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有力セレクトに聞く“巣ごもり”売れ筋ブランド 「エストネ」「バーニーズ」編

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の影響で、セレクトショップの売れ筋が変化している。各社では2月の春夏立ち上がりの時期に、外出自粛ムードによって来店者数が半減。4月7日以降、休業要請を受けた7都道府県の店舗ではオンラインショップのみの営業に移行している。従来EC販売のなかったブランドの拡充やクーポン配布キャンペーン、SNSでの商品紹介の強化など、試行錯誤が続いている。

 このような状況において売れ行きが好調なのは、窮屈な“巣ごもり”時間を豊かにしてくれる美容アイテムや、近隣の移動に便利なファッション小物だ。「エストネーション(ESTNATION)」と「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」が、売れ筋やオンラインでの施策について現状を明かした。

厳しい商況下でも“香り商材”は絶好調

 「エストネーション」は秋冬物のセールをいち早く切り上げて、2月7日から春夏アイテムを早期投入。東京・六本木店では、「ザ ロウ(THE ROW)」の売り場を拡大し、クリーンなジャケットやワンピースが順調に動いた。

 ジュエリーでは、ギフト需要の高い2~3月だったこともあり「タサキ(TASAKI)」「ミズキ(MIZUKI)」「ヒロタカ(HIROTAKA)」「ジジ(GIGI)」などが好調。例年よりも地金のみのシンプルなデザインやパール、一粒ダイヤモンドなどを取り入れた普遍的なデザインが好まれたという。

 しかし、3月2日に小学校や特別支援学校などの全国一斉休校が実施された前後から、特に駅ターミナルの店舗で、子どもを持つ女性客の日中の来店が鈍化したが、3月中旬までは、ピンクやグリーンなどの春カラーのニットやシャツにボトムスを合わせた鮮度のあるコーディネート、春アウターやオフィス用のセットアップなど、「実需のアイテムが好調に推移したことで持ちこたえた」という。

 一方、厳しい商況下でも、アロマやフレグランスなどの“香り商材”の売り上げは前年同月比を大幅に上回っている。自宅で過ごす人が増えたことにより「バオバブ(BAOBAB)」のディフューザー(1万5000円前後)や、「バイレード(BYREDO)」のフレグランス(2万~3万円)など、インテリアに映える高単価の雑貨が好調に推移。さらに3月中旬以降は、「ロングルアージュ(LONGLEAGE)」のネイルケア(3000円~1万円)や、「マイセルーチェ(MYCELLUCE)」の美容液(3万円)など、化粧品やヘアケアなども売れているという。

 外出自粛要請後のオンラインショップでも、「ザ ランドレス(THE LAUNDRESS)」のルームスプレーや1Lのビッグボトル洗剤、「セレクトアルファ(SELECT α)」のオーラルケアなどの生活雑貨ですでに在庫切れの商品もあり、生活環境への意識の高まりが感じられる。

 またEC化率1割という同業態では、オンラインストアへの送客のため、クーポンや店頭スタッフのスタイリング紹介などのプロモーションを強化。一方、実店舗の売り上げの割合を大きく占める顧客には、「電話やメールなどの原始的なツールなどの基本的ツールによる商品紹介も積極的に行っている」という。

近隣散歩に便利な“ファッション雑貨”が人気

 「バーニーズ ニューヨーク」のオンラインストアでは、首から下げることができるオリジナルのIDケース(7000円)や、凝ったディテールが特徴の「ヨシノリ コタケ デザイン(YOSHINORI KOTAKE DESIGN)」のキャップ(9000~1万2000円)が好調だ。矢野考太郎コミュニケーションデザイン マネジャーは、4月の新生活やギフトのニーズと併せて「近所への散歩やランニング用に購入されているお客さまも多いのでは。実際に家の近所でも、そのような雰囲気の方を見かけることが増えている」と推測する。

 また初の試みとして4月14日に、店舗スタッフがカメラに向かって商品をおすすめする“接客動画”の配信を自社ブログやツイッター、インスタグラムでスタートさせた。「顧客とのつながりが自社の財産。リアル店舗の販売をフォローするような、デジタル強化の施策を早急に実施したい」と続ける。

 なお現在同社では、オンラインストアを除くスタッフは自宅待機中。自己研さんとして、各種検定試験の勉強や課題図書の読了などを促しているという。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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