PROFILE: ルカ・シュミッツ/「レスポートサック」クリエイティブディレクター

昨年秋には、アパレルラインが始動した。商品カテゴリーを増やす中、バッグを核としたクリエイションはどのように広がっていくのか。ルカ・シュミッツ(Luca Schmitz)「レスポートサック」クリエイティブディレクターに話を聞いた。
WWD:改めて、「レスポートサック」が大切にしていることは。
ルカ・シュミッツ「レスポートサック」クリエイティブディレクター(以下、シュミッツ):50年の歴史を持つブランドなだけに、いくつか思い当たるものがある。特に大切にしているのは、「軽さ」「機能性」そして「ニューヨークらしさ」だ。ニューヨークは人が絶えず行き交うエネルギッシュな街。世界から人が集まり、世界へと旅立っていく。こうした街の特徴が(軽さや機能性を重視する)「レスポートサック」を形作ったように思う。
WWD:これまでのキャリアについて聞きたい。
シュミッツ:実は、昔はモデルをしていた。クリエイティブな人たちに囲まれた、刺激的な時間だったよ。モデル業と並行して、デザインの学校にも通っていた。
2021年にレスポートサックに入社してしばらくは、今とは違う仕事をしていた。マーケティングやVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を担当していたんだ。振り返ると、これもクリエイティブディレクターとして必要な経験だったように思う。私たちはヘリテージのあるブランドで、クリエイティブディレクターにはそのヘリテージを受け継いでいく使命がある。あらゆる角度からブランドを知ることが大切だ。
WWD:ヘリテージが色濃く表れているアイテムは。
シュミッツ:“マイクロウィークエンダー”かな。バッグに付けられるミニバッグで、エアーポッズ(AirPods)やクレジットカードを収納するのにぴったりの大きさだ。創業当初からある“ウィークエンダー”のストラップなどのディテールはそのままに、今っぽいミニサイズにアップデートした。
モノ作りの際、常に念頭に置くのが、このアップデートという考え方だ。色使いについても同様。50年以上の歴史を持つゆえ、これまでにたくさんのカラーを使ってきた。けれど、どんなカラーであっても、それが定番商品であっても限定商品であっても、同じ「レスポートサック」としての “言語”を話さなければならない。
トレンドアイテムを作るときも、ゼロから新しいものを生み出すわけではない。「トレンドを追う前に、一度レガシーに立ち返る」「DNAをベースに、シーズンらしさはカラーや素材で加える」。そんな意識でデザインしている。
WWD:アップデートするために大切なことは。
シュミッツ:例えばスマートフォンは、ただ便利なだけでなく、日々の暮らしになくてはならないアイテムになった。それはなぜか。人々のライフスタイルの変化に合わせて、絶えず製品をアップデートしてきたからだ。私たちも同じような考え方でモノ作りをブラッシュアップし、顧客のライフスタイルを支え続けたいと考えている。
(私たちにとって大切な)トラベル(travel)という言葉も時代とともにアップデートしている。かつては飛行機に乗るなど、どこか遠くへ行くことを指した。しかし、今は地下鉄で通勤・通学することもトラベルと受け止められるようになった。このような変化に合わせて、旅行用の大型のトランクケースからちょっとしたお出掛け用の小型のショルダーバッグまで、バッグのバリエーションが増えている。
WWD:自身のライフスタイルを支える「レスポートサック」のアイテムは。
シュミッツ:私は仕事柄、あちこちへ移動することが多い。けれど、使うバッグはお気に入りのトートバッグだけなんだ。出勤のときも、出張のときも、どこへ行くときも一緒にいる。パスポートがちょうど収まるポケットがあって、そこへパスポートを入れることは、ただの動作以上のもの、いわば小さなリチュアル(儀式)のようにすら感じる。
アパレルラインのお気に入りは「決められない」
WWD:昨年、アパレルラインが始動した。
シュミッツ:とにかくこのスタートに向けて、できる限りのことをした。不安に思うことはあったが、難しいと感じることはなかった。これもチームのおかげだ。
私たちは、クリエイションを単なるサプライズ(意表を突く)とは捉えていない。チームと緻密なコミュニケーションを取れば、ポジティブなサプライズ(想像を超える)になる。日本チームともよくコミュニケーションを取っているよ。世界を見渡しても、日本ほど“正しいデザイン”や“正しいカラー”に厳しい国はないように感じる。インスピレーションの源であり、需要なパートナーだ。
繰り返すが、「レスポートサック」は歴史あるブランドだ。確かに私の一声で始まることもあるが、それもチームがいなければ達成されない。「個より全体を大切にする」のが「レスポートサック」だ。そしてこれはチームだけでなく、プロダクトにも言えること。新しいカテゴリーだからと身構える必要はない。ブランドのDNAを大切にしてアパレルを作れば、自然とバッグともマッチする。
WWD:お気に入りのアイテムは。
シュミッツ:お気に入りなんてとても選べないよ。ブランドの歴史やレガシーをうまくアパレルラインにも取り入れられた。今回ばかりは、特定のアイテムではなくアパレルというカテゴリーを選ばせてほしい。全てがお気に入りだよ。
WWD:アパレルを初めてお披露目したのが表参道の店舗だった。
シュミッツ:表参道店は、ニューヨークのソーホーにあるグローバル旗艦店の内装を流用しているんだ。ブルーやホワイトのワイヤーメッシュがその一例。とてもうまく取り入れているので、シスターストア(姉妹店)と呼びたいくらい。
機会があればぜひ遊びに来てほしい。初めてなのにどこかアットホームに感じることだろう。
WWD:アンバサダーにはK-POPグループのBABYMONSTERを起用した。
シュミッツ:私たちの過去の広告を見る機会があれば、ぜひ見てほしい。そこに立つアイコンこそその時代を反映しているが、それを取り巻くムードはいつもカラフルでエネルギッシュ、そして全ての人に開かれたものだ。今回と同じものを感じてもらえるだろう。
私の目には、彼女らがバッグを持つと本当に魅力的に映る。このビジュアルを見た人にも、そう感じてもらえたらうれしい。