ファッション

「ここのがっこう」デザイナーがダウン症や義足など、ざまざまな身体の洋服デザイン 葛藤を記録したドキュメンタリー完成

 バリアフリー・多言語対応に特化したオンライン型劇場の「シアターフォーオール(THEATRE FOR ALL)」は3月5日、「ここのがっこう」が選抜した6人の卒・在校ファッションデザイナーが異なる身体のモデル6人と向き合い作品制作に挑んだ様子を収めたドキュメンタリー「True Colors FASHION ドキュメンタリー映像『対話する衣服』 -6組の“当事者”の葛藤」の配信を開始した。公式HPでは、オリジナル版とバリアフリー日本語字幕版、音声ガイド版を配信中。「True Colors Festival」の公式YouTubeチャンネルではオリジナル版のほか、今月中には英語字幕版も配信する。

 「ここのがっこう」が選んだのは、斎藤幸樹とシー・トウアン(Si Thu Aung)、市川秀樹、タキカワサリ、田畑大地、そして八木華の6人。6人は順番に、ダウン症の水泳選手でトランスジェンダーであることを公表したカイト、アオイヤマダ、義足のダンサーの大前光市、軟骨無形成症の小人バーレスクダンサーのちびもえこ、車椅子に乗りながらモデルやタレント活動に取り組む葦原海、そして、自らも義足ユーザーで義足ファッションショーの衣装デザインなども手がける須川まきこに向き合い、数カ月を費やして作品を完成した。その模様は河合宏樹が監督し、ドキュメンタリー映像にまとめた。クライマックスでは、蓮沼執太が音楽、リリー・シュウ(Lily Shu)が写真と構成を担当した、インクルーシブな表現も盛り込んでいる。

 このうち斎藤幸樹は、2018年に3種目のアジアレコードを更新し、現在は背泳ぎで22年に開かれるダウン症世界水泳での勝利を狙うカイトの衣装製作を担当した。「カラフルな洋服が好き。曇りの日でも、カラフルな洋服なら元気いっぱいに過ごせる」と話すカイトのリクエストは、「ゼルダ姫になりたい」。これまで「人のためではなく、自分のため、自分が今後食べて行くための洋服を作ってきた」斎藤にとって、カイトに贈るドレスは「製作過程も、注ぎ込む気持ちも、今までとは全く異なるものだった」という。対話を通して完成したのは、雲のようなコットンを叩きつけて、パステルカラーで彩ったマキシドレス。大きなボレロと、カラフルなティアラも身につけて臨んだ撮影を振り返り、カイトは「全部楽しかった。斎藤さんは、優しい人。大好き。ハグしたい。ありのままをみんなに見てもらい、カラフルやハッピー、笑顔を届けられたら」という。斎藤は、「人とのコミュニケーションは苦手だが、一緒に楽しめた。ドレスには、カイトさんの内面も、僕の内面も表れている。それを見て、楽しんでもらえたら」と回顧した。

 「ここのがっこう」の山縣良和主宰は、「今回のプロジェクトは、今後ファッションデザインが真剣に向き合わなければならないサブジェクト。個性的でコミュニケーションもさまざまな6人を選び、さまざまな形で取り組んでくれたらと願った。当事者のモデルに向き合ったことで、今まで以上に社会問題や課題が実感できるようになったのではないか?」と話す。

 また3月15日から31日には渋谷ファッションウイークの一環として、 渋谷スクランブルスクエアの12階にあるスペース「シーン12」で、ドキュメンタリー映像を配信しながら、作品やリリーが撮影した写真を展示する。

問い合わせ先
シアターフォーオール
03-6825-1223