも受け入れられそうな印象です。

村上:アラサーどころか、軍資金さえあれば、もっと若い女性も「挑戦してみたい!!」って思ってくれるだろうスタイルでした。従来よりスポーツやストリートのムードにシフトしながら、健康的な素肌ならチョットくらい大胆に見せても大丈夫、という雰囲気を漂わせている。でも、「ミッソーニ」らしいカラフルなジグザグや、柔らかなニットの軸はブレないから、セクシーというよりヘルシー。ニットのセットアップは、在宅勤務の最高級アイテムとしても使えそう。

スタート地点に立ったキム・ジョーンズの「フェンディ」

大杉:いよいよ、キム・ジョーンズ(Kim Jones)による「フェンディ(FENDI)」のプレタポルテがお披露目になりましたね!先月発表したオートクチュールとはまた異なる雰囲気で、とてもソリッドでシンプル。ファーストルックは、毛皮ビジネスから始まったメゾンを象徴するキャメル色のファーコートでした。その後も全身ワントーンでそろえたコーディネートが続き、ホワイト、ペールピンク、モーブ、グレーへと変化していくカラーパレットが美しかったです。これらは、ブランドを現在に導いたフェンディ家の5人姉妹のワードローブから着想を得ているそうです。

村上:「フェンディ」の「FF」は、「ファン ファー(FUN FUR)」の頭文字。だからこそユーモアは忘れちゃいけないブランドだけど、ここ数年は“インスタ映え”とかストリートを意識しすぎていた感もありました。もう一回原点に立ち返り、「『フェンディ』のお客さま、洋服も、長く愛してくれる人たちって誰だろう?」と考え直したようなコレクションです。本人も「今回は、ボールが転がりだすスタート地点なんだ」って言っているね。シルクやオーガンジーを多用して、ジャケットのような肩周りのワンピース、ドレスのように流れるシャツなど、メンズ由来とウィメンズ由来のアイテムを融合。メンズ出身、ウィメンズは初挑戦のキムらしいなぁ、と思いました。

大杉:前任の故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)による「フェンディ」はキャッチーな柄やアイテムの提案を得意としていましたが、キムは正統派のイタリアのエレガンスに着目したようですね。昨年からの流れですが、イタリアンブランドが得意とするタイムレスなアイテムが見直されていると思います。私が唯一、物足りなさを感じたのはアクセサリーです。今回はクラッチやハンドバッグ、トートバッグなど実用性を考慮した"きちんとバッグ"がそろっていて、シューズも無駄な装飾がなく削ぎ落とされた印象です。これまでの「フェンディ」は、アイコンバッグの"バゲット"をマイクロサイズで提案するなど、「何が入るの!?」とツッコミたくなる雑貨が心をくすぐりました。

村上:確かに、バッグやチャーム、ストラップも、まずは一旦“オールリセット”だった。物足りなく思う人もいるかもしれないね。こういうご時世だから賛否両論あるんだろうけれど、バッグでもファー使いが印象的だったね。昔、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)にインタビューした時、「ラグジュアリーやデザイナーズの洋服が決定的に違うのは、コミュニケーションを誘う点だ。見るからに肌触りの良い素材の洋服を着ている人には、『触ってみて良い?』と話しかけてしまう。そうやってコミュニケーションを喚起するのが、ラグジュアリーの魅力だ」と聞いて、とっても納得したんだけれど、ファーバッグを見て、そんなことを思い出しました。アクセサリーの注目は、ジュエリーかな?キムとともにクリエイションを手がけるシルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)の娘で4代目に当たるデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)のゴールドアクセサリーが首元や耳を彩っていたね。キムはクチュールの時から、「僕は、シルヴィアからデルフィナへのスムーズな継承を支えるリリーフだから」と言い切っています。今後は、アクセサリーを起点に、どれだけデルフィナの現代的な感覚がコレクション全体に浸透するか、注目ですね。

常に女性を応援してきた「マックスマーラ」の70周年

大杉:「マックスマーラ(MAX MARA)」は今年でなんと創業70周年。今季は70年間で変化した女性たちの環境や地位がキーワードになっているそうです。というのも創業時の顧客は、医師の妻など"富裕層の奥さま"だったけれど、今はエグゼクティブや経営者などの"ビジネスウーマン"が増えている。常に女性を応援してきた歴史は、ブランドの価値につながっています。ブリティッシュとイタリアンの正統派と遊び心あるスタイルを掛け合わせて、社会的にも精神的にも自立した女性のワードローブにまとめました。私も「マックスマーラ」の上質なアイコンコートは永遠の憧れで、いつか着こなしたい!と思っています。

村上:僕も、一昨年も去年も「“テディベアコート”、やっぱり買うべきかしら?」と思っています。今回もファーストルックは“テディベア”チェスターと、ボンバージャケットのレイヤードでしたね。キャメル、カーキ、ネイビー、ガンクラブチェック、レオパード……。70年間、リアルな女性のワードローブの一翼を担ってきたプライドを感じました。でもケーブル編みのニットをオーバーサイズにして、合わせるガンクラブチェックのパネルスカートをウールからチュールに変えるだけで、1951年から続くスタイルも2021年っぽく見えますね。70周年のシンボルマーク(なのかな?)に使っていた「!」のマークには、「素材で遊んだら、昔ながらのスタイルも今風に!」という驚きが表現されているのかな?と勝手に想像しました。キルティングのプルオーバーや“テディベア”コートを含めて、名門のイタリアンブランドには、もっと素材で遊んで欲しいな。余談ですが「マックスマーラ」や「スポーツマックス」にはぜひ、カワイイアイメイクにも挑戦して欲しいです。毎回アイラインもリップも強めで、正直、チョット間口を狭めて、ソンしちゃってる気がするので。

大杉:このようなコレクションはシンプルな無観客ショーで見せて正解ですね。編集部では長年クリエイティブ・ディレクターを務めるイアン・グリフィス(Ian Griffiths)の取材も行いました。後日インタビュー記事を公開予定ですので、そちらも合わせて読んでいただければと思います。

ラフ加入で「ミュウミュウ」との差別化が明確になった「プラダ」

大杉:ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)によるウィメンズは2シーズン目ですね。「プラダ(PRADA)」はいつも同じ空間演出でメンズとウィメンズ・コレクションを発表していますが、今回もラフが加わって初のメンズだった1月のメンズと共通テーマでした。色鮮やかなフェイクファーと大理石を床や壁に施した部屋をモデルたちが駆け抜けて行くので、どこでスクショしても可愛く撮れます(笑)。村上さんはこのコレクションをどのように見られましたか?

村上:なるほど。正直「プラダ」は、デジタル戦略がそんなに上手じゃなかったのに進化してるね(笑)。ラフが加入してから3つ目のコレクションですね。正直、ウィメンズの方が「2人の協業が、良い結果につながっているな」って思います。メンズは、けっこうシルエットとキーアイテム、そしてスタイリングのいずれもラフ・シモンズ、いやブランドとしての「ラフ・シモンズ」だったと思っていて、チョット心配だったんです。でもウィメンズは、ピタピタのニットやブーツ、反対にブカブカのMA-1などラフっぽいアイテムさえ、チュールのスカートや不思議な絵柄のカーディガン、スパンコールのセットアップなどミウッチャらしいアイテムと組み合わさるから、「2人の協業」を感じやすい。

大杉:どのルックにも登場するキーアイテムは、幾何学柄や花柄のセカンドスキン。ジャカードニットのボディースーツで、シャツやジャケットの下に忍ばせるとレイヤードが楽しめるアイテムです。カラータイツのようでかわいいですね!ミウッチャとラフは「変化と変容、開かれた可能性」というテーマで対話を重ね、このコレクションで人間の本質に迫ったそうです。人間、誰もが持つ"男性らしさと女性らしさの両極間に存在する「シンプルさと複雑さ」「上品さと実用性」「制限と解放」の間を表現しているとのこと。分かりやすいのが、プレーンなスーツと複雑な柄のニットの組み合わせ。テーラードスーツは厳格さがあり、ボディースーツは性別を問わない体の自由を象徴しています。

村上:「制限と解放」、2人はどんな話をするんだろう(笑)?ラフとの協業については、「プラダ」の視点のみならず、会社としてのプラダグループの視点で考えるのも大事だと思っています。僕は半年前の2021年春夏シーズン、「プラダ」はもちろんだけど、「ミュウミュウ(MIU MIU)」も大好きでした。レトロスポーツなスタイルを見て、「そう!『ミュウミュウ』って、こういうチョット不思議な女の子の世界だよ!」って嬉しくなって。ここ数年の「ミュウミュウ」は、「プラダ」との差別化が難しくなっていた印象で、グループ内で食い合っていた印象がありました。それがラフの加入で、モードの性格を強めた「プラダ」と、ミウッチャらしい「ミュウミュウ」の違いが再び明確になったと思っています。だから「プラダ」は、ちょっとラフっぽいくらいでちょうど良いのかもしれない、とも思い始めています。

大杉:最後にはおなじみとなったミウッチャとラフの対話が収録されていて、今回はゲストにブランドと所縁のある建築家のレム・コールハース(Rem Koolhaas)をはじめ、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、映画監督のリー・ダニエルズ(Lee Daniels)、音楽家のリッチー・ホゥティン(Richie Hawtin)、トランスジェンダーのモデルで俳優のハンター・シェーファー(Hunter Schafer)が登場します。マークが笑いをとって場を和ませていたのが印象的で、「プラダらしさ(Pradaness)とは?」という質問にマークが「ミセスプラダ(ミウッチャ)そのもの。彼女の着眼点、知性、スタイル、テイスト、文化、ファッションへの愛が詰まったもの」と話していたのがその通りだと思いました。

着る人をやさしく包み込む「ブルネロ クチネリ」

大杉:「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は今季、ニットの質感で“フィール・グッド・スタイル”を目指したそうです。不安やストレスを抱えやすい状況下で、着る人を包み込んでくれるエレガントな服がそろっていますね。やさしい色使いに、上質な素材の美しさが伝わって、本当に直接触れたいと思うコレクションです。

村上:これまで以上に淡い色彩でしたね。ベージュやグレー、デニムでさえ、今季は総じてペールトーン。映像の舞台、「ブルネロ クチネリ」の古里であるソロメオ村の朝霧に包まれているような気持ちになりました。映像ではコーデュロイがクローズアップで何度か映ったけれど、このブランドのコーデュロイはコットンだけじゃないからね(笑)。カシミヤとか入ってて、直接触れると、驚愕します(笑)。

大杉:特にプライベートとバブリックの境を曖昧にしてジャケットにニットパンツを合わせるなど、1月のメンズ・コレクションで編集部が提案したホームとフォーマルを掛け合わせた“ホーマル”トレンドを体現するコレクションでした!クチネリさんはいつも世の中が必要とする服を的確に提案されていますね。

“オールドハリウッド”を表現した「モスキーノ」の豪華ショー

村上:「モスキーノ(MOSCHINO)」は、“おうち時間”が長くなっている今、まさかのスーツから始まったよ(笑)。さすがジェレミー・スコット(Jeremy Scott)、パンクなのか、何も考えていないのか?どっちだろう?と思ったら、今度は田舎の牧場に来ちゃったよ!!でもスタイルは、壁紙やタペストリー柄のウールをハイブリッドしたペプラムスーツ。お次の美術館では、スーパークラシックなセットアップに、ドレスです!今はまだ、どこにも着ていけないよ(笑)!!

大杉:ジェレミーはLAを拠点にしている利点を生かしているなと思いました。まずはモデルの豪華さです!ディタ・フォン・ティース(Dita Von Teese)をはじめ、アンバー・ヴァレッタ(Amber Valletta)、ミランダ・カー(Miranda Kerr)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、テイラー・ヒル(Taylor Hill)ステラ・マックスウェル(Stella Maxwell)ら世代の異なるモデルや女優、パフォーマーまで出てきました。確かに、今はどこへも着ていけない服ばかりでしたが、ハリウッドのようなショービジネスのお膝元ではこのようなドレスの需要があるのだと納得しました。コレクションテーマもずばり“オールドハリウッド”でした。

村上:大都会、牧場、美術館、サファリ、そしてシアター。映像作品として、大いに楽しみました。「モスキーノ」の映像に登場するモデルって、みんな芸達者だよね(笑)。コレクションのデジタル配信が始まったばかりの頃は「やっぱりモデルと役者って、違うんだなぁ」なんて思っていたけれど、「モスキーノ」はモデルが完璧な役者で、役者が完璧なモデル。ウィニー・ハーロウ(Winnie Hallow)も、めちゃくちゃ演技上手でした。

大杉:動物や絵画になりきるポージングも面白かったですね。キャッチーで着るだけで気持ちが高揚しそうなウエアばかりなので、出演者も皆楽しそうでした。そして最後にはディタ・フォン・ティースの美尻のドアップで幕が閉まるシーンが衝撃的でした(笑)。

ポジティブな気持ちになれる「エンポリオ アルマーニ」

村上:ネオンカラーの照明が瞬く「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」のメンズ&ウィメンズ・コレクションは、鮮やかなパープルやフューシャピンク、エメラルドグリーンなど元気いっぱい。グレーベースのセットアップにピンクのシャツくらい、さりげなく取り入れているメンズが良かったな。リアルショーでは顔色変えずに歩く姿しか見られないけれど、映像ではウォーキングを始める前のポージングやちょっとしたダンス、笑顔が見られて、「あぁ、こういうビビッドな色を着ると、こんな風に楽しい気持ちになれるだろうな」って素直に思えます。

大杉:得意とするリラックスエレガントな世界観に、1980年代のポップカルチャーのムードをプラスしたコレクションでしたね。見ているだけで、ポジティブな気持ちになれる演出でした。ウィメンズはハイウエストで細身。ベルベットなどの上質な素材感に相反するスポーツのエッセンスも加わっていました。

村上:メンズは、いつもよりゆとりのあるシルエット。元気になれる色と、リラックスできるシルエットの対比がユニークでした。素材では、いつも以上にベルベットが多かったかな?アルマーニと言えば、のベルベットは触り心地が抜群だから、イヴニングだけじゃなくデイリーウエアに取り入れても良いかもね。

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