ファッション

米「パーソンズ美術大学」2026年BFA卒業コレクション 今年は“選抜制”で31人が発表

米ニューヨークのファッションスクール「パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(Parsons School of Design)」は5月17日(現地時間)、BFA課程の2026年卒業コレクションを発表した。

アメリカの名門私立大学群アイビーリーグでは近年、人工知能(AI)の助けを借りることで学生の評価が全体として上昇する“成績インフレ”が問題視されており、「ハーバード大学(Harvard University)」は先日、各授業におけるA評価の割合を全体の20%に制限することを正式決定した。高等教育の価値そのものが問い直される中、ファッションスクールにもこれまで以上に高いレベルが求められている。もちろん、ファッション学生が“挑戦不足”というわけではない。しかし、誰もが平等に参加できることを重視しすぎると、デザインスクール本来の競争力が薄れてしまう可能性もある。そうした中、「パーソンズ・スクール・オブ・デザイン」は今年、ショーの参加基準を大幅に変更。参加人数を昨年の263人から31人へと絞り込み、より選抜性の高い形式へと転換した。

同校ディレクターのアンナ・ラーナー=ズウィック(Anna Lerner-Zwick)は、マンハッタンのイベント会場ザ・グラスハウス(The Glasshouse)のバックステージで、「全体の中でも特に優れた作品を際立たせたかった」と説明。新たに導入した3段階の選考システムでは、教員による推薦に加え、BFA課程の運営陣、さらにナルシソ・ロドリゲス(Narciso Rodriguez)、ピーター・ソム(Peter Som)、トレイシー・リース(Tracy Reese)ら卒業生デザイナーが審査を担当した。参加人数を減らしたことで、各学生は1ルックではなく3ルックを発表できるようになった。ズウィックは、「1ルックだけでは伝えられることに限界がある。今回は、それぞれの学生がミニコレクションを披露できる機会になった」と語る。一方で、選ばれなかった学生については、「それが業界の現実です。全員が成功者になれるわけではない」とコメントした。選考では創造性だけでなく商業性も重視されたという。「私たちは、単にランウエイで映える美しい服だけではなく、社会について考えることを求めている。そのため、完成度は非常に重要な要素だった」とズウィックは説明する。

ショーでは、多彩な世界観を持つ若手デザイナーたちが存在感を放った。ミカ・ウォン(Micah Wong)は、水牛の角やカピス貝を用いたヘッドピースを合わせたフィリピンの儀式服に着想したルックを披露。一方、ヴィ・レ(Vy Le)は、チュールをあしらったシャンティーレースと手描きのスパンコールを用い、ベトナムの“聖母信仰”をクィアな視点で再解釈したコートを発表した。

会場には、鮮やかな色彩やコスチュームパーティーのような遊び心あふれるルックが並び、特にパーティーハットを取り入れたスタイルが目立った。その一方で、学生の多くが戦争や政府による弾圧をテーマに制作を行っていた点も印象的だ。

ティアニ・リー(Tianni Li)は、中国・雲南省の活気に満ちた市場の様子に着想したコレクションを制作。フルーツやバスケット柄にスパンコールやアーガイル柄を組み合わせ、パニエスカートには豆腐の質感を表現するためほぐしたシルク糸を用いるなど、ユーモアのあるアプローチを見せた。リーは、「私はあまり深刻に物事を考えません。私にとって服は、常に遊び心のあるものであってほしい」と語り、将来的には「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」で経験を積みたいと明かした。

ジェンダーレスな服作りで注目を集めたジヴ・リウ(Ziv Liu)も、ショーのハイライトの一人だ。彼のデザインは、今回のコレクションの中でも数少ない、時代に合った実用的なルックとして存在感を放った。リウによると、男性モデルを起用したのは、男性性に対する固定観念を解体するためだという。「ひとつのインスピレーション源は自分の父です。父はとても優しく愛情深い人でした。一方で、自分自身の軍隊での経験も制作に影響を与えました。軍隊では、すべてが非常に厳格でした。その両極端の間に、自分自身を見出していました」と語った。

黒いバルーンドレスにはドロップウエスト部分に一本のドローコードを配し、ギンガムシャツには複数のドローコードをあしらって着用者がシルエットやボリュームを自在に調整できる仕様に仕上げた。リウは、「パターン自体は非常にシンプルですが、調整することで形を崩すことができる。それは、自分自身や他人が、“どれだけ引っ張るか”によって自分を定義していくことに似ています」と説明した。将来的には自身のブランド設立を目指しているというリウは、進行中だったインタビューに触れながら「これも何かにつながるといいですよね」と述べた。

以下、卒業コレクションのルックを紹介する。

卒業コレクションルック一覧

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

HOSOO特集 日本文化の基層を成す絹と大麻から未来の産業をつくる

「WWDJAPAN」7月13日発売号は、京都・西陣織の老舗HOSOO特集です。「More than Textile」を掲げ、織物の可能性を拡張し、人々がまだ見たことのない西陣織の美を追求しているHOSOO。その探究の中で出合ったのが、江戸時代の絹(シルク)や大麻(ヘンプ)で織られた着物でした。その品質を現代に再現し、さらに超えることを目指し、絹、大麻ともに日本の在来種を用いて、原料生産から取り組む…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。