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連載 コレクション日記

2021-22年秋冬ウィメンズコレが開幕 米コレは副大統領の継娘がモデルデビュー、「ゴシップガール」とのコラボも

 2021-22年秋冬ウィメンズ・コレクションが開幕した。これまでのニューヨーク・ファッション・ウイークがアメリカン・コレクションズに改称し、2月14日にシーズンをキックオフした。ここ数年ニューヨーク・コレクションのファッションとバックステージを取材してきた北坂映梨「WWDJAPAN.com」ビューティデスクと、今季はメンズコレクションもリポートしてきた大澤錬「WWDJAPAN.com」記者が新生アメリカン・コレクションズをレビューする。

北坂映梨「WWDJAPAN.com」ビューティデスク(以下、北坂):あっという間にウィメンズコレクションもスタート!最後に出張に行ったのが昨年2月のNYコレなので、ちょうど一年が経ちました。本当に、時が経つのが早い(笑)。

大澤錬「WWDJAPAN.com」記者(以下、大澤):今季はデジタル・プラットフォーム「ランウエイ360(Runway360)」を使って、場所や時期に関係なく、アメリカを拠点とするデザイナーがコレクションを発表できるようになりました。アメリカファッション協議会(以下、CFDA)のトム・フォード(Tom Ford)会長によると、昨今デザイナーがNY外やシーズン外で発表することが増えていることを受け、より柔軟な体制が必要と感じての決断だそうです。

北坂:そんな「トム・フォード(TOM FORD)」は、新型コロナウイルスの影響で急遽コレクション発表を延期せざるを得なかったみたいです(NY時間の2月26日に発表予定)。さて、大澤君はどのショーが気に入りました?

「ゴシップガール」を意識した「アリス+オリビア」

大澤:「アリス+オリビア(ALICE + OLIVIA)」が個人的ナンバーワンです。世の中が暗い状況の中で、改めてファッションの楽しさを実感することができました。赤いカーペットが敷かれた螺旋階段に、赤や黒のドレス、地面に擦れるほどの超ロングコートで“お嬢さま感”満載。

北坂:人気ドラマ「ゴシップガール」をイメージしたんだってね。もともと2007年に放映開始したドラマですが、10年以上立った今、ちょうどリブート(復活)版を制作しています。撮影現場の写真がSNSやネットで出ていますが、原作よりも人種やジェンダーが多様になっていたり、スタイルも今っぽくなったりしていて話題になっていますよね。「セックス・アンド・ザ・シティ(以下、SATC)」もそうだけど、「ゴシップガール」は当時のファッションに大きな影響を与えたドラマ。ヘッドバンドに、制服とハイブランドをミックスしたスタイルが懐かしいです。

大澤:実際、今季は「SATC」「ゴシップガール」のコスチュームデザイナー、エリック・ダマン(Eric Daman)とコラボしたそうですよ。チェック柄のセットアップ、シルバーのレザーパンツ、半丈ニットなど、ファッショナブルなアイテムも数多く発表しました。「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」の“9ホールブーツ”を着用したモデルがいましたが、コラボなんですかね?(笑)

北坂:そうかも!?タータンチェックのプリーツスカートやツイードジャケットなどいわゆる“プレッピー”スタイルに合わせていたのがかわいかったね。モデルもドラマを意識しているのか、ちょっと性格悪い感じの演技をしていて、面白かったです(笑)。

今話題のイットガールがデビューを果たした「プロエンザ スクーラー」

北坂:私は「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」が印象に残っています。服ももちろんそうだけど、話題のエラ・エムホフ(Ella Emhoff)がランウエイデビューを果たしました。

大澤:カマラ・ハリス(Kamala Harris)米副大統領の継娘で、就任式に「ミュウミュウ(MIU MIU)」のコートを着て話題になっていましたね。

北坂:そうそう!その後モデル事務所のIMG モデルズ(IMG MODELS)と契約し、早速「プロエンザ スクーラー」のデジタルショーに出るなんてスゴイ。新人とは思えない余裕を醸し出していたよね。CFDAのサイトではデザイナーの2人とエラの対談の動画も見れます。

大澤:上質な素材にカッティングやパターンで変化を加えたテーラードやトレンチコートは大人の女性に人気を集めそう。トレンドのヘソ出しトップスの後ろ身頃にスリットを入れるなど、細かいディテールにも抜け目がありませんね。3本ライン入りのレザーコートは男性でも着こなせそうです。

北坂:たしかに、スリットやちょっとした肌見せが絶妙に色っぽくて素敵でしたね。対してボトムスはゆったりしたシルエット、足元もフラットシューズでリラックスした雰囲気も感じ取りました。「着心地の良さ」のトレンドはコロナ禍で一気に進んだ印象ですが、しばらく続きそうですね。

1960年代にタイムスリップした「アナ スイ」

大澤:続いてNYコレの常連、「アナ スイ(ANNA SUI)」。作家兼映画監督のジョー・マソット(Joe Massot)が手掛けた映画「ワンダーウォール」がインスピレーション源でした。前回のノスタルジックなコレクションから、レトロ感漂うBGMやムービーにより、さらに時代を遡った印象を受けました。今回は色鮮やかな柄やモチーフを施したアイテムが盛り沢山。特にアニマル柄のファーを使用したアウターは数多くのモデルが着用していました。

北坂:1960年代のサイケデリック感と、ブランドが大好きなファンタジーを掛け合わせた感じでしょうか。これこそ気分が上がりそうな柄とカラーのミックスですよね。そういえば前季は“Zoom映え”を意識して柄を上半身に集中させたなんて言っていたけれど、今回もトップスにボリュームを持たせたり、袖や襟にアクセントを置いたりしたデザインが印象的でした。今回も意識したのかな?

日常的に取り入れられるグラマーを表現した「3.1 フィリップ リム」

大澤:「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」はルックでコレクションを発表しました。同ブランドは、サステナブルな取り組みを積極的に行うほか、オンライン限定のコレクションを発表するなど、昨今さまざまな活動をして話題を集めています。アイテムは穴あきニットやアウトドアのマウンテンパーカ、カーゴパンツ、プリーツスカートなど。全ルックに一体のモデルを起用した背景には何か意図があるのか、資金面の問題なのかは分からない(笑)。

北坂:コロナ対策なのかもね。毎日着られるワードローブを提案しているブランドですが、今季は「グラマー」をキーワードに、定番アイテムにひねりを加えたそう。スパンコールをあしらったシフォンドレスや大胆なボウタイを加えたシャツなど、やりすぎ感のないグラマラスな雰囲気で確かに日常的に着られそうです。個人的には、ビンテージのテキスタイルから着想した馬のプリントのスカートやシャツが可愛いかったです!

ジェンダーニュートラルラインを初披露した「アディアム」

北坂:「アディアム(ADEAM)」はお得意のフェミニンで上品なスタイルを披露しましたが、動画の途中で急に雰囲気がガラリと変わり、男性モデル!?と思ったら、後半はジェンダーニュートラルライン「アディアム イチ(ADEAM ICHI)」の発表でした。ブランド初のジェンダーニュートラルラインで、さらにサイズインクルーシブなんだとか。同じアイテムを男性と女性モデルがいろいろなコーディネートで着こなしていましたね。ユニセックスラインはシンプルになりがちですが、異なる色や柄をドッキングしたりしてちょっとした遊び心を感じました。ブランドらしい品のあるデザインで、とても好印象!ブランドにとって、新たな客層を取り込めそうです。

大澤:新ラインは、東京のユースカルチャー、ストリートファッションにインスピレーションを得て製作したそうです。またメインラインはデザイナーの前田華子が森美術館で開催されていた「STARS展」を訪れた際に影響を受け、現代アートを着想源にしています。BGMはYunaの「Dance Like Nobody’s Watching」を採用し、笑顔を見せるモデルとのマッチングが最高でした。今回は新デザインとして、同ブランドのモノグラムプリントがブラウス、ドレス、パンツに登場。編集部には一足早く、モノグラムのスカーフが届きました!レトロ感漂うカラーリングに、ファッションの要素をプラスした可愛らしいところが現代のムードに合っていますね。ドレスやスカート、パンツの裾に施されたオリジナルのプリーツが素敵でした。

90年代の米ユースカルチャーにオマージュを捧げた「アール サーティーン」

大澤:ボーイッシュでロック感漂う「アール サーティーン(R13)」は、定番のデニムをはじめ、カジュアルなパーカやスエット、マキシ丈のコート、チェックワイドパンツなどを発表しました。路上喫煙や中指を突き立てる仕草、茶色の紙袋で隠されたドリンクなど、Tシャツにプリントされた“YOUTH”の文字通り、アメリカのユースカルチャーをイメージしているのでしょうか。

北坂:白いサングラスをみた途端、私はカート・コバーン(Kurt Cobain)を連想しました(笑)!グランジロックな雰囲気はブランドの鉄板ですよね。アイテムはベーシックなものが多いけど、スタイリングがいつも秀悦でランウエイを観ながら「可愛い!」と思った記憶があります(笑)。今季はそれがあまり感じ取れなかったのがちょっと残念でした。そろそろこのレビューも超大作になってきたので、最後に気になったブランドを一つどうぞ!

大人の女性を魅了する「ガブリエラ ハースト」

大澤:「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」ですかね。水浸しの古びた倉庫でコレクションを発表した同ブランドは、父から引き継いだというウルグアイの牧場で生産するカシミヤ、ウールなどの高級素材を巧みに使うクリエイションが特徴。今シーズンも自身の強みを活かしたニットやガウン、ポンチョのほか、レザーを使用したバッグやコートなどを提案しました。

北坂:リサイクルした素材を用いることも多く、サステナブルなブランドとしても注目を集めています。カシミヤのアイテムは見るだけでも着心地の良さが伝わりますね。先シーズンのトレンドとして浮上したパッチワークも、ポンチョなどに登場。繊細なレースとレザーやニットの切り替えがとても上品でありながら、フェミニンなタッチを加えていました。後半はシアーな素材や艶やかなサテン生地を用いた、大人の女性に似合いそうなアイテムを連発していましたね。

大澤:デザイナーのガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)は昨年12月に、「クロエ(CHLOE)」の新クリエイティブ・ディレクターに起用されました。今後はどのように両ブランドの差別化を図るのかにも注目です!

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東京デザイナーがさらけだす“ありのまま”【WWDJAPAN BEAUTY付録:「第7回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト」結果発表】

3月25日発売号の「WWDJAPAN」は、2024-25年秋冬シーズンの「楽天ファッション・ウィーク東京(RAKUTEN FASHION WEEK TOKYO以下、東コレ)」特集です。3月11日〜16日の6日間で、全43ブランドが参加しました。今季のハイライトの1つは、今まで以上にウィメンズブランドが、ジェンダーの固定観念を吹っ切ったことでした。

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