ファッション

今年で創刊25周年 雑誌「VERY」がコロナ禍で開拓する新たなビジネスとは?

 光文社の「ヴェリィ(VERY)」は今年、創刊25周年を迎えた。現在は「ファッションの力でママたちを応援する」ことと「ジェンダーギャップを埋める」ことの2つを軸に、コンテンツを生み出している。同誌の今尾朝子編集長は「ターゲットである30〜40代のママたちの中では、新しい夫婦像が生まれている一方で、未だに変わらない価値観に苦しんでいる人もいるという状況。仕事の面においても、働くママがここ数年増えており、読者の中では7~8割が有職者だが、復職や共働きなどの面で、いろいろな葛藤を感じている人たちも多い。それは取材を重ねていて感じている」とここ数年の読者像の変遷を説明する。(この記事はWWDジャパン7月27日号の雑誌・メディア特集を加筆したものです)

 読者像の変化に合わせて企画も徐々に変わってきている。「“頑張らない”や“簡単”といったキーワードから、“ロジカル”“効率的”に変わってきていたが、それにも限界が来ているような印象を受ける。やはり夫や会社などの考え方が変わらないと難しい」。そういった考えをもとに実施した企画の1つが、同誌2019年1月号の「『きちんと家のことをやるなら働いてもいいよ』と将来息子がパートナーに言わないために今からできること」だ。掲載ボリュームとしては大きくはない企画だったが、雑誌にしては珍しい、長めのタイトルとママたちの実態を捉えた内容で、大きな話題となった。

 そんな「ヴェリィ」は現在、チャネルの多様化を進めている。3月にはラグジュアリー・メディア「ヴェリィ ネイヴィ(VERY NAVY)」をスタート。表紙には2019年12月号で「ヴェリィ」のカバーモデルを卒業した滝沢眞規子を起用し、本誌の4〜6月号と10〜12月号の別冊として出すほか、インスタグラムアカウントや「ヴェリィ」のウェブサイト内にカテゴリーを新設した。同メディアスタートの背景について「滝沢さんは専属モデルとして光文社に所属してくれていたので、『ヴェリィ』卒業前から、彼女の次を考える責任を感じていた。彼女は私生活にラグジュアリーをうまく取り込み、楽しんでいる。そして光文社には、ラグジュアリー誌がなかった。さらには『ヴェリィ』の読者の中にも、ラグジュアリーに興味を持っている人がいたが、『ヴェリィ』としてはマスを狙っていたので、なかなかラグジュアリーを取り扱えなかった。そこで滝沢さんを起用して、『ネイヴィ』を始めてみようと考え、まずは広告を見込める4〜6月と10〜12月の特別付録として出した」と語る。今のところ「ネイヴィ」は好調で、4〜6月の3号合計で33社が協賛に付き、集広目標の115%を達成。付録として出したことにより「ヴェリィ」本誌の実売も好調だという。

コロナ禍のデジタル施策の成果は?

 デジタル施策に関してはどうなのか。「コロナ禍で、本誌は6月・7月を合併号として、25年の歴史の中で初めて発売を見送ったが、その間『おうちVERY応援月間』として、ウェブやSNSのコンテンツに編集部一丸となって取り組んだ。それも要因にあり4月19日〜5月15日の約1ヶ月間で、PV数は43%増、新規ユーザーは67%増と良い結果が出ている。また、自粛期間中のママたちの“3食疲れ(3食食事を作ることへの疲れ)”にも対応できればと思い、更新が止まっていたインスタアカウントの『クッキングヴェリィ』も再スタートしたところ、あっという間に1.6万から3万フォロワーに増えた」と手応えを感じているようだ。

 また、同誌はママのための学びの時間を提供するコンテンツ「ヴェリィ アカデミー」も6月6日にスタート。第一弾は車のサブスクリプションサービスである「キント」の協力のもと、“話題のサブスク「キント」から考える、子育て世代の『変化に強くなる』3つのヒント”をテーマに、ツイッター上でライブ配信を実施。当日は10万人以上が視聴し、総再生回数は14万回を超えた。「ママたちにはインプットをする時間が足りない。その中でどうインプットをするのかを考えた時、デジタル上で空いている時間に学ぶイベントを立ち上げたらいいのではないかと考えていた。同じタイミングで『キント』さんとはリアルイベントを行う、という話をしていて。コロナでリアルイベントはできなくなってしまったけど、オンラインでならできるだろう、というところで私たちのアイデアと合致し、スポンサーが付いたという形で大きな規模でイベントが実施できた」と経緯を話す。今後は料理に関する「クッキングアカデミー」なども検討しているという。

 チャネルを多様化している「ヴェリィ」だが、これまでのコンテンツ制作で培ってきた、30〜40代のママたちへのインサイトを活用したビジネスの多角化も模索中だ。「クライアントの広告予算の中でも、雑誌に振り分けるようなことはやはり減ってきている。『ヴェリィ』がターゲットとしている世代に響くようなキャッチコピーを考えたり、ニーズに合った商品開発をしたり、PR施策をしたりと、今後はある種のコンサルティング会社のような役回りもこなしていくことになると思うし、既にやっていることもある。『ヴェリィ』は25年間、若いママたちが考えていること、感じていること、欲していることにせいいっぱいの答えを返せるよう、考え続けてきた。その強みを生かしていきたい」。

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