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スイス発高級インナーウエア「ハンロ」CEOが語る「高級下着のグローバル化」

 スイス発「ハンロ(HANRO)」は、上質な天然素材を使ったインナーウエアとラウンジウエアの高級ブランドとして知られている。1884年に創業した老舗ブランドを世界50ヵ国で販売するグローバルブランドへと成長させたのは、2006年9月から同社を率いるステファン・ホーマン(Stephan Hohmann)最高経営責任者(CEO)だ。就任以降19年までの13年間で同ブランドの売り上げは2倍になり、現在も年々売上高を伸ばしている。その成長の背景について、オーストリア・フォアアールベルク州のハンロ本社で話を聞いた。

 「ハンロ」は、1884年にスイス・バーゼルの南約17kmのリースタルで創業以来、上質な天然素材を用いたタイムレスなインナーウエアを提案してきた。1991年にオーストリアのフーバー ホールディングス(HUBER HOLDINGS)の傘下になり、現在は本社をスイスとの国境に近いオーストリアのフォアアールベルク州ゲツィスに構えている。国別の売上高は米国が最も多く全体の約30%、次にスイス、ドイツ、英国、フランス、オーストリア、日本と続く。

 製品に使われる生地のほとんどは本社に隣接する工場で編み上げられ、ポルトガルの自社工場で縫製されている。糸やレースもヨーロッパ内で生産されたものを使用。製品のほぼ全てがメード・イン・ヨーロッパで、全製品が繊維の安全性と信頼性を証明するエコテックス100認証を取得している。16年には、「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」でデザイナー・オブ・ザ・イヤー(DESIGNER OF THE YEAR)を受賞し、品質のよさだけでなくファッション性の高さも評価されている。

ブランドの顔となる商品を確立し技術革新と
ファッション性を備えたブランドとしてアピール

 ホーマンCEOは就任後売り上げを2倍にできた理由について、「チームと商品の再構築に尽きる」と語る。チームの再構築については「人材が鍵だ。就任当時デザインは外注だったが、社内にデザイナーを置いてクリエイティブの質を上げた。グローバルブランドとして成長するためにセールスチームもエリア別に責任者を置き、細やかな対応ができる体制を整えた。それによりフランスは売り上げが5倍となり、百貨店のボン・マルシェ(LE BONMARCHE)では常にブランド別売り上げ2位をキープしている」と続ける。商品については「06年に、新しいベーシックラインとして当時はまだ珍しかった50ゲージのコットンを使用した“コットンセンセーション”シリーズを発表し、10年には日本でも人気の“コットンシームレス”シリーズを、生地と加工を変えて発売した。それにより高品質なだけでなく、技術革新とファッション性を備えたブランドであることをアピールできた」と言う。現在の売り上げの30%以上を占めるラウンジウエアを充実させたことも、売り上げ伸長につながっている。イメージビジュアルも含めてラウンジウエアのファッション化はシーズンごとに進んでいるが、「『ハンロ』は下着売り場から出ることはない。より多くの人に『ハンロ』を知ってもらい、下着売り場で一番のブランドになる事を目指す」と目標を語った。

見て、触れて、感じられる実店舗に注力

 成長の理由は売り場にもある。ホーマンCEOは「ロンドンのハロッズ(HARRODS)、パリのボン・マルシェ、ニューヨークのサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)など、世界の主要都市にミリオンストア(年間約1億2000万円以上売る店)が10店舗ほどある。世界中どこでも一環したイメージの店舗であることが重要だ」と話す。1年前にブランドで統一した什器とVMDを導入したニューヨークのブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE’S)は売り上げが約20%増になるなど、コンセプトを統一した売り場にすることで売り上げがアップするケースも多いようだ。今後、eコマースも進める予定だが、「まずは実店舗。『ハンロ』を見て、触れて、感じられる店舗が大切で、ふさわしい場所に出店していく。消費者に直接触れてブランドのメッセージを伝えていきたい」と、あらためて実店舗の重要性を述べた。

 ホーマンCEOの「直接メッセージを伝えたい」という思いは、消費者だけでなく各国の販売スタッフとの関係にも及ぶ。同社は日本を含む各国の百貨店バイヤーや専門店オーナー、販売スタッフなどを積極的に本社に招き、ホーマン社長自ら先頭に立って工場見学で説明を行ったり、商品について学ぶワークショップを開催したりしている。その方が、派手な広告を出すより「ハンロ」のブランド哲学と商品の価値を理解してもらうのにふさわしいという判断からだ。人と人とのつながりを大切にし、真摯なモノ作りと控えめな表現で真のラグジュアリーを提案する“ハンロイズム”ともいえるその精神は、本社で働くスタッフ全員に浸透していた。それがブランディング成功の礎であることを実感した。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身