ファッション

メンズウエア界の重鎮・鴨志田康人が考える「これからのスーツに必要なこと」

 三陽商会の「ポール・スチュアート(PAUL STUART)」は、ブランドの世界観を色濃く反映させた「コレクションライン」の2021年春夏コレクションを発表した。

 同ブランドの日本企画のメンズラインは19年秋冬から、ユナイテッドアローズの創業者の1人で、長くメンズウエアの企画やバイイングに携わってきた鴨志田康人氏がディレクターを務めている。20年春夏にスタートした「コレクションライン」は主に直営店で展開。スーツスタイルを柱としながら、オーセンティックなデザインの通常ラインと比べて多彩なカラーリングやデザイン性を特徴とするなど、鴨志田氏のエッセンスが凝縮されたコレクションとなっている。

 今シーズンは“オールド イズ ニュー”がテーマ。ブランドのルーツであるニューヨークの1970〜80年代にオマージュを捧げながら、随所に新たな要素を散りばめて現代的に再構築した。約40型のコレクションの「顔」として展示会場のマネキンに着せたのは、ブラウンのタキシード(22万円)だ。着ていく場所や着こなしに頭を悩ませてしまうような1着だが、ここにはアフターコロナのメンズスーツのあり方についての鴨志田氏の考えが投影されている。「今後はスーツを着用する人の絶対数は減っていく一方で、19世紀に『ラウンジスーツ』と呼ばれたような、スーツ本来の社交の装いとしての機能は強まっていくだろう。(スーツは)無理強いされる物ではなくなり、各人が自分の服装に対する主義や『こう見られたい』ということを示す手段になっていくはずだ」。

 そのような考えのもと、タキシードを筆頭に、幅広いラペルが目を引くダブルジャケットのセットアップ(19万円)など着る人の個性を主張するスーツを並べた一方、ネイビーやブラックのシングルブレストのような没個性的な商品は排除した。合わせるシャツも「大人にふさわしい素材や色味をゼロから企画した」という大振りのチェック柄シャツ(2万2000円)やキャンプカラーシャツ、バンドカラーシャツなど多彩なラインアップだ。1920〜30年代のビンテージ柄をアレンジしたネクタイやスカーフなども、コーディネートに新鮮な印象をプラスする。

 これまで同ブランドは百貨店販路を中心としてきたが、今後は直営店やポップアップストアを中心に「コレクションライン」をフックに新規客の獲得にも力を入れる。今年2月には表参道の路面店を閉店したが、11月には「青山ベルコモンズ」跡地の複合商業ビル「ジ アーガイル アオヤマ(THE ARGYLE AOYAMA)」に新たな旗艦店を置き、「コレクションライン」をフルラインアップでそろえてブランドの世界観を演出。9月11日から11月3日にかけては、渋谷スクランブルスクエアで4階でポップアップストアを開催している。「もはや百貨店で他店と同じようなスーツを並べているだけでは戦えない時代になった。『ポール・スチュアート』としてのアティテュード(姿勢)を服に込め、お客さまに示していくことが一層大事になる」(鴨志田氏)。

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