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リアルさが共感を呼ぶラッパーdodo  “ノーマル”という名の新境地へ

 既存のラッパーという概念にとらわれず、あくまで自身のリアルさにこだわるdodo。そのスタイルが共感を呼び、多くのファンから支持を得ている。昨年ユーチューブにアップした「im(アイム)」のMVの再生回数は400万以上。「トーガ(TOGA)」やラッパーのKOHH(コー)を中心とした「ドッグス(Dogs)」とコラボTシャツを発売し、アイテムは即完売。雑誌「Ollie」の表紙にも起用されるなど、最も注目されるアーティストだ。7月17日には2ndアルバム「normal(ノーマル)」をリリース。ヒップホップという枠を超える新境地となった今作について話を聞いた。

WWD:これまで職業訓練校に通いながら音楽活動をしてきて、4月に就職する予定だった。その就職を取りやめてアーティスト活動に専念することを選んだ理由は?

dodo:本当にありがたいことに音楽である程度稼げるようになって、就職して働きながら音楽を続けるよりは専念した方がいいという理由からです。

WWD:音楽だけで生活できるようになって、「ようやく」という思いはある?

dodo:正直、まだまだで、ようやくという気持ちは全然ないです。日本語ラップシーンの人気もいつまで続くか分からない。だから「自分はどう生き残っていくか」を考えると不安もあるし、楽しみでもあります。

WWD:今回のアルバム「normal」はいつごろから制作を始めた?

dodo:もともと3月の終わりに自主イベント「ひんしの会」を開催するつもりで、それに向けて2月にアルバムを出す予定でした。それが新型コロナの影響で8月に延期になり、それで7月にリリースしました。制作に関しては去年の11月くらいからスタートしてたんですが、リリースが延期になったこともあって、途中でさぼってしまって(笑)。締め切り間近の5〜6月で制作したという感じです。ただ、まだコロナが心配なので8月のイベントも開催するか悩んでいます。(※その後7月20日にイベントの中止が発表された)。

WWD:アルバムタイトルの「normal」にはどういったメッセージが込められている?

dodo:僕がラッパーとして活動するきっかけになった「高校生ラップ選手権」で、付けられたキャッチフレーズが“普通すぎるラッパー”だったんです。正直、あの場所では僕の方が異端な感じで全然普通ではなかったんですけど(笑)。その当時の気持ちを持って今もやっているという意味での“ノーマル”だし、それ以上にヒップホップリスナーだけでなく、J-POPリスナーにも聴いてもらいたいという思いも込めています。「im」という曲がヒットしたのも、ヒップホップリスナー以外にも届いたからこそだと思っています。

ヒップホップって評論の対象にされがちで、そこで評価が高ければ人気が出ると思っていました。だから前作はヒップホップのスキルにこだわって制作したんですが、今回はそういった評論の対象から抜け出したくて、多くのファンに求められているものを作ろうと思って制作しました。古くからのファンの人はそこじゃないって思うかもしれませんが。

WWD:dodoさんはよくファンを大切にすると語っている。

dodo:昔は全く意識していなかったんですが、ここ3年くらいはすごく意識するようになりました。やっぱり支えてくれるのはファンなので、その人たちのためにやっていきたいという気持ちは強いです。

WWD:曲作りで意識したことは?

dodo:音楽って何かしら役割を求めて聴くと思うのですが、今回のアルバムは全体的に“癒やし”になればいいなと思って作りました。

WWD:基本的には作詞・作曲、編曲、録音も全て一人で行っている。今回も全て自宅で行った?

dodo:そうですね。実家の自分の部屋で制作しました。いつもはトラックから作って、そこに言葉をのっけていくんですが、歌詞を考えるのが好きじゃないんです。歌詞はリアルさにこだわっていて、基本的には実体験がベースになっています。ただ言葉って責任が伴うし、場合によっては非難されることもある。逆に幸せにできたりもするので、いつも悩みます。だから時間もかかってしまうし、なかなかやる気にならないんです(笑)。

WWD:以前にリリースした「kill more it」 のアンサーソング「kill late it」や「nambu」など決意が感じられる曲もあった。特に「nambu」では「この町を出ていく」というリリックがあったが実際に川崎を出ることを考えている?

dodo:そうですね。実際、本気で移住は考えていて、今は三重県の伊勢市が気になっています。できれば毎日、伊勢神宮にお参りできる場所がいいなと考えています。あそこまで歴史があって神聖な場所だと、何かいいヒントになるんじゃないかなと思っています(笑)。

“ヒップホップ”とはいかにリアルであるか

WWD:前作「importance」から約1年5カ月。振り返ってみてどうだった?

dodo:ヒップホップシーンで会いたかったKOHHさんやOZROSAURUS(オジロザウルス)のMACCHOさんに会えたり、「im」のヒットがあったり、ワンマンイベントを開催したり、やりたかったことは全てできました。コロナの前まではすごく充実していました。

WWD:ユーチューブにアップした「im」のMVは400万回以上再生されるなど、すごくヒットした。

dodo:あのクオリティーのMVなのにありがたいことです(笑)。「im」はTikTokでも話題になって、そこからMVを見てくれる人が増えました。MVはいつも同級生と2人で撮影していて、基本は「GoPro」で一発撮り。ロケ地も限られていて、駐車場か公園かホテルかみたいな感じで(笑)。もともとパソコンのスペックが低かったので、編集できないっていうところからこのスタイルになりました。

WWD:他のアーティストが凝ったMVを作っている中で、このシンプルさがいい意味で個性になっている。昨年のアルバム発売以降は、7月から3〜4週間に1曲という早いペースでリリースして、そのたびにMVも制作していた。

dodo:そのときはまだ就職しようと思っていたので、今後は音楽活動に専念できなくなることを考えて、まずはユーチューブの登録者数を増やさないといけないなと。そのためには動画の本数が必要だったので、曲のリリースとMVをセットにしました。最初は100万回再生超えだったり、すごく調子よかったんですが、やっぱりペースが早すぎて(笑)。途中で視聴回数も減ってしまいましたね。ユーチューブは広告的な位置づけで、映像があるからこそ曲も聴いてもらえると思っています。登録者数は5万1000人ほどで、こまだまだ増やしたい。

WWD:MVといえば、「レッドブル」が企画したRASENではDaichi Yamamotoや釈迦坊主、Tohjiとの競演も話題だった。あのメンバーとは普段から会ったりする?

dodo:RASENで会ったきりですね。皆さんそれぞれキャラが立っていて、奇跡のコラボだったと思います。あのメンバーの中に僕も呼んでもらえてうれしかったです。

WWD:dodoさんはいわゆるラッパーという見た目ではないが、それは何かこだわりがある?

dodo:ラップを始めたころから“ヒップホップとは何か”っていうのをずっと考えていますが、けっこう早い段階からその答えはあって、それは“いかにリアルか”ということ。結局、それを貫き通すには、僕自身もカッコつけずにリアルなありのままの自分でいようと思って、今のスタイルになっています。

WWD:海外のラッパーに影響を受けて音楽を始めたが、服装などは影響を受けなかった?

dodo:洋服には興味がなくて、本当にファッションって全然分からないんです。だからそこには全く憧れなかったんです。少しでもファッションに興味があれば、見た目から入ったかもしれません。

WWD:そうは言っても、「トーガ」や「ドッグス」とコラボしてTシャツを販売するなど、ファッション業界からの注目度も高まっている。今日は「ラコステ(LACOSTE)」を着ているが?

dodo:Tシャツ、ズボン、靴までオール「ラコステ」です。「ラコステ」は以前、ラッパーのPUNPEE(パンピー)さんが着ていたのを見てカッコいいなと思っていて(笑)。ファッションに関しては今後は自分でもデザインしてみたいです。

「恋愛の曲はうまく作れるんです(笑)」

WWD:dodoさんは音楽大学に通っていたが、そこで作曲の基礎を学んだ?

dodo:音楽音響デザインコースで、録音、作品作りなどを勉強していました。「高校生ラップ選手権」に出ていたので、4年間音楽にかけてもいいのかなと思って。大学2年生のときからトラックは作り始めました。大学の相馬先生がJ-POPに詳しくて、その人に楽曲の作り方の基礎を学んだので、今の感じになったんだと思います。そう考えると先生の授業がなかったら今の形にはなっていなかったかもしれません。

WWD:ヒップホップ以外も聴く?

dodo:聴かないですね。でもMVを一緒に作ってくれるカメラマンは、J-POPしか聴かなくて、彼が聴いて「いい」と言ってくれたら一般の人にも受けますね。まさに“市場の耳”を持っていて、毎回MVの撮影をするときに彼の反応を見るのは楽しみです。

WWD:恋愛の曲も多い。あれも実体験がベース?

dodo:そうですね。リアルな気持ちを表現しています。自分で言うのもなんですが、恋愛の曲はうまく作れるなと思いますね(笑)。

WWD:去年は「フジロック」にも出演したが?

dodo:それまで一回もフェスに行ったことがなくて、初めてのフェスだったので緊張しました。他のアーティストを見る余裕も全然なくて、KOHHさんだけ見ました。ライブは深夜3時からで次の日も学校があって、終わってからすぐ帰ったので、めっちゃ疲れました(笑)。

WWD:コロナが落ち着いたらライブもやっていく?

dodo:そうですね。実はライブはそんなに好きじゃないんです(笑)。基本的に作品をリリースした時点で自分の中で一つ終わったという達成感があるんです。でも、ライブでお客さんと交流することで生まれる絆もあるので。責任を持ってやっていかないといけないですね。そのためにも早くコロナは収束してほしいです。