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特集 CEO2026

【ワコール 川西啓介社長】 独自の技術力で多様なソリューションを提供

PROFILE: 川西啓介/社長

川西啓介/社長
PROFILE: (かわにし・けいすけ)1971年10月7日、兵庫県生まれ。関西学院大学卒業。94年ワコール入社。2015年米国ワコール取締役副会長兼ワコール・インターナショナル取締役社長に就任。20年、米国ワコール取締役会長とワコール・インターナショナル取締役社長、ワコール執行役員を兼任。22年ワコール取締役執行役員 マーケティング統括部長に就任。23年から現職 PHOTO:CHIE FUKAMI

ワコールは昨年、「女性美のワコール」から「自分らしさをエンパワーメントするワコール」へと提供価値の転換を行った。下着を通して女性の美を支えてきた同社は、コロナ禍で広がった快適志向やアフォーダブル需要の高まりで苦戦するも、業績回復を目指す。デジタルデータ活用や独自の技術力で新領域へと歩みを進める同社が目指すのは。

ボディデータやデジタルを駆使し
商品やサービスに反映

WWD:昨年、女性美のワコールから脱却した理由は?

川西啓介社長(以下、川西):コロナ禍以降、厳しい状況が続き、女性下着以外のポートフォリオの必要性を感じた。そこで、コンディショニングウェアの「CW-X」を通して、市場規模が大きいスポーツ領域を強化することで流れを変えようと考えた。

WWD:大谷翔平選手をアンバサダーに起用した理由と目的は?

川西:長年、ワコールは理想美を提案してきたが、美の多様化が進んだ。人によって美の定義はさまざまで、商品に求められる機能も異なる。そこで、あらゆる人の“自分らしさ”をエンパワーメントするソリューションを持つワコールと企業メッセージを再定義した。このメッセージを発信するには、大谷選手がベストという判断だ。彼は誰もが認める“自分らしさ”を具現化している世界的な人物。われわれは以前から、「CW-X」が持つテーピングの技術力で彼の活躍をサポートしてきた。今年2月にプロ向けに発売する肘用サポーターは、二刀流復活に向け大谷選手のリクエストを受けて開発したものだ。このように、ワコールと大谷選手はお互いを必要とする存在であり、アンバサダー起用は、ごく自然な流れだった。

WWD:25年を振り返ると?

川西:利益は復調しているが、計画した期待値には届かなかった。主軸ブランドの「ワコール」は、24年のリブランディングでシビアにブランド数や品番を絞り込んだ。地方の百貨店や専門店も減っている。商品数と取引先数が減る中で業績回復は厳しい状況だ。一方で、「ウイング」は“シンクロブラトップシリーズ”が好調に推移、快適さを追求した「GOCOCi」は前年比5割増と、快適かつアフォーダブル需要は伸びている。「CW-X」は大谷効果で同2割増と好調だった。

WWD:注力したサービスや成果のあった施策は?

川西:顧客起点で始めたデジタル施策やサービスの成果が見られた。セルフでボディデータを計測できる「SCANBE(スキャンビー)」のポップアップイベントが好評で、大きな反響があった。また、ボディデータを活用したサービス「わたしに合うブラ診断」をリニューアルし、自社EC「ワコールウェブストア」上でも利用できるようにしたところ、通常ブラ購買率は3%台であるところ、サービス利用者の購買率は7%程度までアップ。OMOの観点から、店頭にない商品やサイズをウェブ・アプリで取り寄せ、最寄りの店舗で試着できる「取り置き・取り寄せサービス」も予想以上の成果が見られた。女性下着はサイズが合うかが大きなハードルの一つ。それをデジタルを活用することで解決できた。

WWD:リブランディングした「ワコール」の現在の課題は?

川西:20〜30代へのブランド認知度は向上したが、商品の提案力が弱かったため、実売につながっていない。「いい下着を着けたい」という需要はあり、6000〜7000円で体に合う下着を届けることが課題。ボディデータと組み合わせた施策を考える。

WWD:直営店、卸の課題は?ECとのバランスをどう取っていくか?

川西:直営店とECを強化する。現在の店舗数は、直営店は約300、卸は約2000という構成で、女性下着だけの売り場は苦戦しているのが現実。直営店のあるべき姿を見出し、配置を考える。店頭のビューティーアドバイザーの高い接客技術は強みの一つだが、その戦力をどのように生かしていくかが課題だ。また、腹巻きやリカバリーウェアなどの新販路として、地方のドラッグストアへの展開を強化する。「SCANBE」や「CW-X」はスポーツジムなど、異業種へのサービス提供も拡大したい。

WWD:今年、注力するブランドや商品、サービスなどは?

川西:女性下着以外のソリューション提供を強化していく。「CW-X」は、アスリートはもちろん、医療や工場、運送業の従事者など体を動かすあらゆる人へ広げていくつもりだ。また、アスレジャーのようなファッションアイテムも展開し、ライトユーザー含めて「ワコールへ行けば、欲しいものがある」と思ってもらえるようにしたい。主軸の「ワコール」は、ボディデータをもとにした新機能の開発を行う。「SCANBE」の計測者は累計30万人を超え、適合性が上がっている。これらボディデータを活用し、顧客からの声を吸い上げながらサイズやフィッティングの整合性を高めていけるはずだ。昨年に引き続き、デジタルを活用した顧客の利便性を高める施策も行う。

個人的に今注目している人

元三井物産社長・第5代日本国有鉄道総裁
石田禮助さん

城山三郎著「粗にして野だが卑ではない」を読んで、石田さんの分かりやすい価値観と男気に共感を覚えた。国鉄総裁だった際の「給料はウイスキー1本でいい」という言葉が有名だ。人間は弱く、私利私欲に走りがちだが、自分が損をしても信念を貫く姿勢が素晴らしい。経営者として尊敬するし、自分もそうでありたいと思う。

COMPANY DATA
ワコール

1946年創業。下着メーカーとして事業拡大。64年にワコール人間科学研究開発センターを設立。70年代にはグローバル展開を始め、欧米、中国、東南アジアに製造・販売拠点を持つ。国内事業を担うワコールでは、「ワコール」「ウイング」などのインナーウェアやコンディショニングウェア「CW-X」などの製造販売を行う。同社の2026年3月期決算の見込みは、売上高が829億3700万円、事業利益が6億3000万円


問い合わせ先
ワコールお客さまセンター
https://www.wacoal.jp/support