ファッション

デジタル・コレクション賛否両論 海外バイヤー&セールス5人の本音

 ウィメンズでは初となるリアルとデジタルを融合したファッション・ウイークが開催中だが、何ごとにもいい面と悪い面がある。6月に開催されたメンズのデジタル・ファッション・ウイークを海外のファッション業界人はどう見たのだろうか。通常であればバイイングのために現地に渡航し、サンプルを見たり触れたりするバイヤーにとって、実物を見ることのできないデジタルではどう機能したのか。各国のバイヤー4人とショールームのマネジャー1人に、デジタル・コレクションを体験した印象を聞いた。

フランス「プランタン」メンズ・ファッションディレクター兼オンラインビジネス開発ディレクター
「実物に触れられず物足りない」

Q.デジタルでのショーや買い付けの感想は?

製品に触れられないという物足りなさはあるものの、実用的なプロセスであったと思う。

Q.新型コロナは買い付けにどう影響しそう?

セレクトの傾向はクラシックなシェイプに加え、旅行の楽しさを思い出させるために旅を連想させる柄物や、長年大切に着られるタイムレスなピースを意識している。顧客の消費行動にこれまで以上に注意を払い、私たち自身を適応させていく必要がある。

イギリス「ブラウンズ」メンズウエアバイヤー
「新しいかたちでブランドと関われる」

Q.デジタルでのショーや買い付けはどうだった?

想像以上に難しかった。モデルに着せた状態でサンプルを見られないし、触れたり、感じたりできないことはバイヤーにとって大きなマイナスではある。でも、新しいかたちでブランドと関われるのは素晴らしいこと。オンラインは自分のタイミングで見られるのが便利なので個人的には楽しめている。フィジカルの体験とは異なるものだが、オンライン・プラットフォームであればいつでも再訪して繰り返し確認したりメモを取ったりできるので、ブランドの世界観に深く没入できる。

Q.デジタルに対応したベストブランドは?

「アルワリア(AHLUWALIA)」が本の出版に合わせて行ったVR展示がよかった。デザイナーの作品の多くは自身のルーツであるナイジェリアの文化と遺産に紐づいたもので、アイデンティティーの探究に熱心だ。そんなデザイナーの魂と心が輝いているようで、最高の出来だった。「ロエベ(LOEWE)」の手法も気に入っている。物理的なオブジェクトを使い、ブランドと人々をデジタルでつなぎながら体験を生み出すことに成功していた。

香港「ジョイス」バイヤー
「強気なバイイングを心掛けた」

Q.デジタルでのショーや買い付けの感想は?

良かったのは、渡航のための時間と費用を削減できたこと。バイイングの期間でさえ、チームや友人、家族と過ごしながら仕事ができた。悪かった点は、コレクションや商品を解釈するのに、いつも以上に時間を要したこと。アポイント前に各ブランドから送られてきた生地サンプルやルックブックを用意してのぞんだか、触れることが許されず、世界観を完全に感じ取ることは難しかった。

Q.デジタルに対応したベストブランドは?

「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」がよかった。ルックブックやインスピレーションに加え、アンダーソンからのメッセージが書かれたキットに世界観が表現されていた。また「アンダーカバー(UNDERCOVER)」も3Dでルックを見ることができてわかりやすかった。ズームして細部を確認できるといった配慮が明確で、助かった。

Q.今後もデジタル・コレクションは継続してほしい?

ショーは将来的にフィジカルとデジタルが融合していくだろう。しかし今は、フィジカルのショーがとても恋しく感じる。ランウエイで表現されるコレクションのムードや舞台、世界観を感じながら、生地を間近で見ることに意味があると思うから。

Q.今シーズンの買い付けにコロナの影響はどう出てきそう?

実際に生地に触れることができない分、セレクトにはより注意深くならなければならない。しかし、顧客のことを考えて強気なバイイングを心掛けており、挑戦的なピースも意識的にセレクトしている。

フランス「トム・グレイハウンド・パリ」バイヤー
「リアルに置き換えることはできない」

Q.デジタルでのショーや買い付けの感想は?

デジタルショールームはリアルを補足するために役立つが、置き換えることはできない。資料に目を通すだけで時間がかかるため、リアルよりも非効率だと感じている。実際にどんな商品が店に届くのかという不安もある。やはり写真は写真でしかなく、触れられない、着られないデメリットは大きい。セレクトした商品もほぼ記憶に残っておらず、驚きに満ちたシーズンになりそう。

Q.デジタルに対応したベストブランドは?

最もよかったのは「コモン スウェーデン(CMMN SWDN)」だ。ビデオやルックブックの見せ方がとても新しく、素晴らしいデジタル体験だった。数シーズン取り扱っているので世界観やメッセージも受け取りやすく、セレクトに困らなかった。ほかには「ジェイ ダブリュー アンダーソン」は専用プラットフォームに加え、ジョア(JOOR)で確認もできて便利だった。ジョアのアカウントを持っているとバイヤーは助かるため、ブランドは活用した方がいいと思う。逆に、手に触れないと理解できないような詰め込み過ぎなブランドは難しかった。

Q.今後もデジタル・コレクションは継続してほしい?

リアルなショーがもつ魔法の力を信じているから、デジタルの利点は見出せない。

ショールーム「トゥモロー」シニア・アジア地域エリアマネジャー
「デジタル・コレクションは絶対に継続して」

Q.デジタルでのショーや買い付けにどう対応した?

デジタルでの買い付けに対応するため、画像と動画を含む360度の多機能ショールームのプラットフォームを構築した。ビデオ会議でバイヤーを案内しながら、デジタルショールームでスムーズにサンプルを紹介できるように試みている。

Q.デジタル・コレクションを体験して感じたメリットとデメリットは?

次のアポイントメントを気にしてスケジュールに追われることがないため、急ぐ必要がないというのは利点だ。バイヤーは都合のいい時に繰り返しコレクションを見ることができ、柔軟性が高いと感じた。アジアとアメリカのバイヤーはヨーロッパ時間に合わせる必要もない。ただし環境によって画像の見え方が変わったり、黒い服はディテールを見せるのが難しかったりするなど課題はある。

Q.デジタル・コレクションを経験して気付いたことは?

リアルとデジタルが今後はより融合し共存していくのだろうと感じた。ラグジュアリーな体験を提供するメゾンはリアルを、新進ブランドや若年層をターゲットにするブランドはデジタルを活用してくのだろう。だからデジタル・コレクションは絶対に継続してほしい。デジタルのショールームは時間と予算に制限のある小規模なチームにとって非常に機能する。ファッション・ウイークの多忙なスケジュールを考慮すると、対面のアポイントメントよりも快適にオーダーを行えるのではないか。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

最新号紹介

WWD JAPAN

デジタルコマース特集2020 コロナで変わったもの/残すべきもの

「WWDジャパン」10月26日号は、デジタルコマース特集です。コロナ禍でデジタルシフトが加速し、多くの企業やブランドがさまざまなデジタル施策に注力していますが、帰るべきものと残すべきものの選別など、課題が多いのが現状です。今年はそんな各社の課題解決の糸口を探りました。巻頭では、デジタルストアをオープンしたことで話題の「シロ(SHIRO)」の福永敬弘=専務取締役やメディアECの先駆け的存在「北欧、暮…

詳細/購入はこちら