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「ラストフレーム」、海外視野に事業拡大へ 「土屋鞄」のハリズリーと共鳴したこと

奥出貴ノ洋「ラストフレーム」デザイナー(左)

PROFILE:(おくで・たかのひろ)石川県出身。長年にわたり国内外のファッションブランドにデザインを手掛ける。2018年秋にバッグブランド「ラストフレーム」をスタート。19年からパリで発表し、イギリスのセルフリッジやブラウンズを中心に取り扱いが始まる。24年9月に初の直営店を阪急うめだ本店にオープン。プレ・スプリングを加える年3回のコレクションを発表

磯部知寛/土屋鞄製造所バッグ部門新規事業本部長

PROFILE:(いそべ・ともひろ)国内外の複数ブランドで経験を積み、2021年に土屋鞄製造所に入社。24年から「オブジェクツアイオー」のディレクター兼事業責任者を務める。26年、「ラストフレーム」参画を機にバッグセグメント新規事業本部を立ち上げ、本部長に就任

土屋鞄製造所を展開するハリズリーグループが今年2月、ニットバッグブランドの「ラストフレーム(LASTFRAME)」を傘下に迎えた。卸中心で成長してきた同ブランドは、D2C強化と経営基盤の構築、海外進出を次の課題としていた。一方、土屋鞄は直販や品質管理に強みを持ちながら、ファッション領域での展開を模索してきた。日本のモノづくりへの価値観で共鳴した両者は、素材や技術、販売チャネルを補完し合いながら、2026-27年秋冬から世界市場を見据えた新たなブランド成長に踏み出す。

WWDJAPAN(以下、WWD):今回の参画に至った背景と、両社の出会いとは。

奥出貴ノ洋「ラストフレーム」デザイナー(以下、奥出):これまで卸を軸に海外15カ国まで広がり、一定の成長を遂げてきた。一方で、今後10年、20年と持続的に続けていくには、経営基盤の整備と同時に、自分たちの手で顧客に価値を届けるフェーズに入ったと感じている。デザインと経営の両立の中で、モノづくりに集中できる環境を求めていたタイミングで出会いがあった。企業としての姿勢や同じ業界に携わる皆さんの人柄にも共感し、参画も自然な流れだった。

礒部知寛・土屋鞄製造所バッグセグメント新規事業本部兼「ラストフレーム」ブランドマネージャー(以下、礒部):創業以来、D2Cを軸に顧客へ直接届けることを重視してきた。一方、「ラストフレーム」はホールセールを主軸に成長してきたが、次の段階として顧客接点の強化を模索していた。このビジネスモデルの補完関係は大きな要因でもある。また、以前から個人的にも注目していたブランドで、伊勢丹新宿店でのポップアップ時に偶然奥出さんと出会い、互いのブランドを紹介しながら、一気に距離が縮まった。

奥出:磯部さんが「ラストフレーム」にとても関心を持ってくれていたことがうれしくて、すごく印象に残っている(笑)。

WWD:両者が共鳴したポイントはどこにあったのか。

礒部:最大の共通点は、日本のモノづくりに対する考え方。職人や産地を単なる生産背景としてではなく、長期的なパートナーとして捉えている点に強く共感した。また、ニットという独自の技術を持つ「ラストフレーム」は、レザーを中心に扱うわれわれにとって新境地でもあり、これまでにない価値を生み出せると感じた。

奥出:「土屋鞄」の工房を訪れたとき、職人が主体的に働き、長く関係性が続いている点が印象的だった。単なる製造ではなく、人と人との関係性としてモノづくりが成り立っている。その姿勢は、「ラストフレーム」を立ち上げた原点とも重なる。目の前の工場と価値を共有し、還元していくという考え方が一致していた。

WWD:互いの強みをどう捉え、どのようなシナジーを期待しているか。

奥出:これまでニット工場を軸に完結するモノづくりを行ってきたが、今後はレザーや異なる技術と掛け合わせることで、表現の幅は確実に広がると考えている。また、品質管理や耐久試験の体制が整っている点も大きく、プロダクトとしての完成度をさらに高めることができる。結果として、実験性と品質の両立が可能になる。

礒部:「ラストフレーム」の魅力は、プロダクトに宿る奥ゆかしさや日本的な精神性にある。いわゆる“用の美”に通じる価値観であり、われわれとも親和性が高い。一方で、販売チャネルやデジタル領域については強みを持つ。D2CやECの運用力を掛け合わせることで、商品だけでなく、その背景にある思想や技術まで含めて伝えていけると考えている。

インディペンデントブランドとの協業が未知なる成長戦略に

WWD:今回の協業によって、どのような成長を目指すか。

礒部:この取り組みは、いわゆる利益最大化を主目的としたM&Aではない。日本のモノづくりをいかに次世代へつなげるかという思想が出発点である。「ラストフレーム」はすでに海外での評価やネットワークがあり、われわれにとっても新たな領域への進出になると考えていて、インディペンデントブランドとの挑戦に可能性を感じている。直近では26年1月の「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」で「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」と、3月のパリウィメンズで「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボバッグをそれぞれ発表した。こうしたファッションとの文脈において、知名度のある「ラストフレーム」と取り組むことは大きな意味を持つ。今後はデザイナーとの協業や海外での発信の場を持つことがブランド開拓につながるだろう。

奥出:これまでリソースの制約により実現が難しかったポップアップや海外展開も、運営面のサポートによって具体化できると期待している。空間作りもうまく力を入れられなかった。世界観をしっかり打ち出せるスペース作りは楽しみのひとつだ。また、ECやデジタルマーケティングの強化によって、ブランドの価値をより直接的に伝えられるようになる。単なる販路拡大ではなく、背景にある技術や思想を含めて届けていきたい。

WWD:新体制となる2026-27年秋冬シーズンの内容は?

奥出:新しく2型のバッグが増えた。2サイズを備えたハンドル付きポーチバッグの“アーチ”と、その名前の通りマチのない平面のトートバッグ“フラット”。“フラット”の大きいサイズは、PCを入れるのにも最適だ。また桐生で1本の糸を加えて作ったモザイクのようなデザインが今シーズンを象徴としている。

WWD:今後のビジョンについて。

奥出:ブランドの根本にある、長く使われるプロダクトを提示し続けたい。その意味で“用の美”の感覚を軸に据えている。今後は空間も含めてブランドの世界観を表現し、一つ一つのプロダクトの価値をよりていねいに伝えていきたいと考えている。

礒部:日本の技術を基盤にしながら、世界に通用するブランドへと育てることが共通の目標でもある。D2Cや海外展開を強化しつつ、ファッション領域での挑戦も続けていく。今年は百貨店への出店計画や海外でのリサーチをしっかり進めていく。短期的な拡大ではなく、長期的に支持されるブランドとするためにも両者の強みを最大化していく考えだ。

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