ファッション

「デシグアル」とコラボしたロンドンの若手、マーシャ・ポポヴァが語る 「“普通の素材”とクラフトで創るラグジュアリー」への挑戦

PROFILE: マーシャ・ポポヴァ

マーシャ・ポポヴァ
PROFILE: (マーシャ・ポポヴァ)旧ソ連崩壊後のウクライナに生まれる。ウクライナ南西部の港湾都市・オデッサで10代を過ごし、大学では建築を専攻。ロンドンの名門セントラル・セント・マーチンズでファッションデザインを学び、メゾン・マルジェラやセリーヌでインターンを経験。2023年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイークにて初のランウエイショーを実施。以降、ロンドンを拠点にコレクションを発表する。 PHOTO:KAZUSHI TOYOTA

スペイン・バルセロナ発の「デシグアル(DESIGUAL)」は、ロンドン拠点のウクライナ出身デザイナー、マーシャ・ポポヴァ(MASHA POPOVA)との初のコラボコレクションを発表した。同コレクションは、一部店舗と公式オンラインサイトで取り扱い中だ。

ポポヴァは、大学で建築を学び、ロンドンの名門セントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)を卒業。メゾン・マルジェラ(MAISON MARGIELA)やセリーヌ(CELINE)で経験を積んだのち、2023年春夏シーズンより、ロンドン・ファッション・ウイークでコレクションを発表している。

自身の名を冠したブランド「マーシャ ポポヴァ(MASHA POPOVA)」は、90〜00年代ガールズカルチャーを思わせるポップな感性を内包しながら、反逆とエレガンスを融合し、現代の女性像をユニークに描き出す。象徴的なのは、デニムをキャンバスに、染めやフェードなどの手仕事で表現した、ダイナミックなグラフィックだ。また、クチュールの技法も取り入れ、構築的なパーツや身体に沿うタイトなフォーム、センシュアルな肌見せなどドレスメイキング的要素を併せ持つ。

本コレクションでは、デニムという両者の共通言語を核に「デシグアル」の持つボヘミアンの要素を再解釈し、クラフツマンシップを自由な姿勢で表現した。本コレクションのローンチに合わせて来日したポポヴァに、自身のクリエイションやコレクションの制作背景について聞いた。

WWD:今回のコラボが実現した経緯は?

マーシャ・ポポヴァ(以下、ポポヴァ):ショールームに立ち寄るためにパリにいた時、「デシグアル」の担当者から、オファーのメールが届いた。スケジュールを変更してその足でバルセロナに飛び、アーカイブを見せてもらった。4ヶ月後にはコレクションが完成したので、短期間でとんとん拍子に決まった。

WWD:「デシグアル」はどのように映っていた?

ポポヴァ:「デシグアル」には、私のブランドと比べものにならないほど長い歴史があるけど、源流を辿れば共鳴する部分があるように思った。「デシグアル」は、デニムパンツをアップサイクルしたパッチワークジャケットから始まり、私もデニムを使ったウエアで知られるようになった。デザインにおける、大胆で自由な精神性も通底する。

WWD:コレクションで目指したものは?

ポポヴァ:自分のものでも「デシグアル」のものでもない、新しいものを作ることを目指した。普段は手作業で服を作るので、表現の幅に限りがありできないことも多いけど、「デシグアル」は製造スケールも違う。工場で着古したビンテージ風の加工をしたり、レザーやオイルの質感を表現する仕上げをしたりできたことで、これまでの「マーシャ ポポヴァ」にはなかったものが完成した。

WWD:デニムは、普段のクリエイションにおいても重要な素材の一つだ。その魅力は?

ポポヴァ:変幻自在な素材。1本のロールがあれば、デザインと技術次第で、あらゆるバリエーションと可能性を引き出すことができる。

身近な素材で造るラグジュアリーな一点。
町の古着屋で磨いた「なんとか成立させる」ミックス感覚

WWD:ロンドンのファッションシーンはどのように映る?

ポポヴァ:ロンドン・ファッション・ウイークは変化に富んでいて、常に新しいものが生まれ続ける。有名になったデザイナーが発表する場を他都市に移すことがあっても、同時に新たな若手が台頭し、シーンは絶えず循環する。例えば、ミラノでは“イタリアンブランド”としてのアイデンティティーを強く意識するブランドも多いけれど、ロンドンはよりインターナショナルで、さまざまな文化とスタイルが混じり合う。私は学生の頃からロンドンを拠点としていて、ともに仕事をするコミュニティーもそこにある。今の私が、他の都市に拠点を移すことは想像できない。

WWD:自身が築いたブランドコミュニティーを説明すると?

ポポヴァ:オープンマインドで創造的で、自由な精神を持っている。

WWD:ウクライナ出身というバックグラウンドは、コレクションや作品にどう影響している?

ポポヴァ:私は旧ソ連崩壊後のウクライナの小さな街で育ち、ファッションにアクセスする手段がなかった。ハイファッションはもちろん、ハイストリートファッションでさえ、10代後半になるまで触れる機会がなかった。

そのため、服については友達と町の大型古着店で学んだ。トレンドやお手本はなく、柔軟な感覚でミックスし、調和させるアプローチだった。その経験が、現在のクリエイションにも影響している。

私は異なる素材やアイテム、文脈を自由に融合し、なんとか成立させることが好き。素材も、ジャージやデニムのようなシンプルなものを使いたい。つまり、高価な素材の代わりに身近な素材を使い、クラフトや手作業と組み合わせることで、ラグジュアリーな服を生み出すようなことを目指している。

WWD:ウクライナは、困難に直面している。作品にメッセージを込める作家もいるが、自身はどうか?

ポポヴァ:戦争があること自体は悲しいこと。でも、ウクライナと聞いてすぐに戦争と結びつけられることには違和感がある。私の故郷には、それだけでない魅力が多くある。

私はファッションを通してメッセージを伝えるより、着る人自身に意識を向けている。着る人がどう見えるか、心地よく感じられるか、自信が持てるか。普段と違う、特別な気分になってもらえるものを作りたい。

“カウンターカルチャー的” “反逆”などとも表現されるが、実はそういう意図はない。ただ服に夢中でエネルギーを込めると、結果的にそのようなアウトプットになる。

WWD:日本では、グレイト(GR8)やヌビアン(NUBIAN)などのセレクトショップが取り扱っている。ブランドのアイデンティティーが、日本の消費者に届いていると感じるか?

ポポヴァ:アジアのなかでも日本は私たちにとって大きな市場の一つで、英国やヨーロッパ諸国以上の存在感がある。戦略的にアプローチしたわけではないが、結果的に好感触を得ているよう。クリエイションを通して、日本のお客さまにも私の感覚を感じ取ってもらいたい。

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