ファッション

D2Cの雄「キャスパー」のお昼寝スポットで爆睡、「ワービー パーカー」でお買い物! 小売りの先端を行く街NYをパトロール

 2020-21年秋冬ニューヨーク・コレクション取材のため、現在NYに出張中です。正直、よほどのファッションオタクでもない限り、今の時代は「……NYコレクションって、やってたの?」ぐらいの温度感だと思います。しかし、小売業の最新事情をつかみ、日本市場の今後を予測するためにはNY視察は非常に重要!!……と言っても、NYに来るのは2年半振り、人生4度目で大してこの街に詳しいわけではないんですが、街を歩いて面白いと感じた小売り関連ニュースをざっとご紹介します。

広がるD2Cブランド集積売り場 
魅力的な商品は少ない?

 NY到着日にまず向かった先は、チェルシーマーケット。古いクッキー工場を再開発して、食や物販のお店を市場風に集めている観光地です。お目当ては、“D2Cブランドのデパート”という触れ込みで19年末にオープンした売り場「ネイバーフッド グッズ(NEIGHBORHOOD GOODS、以下NG)」。説明不要かと思いますが、D2Cとはダイレクト・トゥ・コンシューマーの略で、平たく言えば「ネット起点で、顧客とガッチリつながってモノ作りをする(ゆえにECが主販路の)ブランド」のこと。日本でもD2Cがこのところやけに話題ですが、NYはD2Cの本丸だけに、新しい動きが多いのです。「NG」以外にも、D2Cブランドを試せる売り場がこのところかなり増えているようなので、出張中あちこち行ってみる予定です。

 で、この「NG」ですが、正直すごく魅力的だったかというと、そうでもなく……。ブランドごとに服や雑貨、お菓子などが陳列されており、一緒に背景にある思想やこだわりが説明されていたんですが、やはり実際の店頭ではモノ自体にそれなりの魅力がないと、いくらストーリーを説明されても心は動きづらいですね。そんな中でも、コスメのコーナーはパッケージなどにもこだわっていて、結構面白かったですが。D2C銘柄として有名なグルーミング製品の「ダラー シェイヴ クラブ(DOLLAR SHAVE CLUB)」も置いてありましたよ。

「ワービー パーカー」のち密な
メールマーケティングがスゴイ!

 チェルシーマーケットを出てハイラインを南下し向かった先は、ミートパッキング地区の「ワ―ビー パーカー(WARBY PARKER)」です。こちらもD2Cの眼鏡ブランド。家で眼鏡を5本まで無料でお試しができ、気に入ったものがあればECで購入するという仕組みで有名ですが、実店舗もマンハッタンとブルックリンだけで既に11もあるようです。一体どんなものかと入店し、試しに数点かけてみたところ、これがとてもイイ!ごくごく個人的な感想ですが、日本の眼鏡SPAブランドの商品よりも素材に高級感があります(実際、95ドルなので日本の眼鏡SPAの中心価格帯より大分お高いんですけど)。で、店員さんと「どっちが似合う!?」「こっちのがいいんじゃない!?」「あなたにもっと合うフィッティング(鼻が低い人向け)があるわよ」などとワイキャイしていたら楽しくなってしまい、入店前は全く買う気がなかったのに購入してしまいました。

 眼鏡はもちろん、パッケージも付属の眼鏡拭きもかわいくて、気分がアガるんですよ。やはり、こういう風にモノ自体が素敵で、なおかつ店頭体験が楽しいと人はモノを買いたくなるんですね。店頭で購入する時も、ECと同様にEメールアドレス登録が必須で決済はカード。で、ここからがD2Cの本領発揮だと思うんですが、購入した日の晩にサンキューメールが届いたのはもちろんのこと、翌日には「あなたコンタクトレンズ使ってますよね?うち、コンタクトも出してるんでいかがですか?」といったメールが届きました。眼科医の処方箋を持っていなかったため、度入りレンズを入れずに眼鏡を購入した結果、恐らく「コンタクトのニーズあり」と判断されたんだと思いますが、その読み、当たっている……!この、顧客それぞれの生活に寄り添ってコマースしてくる感、さすがですね。こんなち密なメールマーケティングを繰り返されて、次から次へとニーズがありそうな商品を勧められたら、そりゃついついポチっちゃう日もあるよね、いやはや恐るべし。そんなことを思ったお買い物体験です。

上場も果たしたD2Cの最有力株
「キャスパー」の術中に
すっかりハマる

 さて、初日からあちこち動き周り、そろそろ時差ボケで苦しくなってきました。そこで向かったのはマットレスのD2C、「キャスパー(CASPER)」。わが編集部のD2Cの番記者(石塚)が「いやー、キャスパーとうとう上場ですよ」と出張前日に熱心に話していたので、NYで行くべきリストに加えていたのです。って言うと普通は店に行ったと思いますよね?しかし今回私が訪れたのは店ではなく(店も一応寄ったけど)、ブリーカーストリートの店舗に併設された、ウェブ予約制のお昼寝スポットです。こちら、「キャスパー」のマットレスや寝具で45分間のお昼寝or瞑想が可能なのです。日本との時差がマックスで辛くなる夕方を狙い、JFK空港からホテルに向かうタクシーの中で17時~17時45分の枠を予約していた私、グッジョブ!

 開始時間15分前にそこに着くと、受付でおしゃれパジャマブランド「スリーピー ジョーンズ(SLEEPY JONES)」のパジャマと、意識高い系スキンケアブランド「サンデー ライリー(SUNDAY RILEY)」の洗顔料や美容液のテスターを渡されます。洗面台付きの広い更衣室でパジャマに着替え、荷物をロッカーにしまったらいざベッドへ!指定の個室で布団に入り、電気を消したら3秒後には爆睡。40分後に自動で部屋のライトが点くと同時に目覚めましたが、なんということでしょう!さっきまで時差ボケであんなに辛かったのに、脳みそスッキリ爽快です!!

 再び着替えて受付でパジャマを返した後は、コーヒーや水、軽いスナックを自由に楽しめます。これでお代はしめて25ドルなんですが、時差ボケに苦しむ出張者や観光客にはかなりアリなんじゃないでしょうか!マットレスも枕もフカフカで、「次にマットレスを買い替える時は、『キャスパー』がいいかも!」という気持ちに十分なれました(実際のところ、日本からだとシッピング代がかさむので難しいと思いますけど)。マットレスって、合わない硬さを使うと背中が痛くなりますが、マットレス屋の店頭で一回本当に眠ってみることって、いくら厚かましくてもさすがにできません。かと言って、「ワ―ビー パーカー」みたいに家にサンプルが送られてきても、モノが大きすぎるゆえに扱い辛い。というわけで、自分が試しに行くというこの方式、かなりアリですね!

 パジャマが「スリーピー ジョーンズ」だったことを始め、空間の作り込みや演出にもすごく配慮していて、心をつかまれました。一言でいうと、かなり“映える”空間でした。こうしてミレニアルズ(私もギリギリその端くれです)は「キャスパー」の術中にはまっていくのですね。すごく納得。

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