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ウィズコロナで進化する幸せ産業 自転車編 移動とフィットネスを兼ねた自転車ライフ

 10万円の給付金が入ったら手に入れようと思ったのがスポーツバイク。自転車なら、満員電車に乗るのも、繁華街の人混みを歩くのも避けられる。ついでにエクササイズできれば一石二鳥くらいの気持ちだった。なんとなく消えてしまいそうな10万円を、継続的に使えるものに残したかった。そこで向こう数カ月の交通費をカバーするぞ、くらいの意気込みで街乗りに適したクロスバイクを購入することを決意。

 ところが!同じようなことを考える人はやはり多かった。7月の時点で、まあまあ手頃なレベルの自転車は品薄状態に。在庫があるものでも配送に時間がかかり、1カ月以上待たなくてはならないという。部品を扱う中国の工場がコロナ禍で閉鎖され、需要が生産に追い付かないことも一因だったようだ。各店舗をあたっても似た状況。自宅から近い自転車専門店の店内に、たまたま気に入ったモデルがあったため即購入し、そのまま乗って帰ることに。かくして私の自転車ライフが始まった。

高校生以来の自転車移動ライフ 街は自転車フレンドリーに

 高校時代の通学以来、ひさびさに自転車移動を日常に取り入れて気づいたのは、街は意外と自転車フレンドリーになっていたということ。新宿や渋谷などのターミナル駅で2時間以内なら無料の駐輪場が完備され、ちょっとした打ち合わせや食事には困らない。自転車専用レーンがある幹線道路も(まだまだ少ないが)増えているようだ。階段以外にスロープのある施設も東京オリンピック開催を機に増えている。そうか、ユニバーサルデザインは車いすやベビーカーだけでなく、自転車ユーザーにもうれしい設備だったのか。今まで電車や地下鉄に頼っていたため、駅という「点」を拠点にしていた移動が、自らが描く「線」でつながり自在になったのが一番の変化。街が「面」で見えてきた。

 自転車フレンドリーなお店が増えているのも実感。ウエルネス志向が強い店舗ではサドルをひょいと引っ掛けられる自転車スタンドを設置していたり、駐輪スペースがあったりする。よく通っている表参道の編集部の裏手にあるのが自転車のパーツメーカー、シマノによる「OVE南青山」。自然派メニューが頂けるカフェであり、セレクトショップ。店内にスタンドがあるので自転車を持ち込め、ゆったりと過ごせる。ちなみにこの店には自転車ライフをより快適にするためのサイクルライフ・コンシェルジュなるデスクがあり、選び方、おすすめのサイクリングコースなどをアドバイスしてくれる。全国各地のサイクリングマップを並べたコーナーも。すっきり汗を流せるシャワーまで完備されている。

 同じく青山エリアにはブリヂストンサイクルによるコンセプトショップ「RATIO&C」もある。店内に最新モデルが並び、こちらはバイクショップの中にカフェがあるという印象。「アンカー(ANCHOR)」というブランドを扱い、競技志向の強いサイクリストも集まる。パーツにこだわったロードバイクだと1台100万円以上することもあり、盗難やダメージの心配なく、店内にマイバイクを持ち込める店はありがたい。愛犬家がペットフレンドリーなカフェに通うような感覚で、サイクリストはひいきの店を見つけ、リピートするのだ。

レジャーとしてのサイクリングも より身近でスタイリッシュに

 茨城県土浦市では街ごと自転車フレンドリーにするという取り組みを進めている。JR土浦駅構内の「プレイアトレ土浦(PLAY ATRE TSUCHIURA)」には飲食店や店舗の並ぶ館内にも自転車で乗り入れられ、最新型モデルがレンタルでき、シャワーのある施設もある。駅を拠点に日本三大サイクリングロードの一つ、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」を満喫できるのだ。

 10月には「プレイアトレ土浦」内に「星野リゾート BEB5土浦」がグランドオープン。「居酒屋以上 旅未満 ルーズに過ごすホテル」をコンセプトに、飲食の館内持ち込みOK、ラウンジを24時間開放、29歳以下なら、よりリーズナブルな価格設定という、若い層をターゲットにした軽井沢に続く「BEB」ブランドだが、自転車に特化した宿でもある。90室ある部屋の中で15室は自転車と泊まれるサイクルルームで、壁面にラックがあり、マイバイクを眺めながら過ごせる。メンテナンスルームを自由に使え、ラウンジや室内には自転車に関する本やディスプレーが。マイバイクと共に添い寝できるというユニークなプランも話題だ。夜明け前に宿を出て、珈琲と茨城の名産、干し芋を味わいながら、霞ケ浦の絶景朝焼けを眺めるアクティビティーもある。

 都内の大自然、奥多摩でもとびっきりのサイクリングを楽しめる。JR奥多摩駅からすぐのレンタサイクル店「トレックリング(TREKKLING)」では借りた自転車を青梅駅や河辺駅で返すことも可能なので、坂道を20キロほど下り続けるという爽快なライドができるのだ。

 日本酒の味比べが楽しめる澤乃井ガーデンで乗り捨てることも可能。またサイクリングしながら、英語を学べるツアーも開催している。これはガイドも参加者もインカムをつけて会話するため、飛沫を気にする必要がない。レジャーとしてのサイクリングもハードルが低くなったと感じる。

 先日、サイクリストの聖地と言われている広島県尾道を訪れた。愛媛県今治市との間を結ぶしまなみ海道があるため、気軽に自転車をレンタルできるスポットや、空気入れの貸し出し、給水、トイレの利用ができる休憩所「サイクルオアシス」が各所にある。トラブル時のレスキュー対応なども整っていた。

 密が避けられれば、交通費をセーブできれば、ついでにカロリーも消費できればと始めた自転車ライフだったが、続けなければ意味がない。都内でもこれくらい手厚いサポートが可能になれば、地球にも、お財布にも優しい自転車移動を選ぶ層がもっともっと増えるかもしれない。目指せ、サステナブルで自転車フレンドリーな街!

■OVE南青山
住所:東京都港区南青山3-4-8
TEL:03-5785-0403
10:00~19:00 月定休(月曜が祝日の場合は火曜)

■RATIO&C
住所:東京都渋谷区神宮前3-1-26
TEL:03-6438-1971
平日:カフェ9:00~19:00 ショップ10:00~19:00
土・日・祝:カフェ・ショップ10:00~19:00
定休日:水曜

■TREKKLING
住所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川197
TEL:0428-74-9091
9:00~17:00 平日は不定休

■星野リゾート BEB5土浦
住所:茨城県土浦市有明町1-30
TEL:0570-073-022

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

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