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「イエール賞」取材で感じた若手デザイナーの夢への情熱 プロヴァンス料理も楽しんだ南仏での5日間

 「第34回 イエール国際モードフェスティバル(34e Festival International de Mode, d’Accessoires et de Photographie à Hyères)」に参加するため、パリから列車で4時間をかけて南仏イエールへと足を運びました。コートダジュールに面したプロヴァンス地方最南端に位置するイエールは、フランス文化省から“歴史と芸術の町”として認定される古い町。年間300日が晴れと気候にも恵まれ、私が訪れた4月末も晴天が続きました。東には高級リゾート地ニースやカンヌ、サントロペ、西にはフランス最大の港湾都市マルセイユと、人気都市に囲まれて知名度は高くありませんが、街の控えめで素朴な雰囲気に心が休まります。

 4月25~29日に開催されたフェスティバルは、展覧会やポップアップ、トークショー、パーティーと内容盛りだくさん。会場の随所にきれいな花が飾られていたのも印象的でした。合間を縫ってファイナリスト10組の取材を行ったためスケジュールはかなりタイトでしたが、フランスのプレス事務所「ドゥゼ ブロー(2E BUREAU)」のスムーズなオーガナイズのおかげで有意義な5日間となりました。参加したのは「ニューヨークタイムズ(The New York Times)」や仏新聞「ロブ(LOB’S)」に加え、世界各国のインフルエンサーを含むプレス関係者、仏高級百貨店プランタン(PRINTEMPS)のバイヤーやイタリアのファッションスクール、マランゴーニ(MALANGONI)のディレクターら、多数の業界関係者が訪れていました。

パンチ強めのプロヴァンス料理

 スケジュールにはランチとディナーの時間も組み込まれており、毎食ホテルでビュッフェ形式のカジュアルな食事を楽しむことができました。プロヴァンス地方の料理といえばハーブを効かせたソースが有名で、素材を生かすというよりは中東料理のようにしっかりと味付けをするのが特徴です。例えば、魚のつみれはたっぷりのバジルと胡椒で濃いめに下味を付けて、赤キャベツとサワークリームのソースと一緒に食べます。いろいろな味が混ざってパンチは強めですが、ワインとは相性ピッタリ。また地元で捕れた新鮮なエビやカキは大ぶりでとてもおいしかったです。どのビュッフェでもチーズは5種類ほど用意されており、これまたワインが進む進む!フランスではチーズはおつまみとしてはもちろんですが、食後のデザートとしてイチジクジャムなどを付けてデザートワインとともに食べるのも主流です。最終日はスレート(一口サイズの小さいハンバーガー)やピザなどフィンガーフードが提供され、ルル・ヴァン・トラップ(Lulu Van Trapp)の野外ライブで締めくくられました。

初々しいけどエネルギーに満ちた若手デザイナーたち

 肝心のコンペティションは、若者の夢とエネルギーに溢れる活気に満ちた内容でした。インタビュー慣れしていないデザイナーも多く、言葉を選びながら必死で思いを伝えようとする初々しさに心が温まりました。最終日のグランプリ発表まで行動を共にしていた業界関係者とは、誰がグランプリを受賞するかという話題で終始大盛り上がりでした。

 ちなみに私は、初めて見たときからクリストフ・ランフ(Christoph Rumpf)と予想し、的中しました。ノーブルな素材を使った彫刻的なフォームは彼の豊富な創造力の賜物で、誇張したシェイプや過剰なジュエリーなど、決して“洗練された”とは言い難いアンバランスさが大人と子どもの間をさまよう時期の不安定で繊細な内面を表しているようで惹かれました。今後ブランドを始動するとしたら、どんなコマーシャルピースを作るのか楽しみです。

 昨今は業界関係者と話していると「服が売れない」「どのブランドもコピーばかり」「ファッションは地球環境を悪化させる産業」など、何かとネガティブな話題ばかりです。そんな中でもファッションに夢と希望を持ち、明るい未来を描いて制作に取り組む若者の姿はとても刺激的でした。“打算なく”、人や仕事と純粋に向き合う心を持ち続けたいと、初心に返るような経験となったフェスティバルでした。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける