ファッション

英セント・マーチンズBA卒業制作コレクション 日本人含む注目の6デザイナーをピックアップ

ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校(Central Saint Martins)BAの卒業制作コレクションが6月4日(現地時間)に発表された。米「WWD」は、アサノ・ユウラ(Yuura Asano)、イゾベル・ディケンズ(Isobel Dickens)、ルーク・ヘミングウェイ、(Luke Hemingway)、ティミ・シャサンヤ(Timi Shasanya)、フィービー・ボア(Phoebe Bor)そして今年の「ロレアル・プロフェッショル・ヤング・タレント・アワード」を受賞したマヤ・ハスバニー(Myah Hasbany)をフィーチャーした。

6人のデザイナーは、幼少時代にインスピレーションを受け、ファッションの未来を少し明るくするようなコレクションを制作した。彼らは、“思春期”を題材にしたものの、“ピーターパン症候群”の表現ではなく、若々しいオプティミズム(楽観主義)を取り入れていた。こうした表現は、不穏な時代の今だからこそ、世界が必要としているものなのかもしれない。

アサノ・ユウラ

プリントデザイナーのアサノ・ユウラのコレクションは、“‘女性’になることと‘少女’になることはどちらがよりエンパワーメントになるのか?”を問うものだった。女性になるということは、どう立ち振る舞うか、着飾るか、そしてどうあるべきかという社会的制約が付きまとう。一方で、少女時代は、子どもらしい不思議と無限のイマジネーションで満ち、もっと自由で解放的だ。

アサノのコレクションは、チャーミングで無邪気なパターンや、ひらひらしたスカートのドロップウエストのドレスで、大人の女性と少女時代の間の地続きの緊張関係を捉え、女性らしさの中にある過小評価されがちな強さを強調した。

アサノは、「私は抑圧的だと見なされるガーリーなものを着るのが大好き。女性を力強く見せるために、男性的な服を着せる必要はないと思う」と説明した。可愛らしく、誰もが欲しがるような服を着たアサノのコレクションの女性達は、否応なしに“少女”に後戻りさせられたのではない。彼女らがそれを選び、“成人した女性性”に反旗を翻したのだ。

イゾベル・ディケンズ

ウィメンズウエアをデザインするディケンズは、モールで手編みされたフェアアイル柄のセーターから、ペールピンクのドレス、クラフトフォームで作られたコート、落書きされたダンボールのトップスなど、幼少期の思い出を再現した。アイデアは、ディケンズが故郷の街を旅をしたことから生まれたという。

ディケンズは、「私が覚えている建物は全て取り壊されていて、子どもの頃にあったものはもうほとんどない。建物はもうどこにもないが、そのスピリットはまだそこに漂っているように感じた」と話した。故郷に帰った彼女は、自分の子ども時代の思い出がなくなっていることに気がついたのだ。

解けているように見えるモールのニットから、歪んだ形のコートに至るまで、彼女の構造的なシルエットは、子どもが大人に対して抱く、気まぐれで移り気な考え、そしてまたその逆も表現した。

ルーク・ヘミングウェイ

マンチェスター出身のヘミングウェイのコレクションは、夢に対して、より現実的なアプローチをとった。ヘミングウェイは、「自分の出身地と、経済的な理由から夢をかなえられなかった全ての友人を表現したかった。夢がかなわなかったとしても、その願望や過程の中に喜びや美しさを見つけることで、救いになるものを見つけてほしいと思った」と話した。

コレクションには思い出と意味が詰まっており、それぞれのルックは、それ1つでコレクションを作れるほどだった。ツイードのセットアップは、マンチェスターのパンク・バンドのメンバー、クリス・シーヴィー(Chris Sievey)によるコメディキャラクター、フランク・サイドボトム(Frank Sidebottom)に着想を得た。ツイードのセットアップは、縫い目にテープを貼り、ヘリンボーン柄に見えるようにスクリーンプリントを施した。このルックは、商業的な成功のためにアイデンティティーを失うことをテーマにしており、大きなダンボール製の人形を連れて登場したが、最初はこの人形のために仕立てられたものだった。“後回しにされた夢”の中に美があるのかもしれない。

ティミ・シャサンヤ

メンズウエアをデザインするシャサンヤのコレクションは、トップスやアクセサリーから激しく噴き出すようなツル状の繊維、穏やかにたなびく帆などで構成され、彼女が移住で感じた感情の重みを形あるものにした。彼女は、育ったナイジェリアのラゴスと北部のカノを訪れ、テキスタイルとレザーを選んだ。

シャサンヤは、「生地の処理や手染め、織り、型にはまらない素材で、私は精神的・肉体的な移住にまつわる感情を、体に宿る記憶を運ぶ衣装で表現した」と言う。ハイジ・ブッハー(Heidi Bucher)の彫刻にインスピレーションを得て、生のコットンやリネンを、金属製の棒や箒といった彼女が見つけた物体と掛け合わせた。その結果、無機物に命と感情が宿ったのだ。

フィービー・ボア

ニットウエアをデザインするボアは、「父は森林警備員だったので、私はライオンやゾウのいる南アフリカの田舎で生まれた。私たちが子どもの頃、ある植物から歯ブラシを作る方法を教わった。私はいつも自然の力と自然がもたらしてくれるものに魅了されてきた」と話した。彼女の卒業制作は、彼女の自然への愛とロンドンで過ごしたティーン時代を融合したもので、まさに、“テキスタイルの魔法”のようだった。

ライオンのたてがみのようなジャケットとオープンニットのトップスには、フェザーのような装飾がついているが、それらは草をシルクモヘアで手作業で巻いたもの。サステナブルで、自然に抜け落ちるためにクルエリティフリーのヤマアラシの針が飛び出すドレスや、レジンでコーティングされた種のさやが編み込まれたニットなどが登場した。

マヤ・ハスバニー

ハスバニーの遊び心溢れるコレクションは、彼女の故郷、テキサスにある小さな街に墜落したUFOの話から誕生した。ハスバニーは、「私のコレクションは、いかにこの街が理解できない異質なものであった宇宙人を葬り、そして住民が異世界の生物に変身したか、いかに異質なものを排除することが、本当は役に立たないことであるかを物語る。これは、私が育ったテキサスでの経験そのものだ」と話した。ハスバニーの愉快なコレクションは、ハンドメードのニットウエアをメーンに使用し、宇宙人のような構造的なシルエットを採用した。

あるルックは、ハスバニーと度々コラボレーションしてきたエリカ・バドゥ(Erykah Badu)のためにデザインされたものだ。「彼女とは、私が16歳の時からコラボしている。彼女は、私にとって偉大な母のような存在だから、彼女をコレクションに取り込むのは正しいことだと感じた」とハスバニーは語った。

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