紳士服専門店のコナカは、4期連続で最終赤字に沈むサマンサタバサジャパンリミテッド(以下、サマンサタバサ)の再建に本腰を入れる。7月1日付で持分法適用関連会社であるサマンサタバサと、服飾雑貨を販売する連結子会社のフィットハウス(岐阜県可児市、吉田直人社長)を合併する。これにより、フィットハウスは解散し、コナカはサマンサタバサを連結子会社にする。サマンサタバサの大株主・持ち株比率は、コナカが59.09%となり、サマンサタバサ創業者の寺田和正氏が16.78%となる。(この記事はWWDジャパン2020年5月11日号からの抜粋です)
コナカは、サマンサタバサを連結子会社化することで連携を強化して国内事業の立て直しを急ぐ。また、東海地区で海外ブランドの服飾雑貨を販売するフィットハウスは今後サマンサタバサの一事業部となり、SPA(製造小売り)として自社商品の開発・販売へとビジネスモデルを転換する。両社の売上高はサマンサタバサが235億円(2020年2月期)、フィットハウスが148億円で、単純合算すると383億円規模になる。
コナカの湖中謙介社長はウィメンズ市場進出に野心を燃やし、19年4月に寺田氏が保有していたサマンサタバサの62.6%の株式の半分である31.3%を取得。同年9月に湖中社長個人が所有する株式をコナカとして調達し、サマンサタバサを持分法適用関連会社化した。その後、12月にはサマンサタバサの社長に、コナカの専務取締役COO(最高執行責任者)である門田剛氏が就任し、コナカから門田氏、湖中社長を含めた4人が取締役に就いた。
一方で、海外事業に注力するため、サマンサタバサの社長を退いた創業者の寺田氏が立ち上がった。同氏は19年4月にいったん経営の最前線から身を引いていたものの、ファウンダーとして同社にとどまっていた。今年3月には、個人で全額出資して新会社サマンサグローバルブランディングアンドリサーチインスティチュートを設立。サマンサタバサから海外事業とスイーツ事業を譲受する協議を開始した。
「日本発世界ブランド」の
夢を本気で実現
寺田氏にとって海外事業の拡大は長年の目標だった。11年には香港を拠点にして海外ビジネスに注力する計画が東日本大震災の影響で白紙となったが、コナカによるバックアップを得た今、そのロマンを実現するために再び動き出した。「この1年間、ずっと描いてきた『日本発世界ブランド』という夢を本気で実現したいと考えてきた。サマンサはこれまでも海外からの出店オファーもあったが、積極的な投資ができず抑えてきた。今後は国内事業をコナカで盤石にし、僕はグローバル展開にお金とエネルギーを割いていく」と寺田氏は語る。サマンサの海外事業は現在、アメリカ、中国、韓国、シンガポール、香港、台湾の6の国と地域で運営する37店舗。25年には海外に200店舗体制にし、売上高は200億円を目指す。新型コロナウイルス収束後には中国を強化し、将来的にはフランス・パリへの出店なども視野に入れているという。
先行きが不透明な時勢でも、寺田氏は強気だ。「新型コロナは人々の価値観を変えているが、自分たちに何ができるのか試されているように感じる。ファッションは不要不急であることには違いないが、『サマンサタバサ』のようなワクワク、ドキドキといった普遍的な感情を人々に呼び起こすブランドは必要不可欠だ。誰にでも誕生日は必ず来るし、大切な両親、友達、彼女、彼氏へプレゼントを贈る習慣は絶対になくならない。コロナに打ち勝ったときにその価値は倍増するはず。僕らのアイデンティティーは“人々に喜んでもらう”ことに情熱を注ぐことだ」と説明する。また寺田氏はサマンサタバサと契約して引き続きPR、クリエイティブ、商品開発などにも携わるという。かつてのセレブリティーを巻き込んでいたような華やかなプロモーション、サプライズの仕掛けなども復活させていく。
【エディターズ・チェック】
サマンサタバサは寺田和正・創業者による新会社設立で海外事業に攻勢をかけるが、最優先事項は国内事業の再建になるだろう。2020年2月期業績は純損益が23億円の赤字(前期は13億円の赤字)。減収に加えて不採算事業の再編などに伴う特別損失8億1700万円を計上し赤字が拡大した。コナカによる立て直しが始まるが新型コロナの影響で結果が出にくい期間は続きそうだ。今後また商品やPRに携わっていく寺田氏がどのような企画を仕掛けるのかにも注目したい。