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ベルリン・ファッション・ウイークで際立ったブランド3選 この街で発表を続ける理由とは?

 世界では数多くのファッション・ウイークが毎シーズン開かれているが、昨年はオスロやストックホルムが開催を取りやめるなど、パリやミラノなどの主要ファッション都市以外のファッション・ウイークは岐路に立たされている。多額の予算や労力をかけてまで開催する必要があるのかどうかは確かに疑問。その在り方自体が問われている。

 そんな中、1月13〜16日には、ドイツの首都ベルリンでも2020-21年秋冬ファッション・ウイークが開催された。ベルリン・ファッション・ウイークは、15のショーからなるメルセデス・ベンツ・ファッション・ウイーク・ベルリン(以下、MBFWB)を中心としたもので、期間中には非公式のショーやプレゼンテーションと、「プレミアム(PREMIUM)」や「シーク(SEEK)」「パノラマ(PANORAMA)」「ネオニット(NEONYT)」などの大型合同展が催されている。

 実際取材したベルリン・ファッション・ウイークはというと、合同展にはヨーロッパ各国からブランドやバイヤーが集まっているものの、MBFWBはブランドも、バイヤー、メディア、インフルエンサーなどの観客も国際色に乏しく、ドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス)が大半。かといって、現地の若い才能を積極的にサポートしたり、サステナブルに特化したりという強い個性がファッション・ウイーク全体にあるわけでもなく、ここ数シーズンの苦戦は続いているように感じられた。事実、「ゲーエムベーハー(GMBH)」や「オットリンガー(OTTOLINGER)」といったベルリンを象徴するユニークな若手ブランドは、パリで発表を続けている。

 その一方で今季は、音楽イベントや展覧会にも使われている元火力発電所を改装した巨大空間「クラフトヴェルク ベルリン(KRAFTWERK BERLIN)」に公式会場を移転。迫力のある音響設備や45mのランウエイを用意するとともに、アンダーグラウンドやクラブカルチャーを軸にする「DSTM」や「ラスト エアーズ(LAST HEIRS)」も参加するなど、ベルリンならではの“個性”を打ち出そうとする動きも見えた。ここでは、MBFWBの中で際立った3ブランドを紹介するとともに、デザイナーたちにベルリンで発表する理由を聞いた。

ODEEH

 約10年前からベルリンでショーやプレゼンテーションを開催している「オデー(ODEEH)」は、名実ともにベルリン・ファッション・ウイークをリードする存在だ。同ブランドは08年にオットー・ドレグスラー(Otto Droegsler)とイェルク・エールリッヒ(Joerg Ehrlich)が設立。今季も2人が得意とする多彩なオリジナルプリントとリラックス感のあるシルエットを生かしたエレガントなコレクションを披露した。流れるようなシルクのドレスやセットアップが特に印象的だ。

 ベルリンで発表を続ける理由を尋ねると、「私たちのような比較的新しいブランドにとって、シーズンの始まりにコレクションを発表することは重要。ベルリン・ファッション・ウイークの時期にはまだバイヤーもオーダーに融通が利き、新たな販路の開拓につながっている」と2人。現在は、パリでプレ・コレクションのセールスを行った後、ベルリンでメインコレクションを発表し、デュッセルドルフやミュンヘン、ニューヨーク、日本でセールスを実施。その後、パリ・ファッション・ウイーク期間中にはカプセルコレクションを披露するなど、長いセールス期間を設けているという。「実際、過去にはパリコレでコレクションを発表したこともあるが、バイヤーにとってはもう買い付けの終盤で、ほぼ予算を使い切った状態だった。また、コレクションのイメージを早い段階で活用できることは、露出面での効果も高い」とコメント。彼らがアトリエを構えるのは南ドイツだが、「ベルリン・ファッション・ウイークに参加することで、国内に加え、海外からもますます多くのサポートを得ている」と続ける。

LAST HEIRS

 これまで4シーズンは非公式のプレゼンテーションを行なってきた「ラスト エアーズ」は今回MBFWBの公式スケジュールに加わり、ランウエイデビューを果たした。2017年設立の同ブランドは、音楽やファッション業界でさまざまな経験を持つクリエイティブチームで構成される。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」や「ナイキ(NIKE)」「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」などでキャリアを積んだマックス・デルナー(Max Doerner)とレア・ロス(Lea Roth)がクリエイティブ・ディレクターとしてチームを率いている。「ベルリンに対する忠誠心と、この街のクラブシーンに根差したブランドであることからベルリンでのショーを決めた」と2人が話すように、同ブランドの代名詞はクラブシーンやアンダーグラウンドなカルチャーから着想を得たスタイル。今シーズンは、パテントやパイソン柄、ハンドペイントなどを取り入れながらも、ワークウエアの要素やアーストーンを中心に用いることで、いつもよりも落ち着いた印象に仕上げた。

 ショーの感想を尋ねると、「(ドイツの)ファッション協会とも話し合い、クラフトヴェルクという私たちにとって最高のロケーションで初のショーを開くことができた。他の都市のファッション・ウイーク同様、MBFWBは半年に一度のドイツにとって重要なファッションイベント。特に今回のラインアップに入れたことがうれしい」と話す。その会場には、個性的な装いのファッションキッズたちが集結。他のショーとは異なる熱気を見せ、地元での人気をうかがわせた。ただ、同ブランドはドイツ市場だけを視野に入れているわけではなく、パリ、ミラノ、ロサンゼルスでもセールスを行っており、近々東京でも始める予定。「地球上でも最も重要なブランドの一つになることを目指している」。

NOBI TALAI

 2015年設立の「ノビ タライ(NOBI TALAI)」は16年からパリにコレクション発表の場を移したが、先シーズン、ベルリン・ファッション・ウイークに戻ってきた。パリから復帰した理由を聞くと、「当時はグローバルにブランドをアピールするため、パリで発表することが重要なステップだった。しかし、その時にもベルリン・ファッション・ウイークでのイベントには参加していたし、いつかは再びベルリンでのショーを開くと決めていた。約30年暮らしているこの街は、私にとってのホーム。チームやアトリエも、家族や友達も、重要なつながりも、全てがここにある」とノビ・タラエイ(Nobi Talaei)=デザイナーは語る。イラン・テヘラン出身の彼女は今季、祖母の遊牧民の家系としてのヘリテージと伝統的なクラフトに着目。シャープなテーラリングとグラフィカルなプリーツに、ペルシャシルクやキリム絨毯といった自身のルーツを感じさせる要素を掛け合わせた。

 ベルリンでのショー後には、ベルリンを含む国内数都市でのセールスを実施。パリ・ファッション・ウイークの時期に合わせ、プレとメイン・コレクションのセールスも行なっている。既存の販路は、ベルリンの高級百貨店カー・デー・ヴェー(KaDeWe)や数都市に店舗を構えるセレクトショップのアプロポス(APROPOS)などで、ドイツが中心。「今は直営販売の準備を進めているところで、まずはオンラインショップをオープンさせる。自分のビジョンを表現する旅はまだ始まったばかり。シーズンごとに成長し、近い将来、日本をはじめとするアジア市場にも参入できることを願っている」とグローバルブランドへの飛躍を目指す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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