
アーティストたちの衣装を手がけながら、自らの表現としてドレスやプレタポルテのコレクションを発表する若手デザイナー、垣本佳奈子と八木華。発注を受けて作る衣装と、自発的に生み出す創作—それぞれのやり方で異なる領域を行き来しながら、独自の技術と感性で自分だけの道を切り開く。ファッションにも舞台芸術にもくくることができない、そのあいだで生まれる新たなかたちとは。二人のデザイナーの現在地を解き明かす。(この記事は「WWDJAPAN」2025年8月4日号からの抜粋です)
着用者の意外な色気を引き出す
物語と発見のあるデザイン
ブランド「カナコ カキモト(KANAKO KAKIMOTO)」を主宰しながら、ミュージシャンやアーティストの衣装制作も手がけるデザイナー、垣本佳奈子。奈良県出身の彼女は、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)でファッションを学んだ後、エスモードジャポンへ進学。同校の留学科を通してパリでも学び、帰国後はフリーランスとしてキャリアをスタートした。

垣本 佳奈子/デザイナー
「仕事の仕組みや現場を知るために、いくつかのデザイナーズブランドで技術スタッフとしてアルバイトを経験した。衣装制作に興味を持ったのは、“流行を作りたい”という気持ちが出発点。アーティストの衣装を通じて流行を発信したいと考えた」と話す。直近では、ガールズグループXGの世界ツアー「ファーストハウル(The first HOWL)」でリーダーのジュリンが着用したスカートとアームカバーをはじめ、羊文学、小柳ゆきら、実力と世界観を兼ね備えたアーティストたちのステージ衣装を手がけてきた。
垣本が衣装制作を手がける際、依頼の多くはスタイリスト経由だ。インスタグラム(Instagram)を通じて既存アイテムのリースのやり取りを始め、オーダーへと発展することも多いという。「スタイリストさんからの依頼は、ほとんどが色・ムード・素材感を指定する程度の抽象度の高いもの。そのイメージをどう形に落とし込むか。私にとって衣装制作は、“とんちを利かせる”ような仕事。先方の期待に応えつつ、それを上回る“何か”を提案するよう心がけている」。例えば、最近手がけたあるステージ衣装では、遠目には、単にひし形のテキスタイルが縦横に連なった構造だが、よく見るとそのひし形は紐を組んで作っているというスカートを提案。「一度目の感動はステージで、二度目の感動はSNSや写真で細部に気づくこと。そんな“発見のある服”を作りたい」。
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