PROFILE: 右:反町隆史/俳優 左:亀梨和也/俳優、アーティスト
作家・北方謙三による、中国の長編古典小説をもとにした大河小説「水滸伝」シリーズを、WOWOW・Leminoが連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」として初映像化。腐敗が蔓延(はびこ)る世に、正義を信じる下級役人の宋江(そうこう)が立ち上がる。彼が記した世直しの書「替天行道(たいてんぎょうどう)」に感銘を受けた108人のはぐれ者たちが梁山泊に集い、叛逆の狼煙を上げる群像劇だ。本作で織田裕二が演じる宋江とともに、もう一人の頭領として梁山泊を率いる英雄・晁蓋(ちょうがい)を演じる反町隆史と、梁山泊随一の天才武人・林冲(りんちゅう)を演じる亀梨和也にインタビュー。2人の言葉から、この作品のスケール感と撮影の過酷さが伝わってくる。
スケールの大きな「水滸伝」の撮影
——本作に出演を決めた理由からお聞かせください。
反町隆史(以下、反町):僕は、WOWOWの大原康明プロデューサーの、「(反町さんに)晁蓋という役をぜひやってほしいです」という依頼の熱量にやられました。俳優人生でそこまで言ってもらえることはなかなかないことなので。自分がどこまで晁蓋を演じられるのかを、とても楽しみにしていました。
亀梨和也(以下、亀梨):プロットや台本をいただくまで、僕自身はこの「水滸伝」という作品に接する機会はありませんでした。依頼があっていろいろとお話を伺いながら、8カ月に渡る撮影や、林冲という役へのプレッシャーが非常にあったのですが、反町さんと同じくプロデューサーの皆さんの熱量に、まさに「水滸伝」のように心を動かされ、覚悟を決めさせてもらいました。もちろんスタッフの方たちや素晴らしいキャストの皆さんたちの存在も、出演を決断する大きな後押しになりました。
——大変な撮影になりそうだという予感があった、と。
反町:もちろん!(笑)。そもそも時代劇というところで大変なんですよ。しかも中国の物語ですから。実際に今回撮影をしたのは中国ではなく日本でしたが、もしかしたら中国へ行くかも、と言われていたよね?
亀梨:そうですね。当初はいろいろな構想があったらしくて。撮影期間も8カ月はあくまでも予定で、そこにプラスする可能性もありましたし、なかなか覚悟が要る作品でした。
——実際、かなりスケールの大きな撮影だったそうですが、お二人はそれをどんなところで実感しましたか?
反町:織田さんも、「毎日毎日一番重厚な、メインのシーンを撮っているみたいだよね」と言っていましたが、まさしくその通りでした。馬が出てきたと思ったら、今度は雪山で撮影したり。
亀梨:本当に(笑)。ロケ場所も一つひとつのスケールが大きかったです。スタンバイ場からそうでした。エキストラさんを含めると、キャストは何十人、何百人いるのが基本的な状態で。本当に何もないような山の中に、そのシーンに参加するキャストをメイクするための、スタンバイ場所を建てるんです。キャストの移動に使う車両も常に何10台、多いときには50台近くが動いていて。そんなスケールでずっと撮影していたので、感覚が麻痺してしまいました(笑)。
演じる上で意識したこと
——織田裕二さんは宋江を演じるにあたり、「どこにでもいる普通の人であることを意識した」とのことですが、反町さんは晁蓋を、亀梨さんは林冲を演じるにあたり、何を大切にしましたか?
反町:晁蓋は他を圧倒する戦略家で、独自の軍事力を持っています。「托塔天王(たくとうてんおう)」の異名で世間では恐れられていますが、阮小五(げんしょうご:加藤清史郎)や呉用(ごよう:野間口徹)たちがついてくるのは、晁蓋の人間性に惹かれているからだと思うんです。その人間味を大切にしつつ、彼自身の、偉くなっても前線で戦いたいという、男気みたいなところも表現できたらなと思いました。
亀梨:林冲が宋江と出会うシーンというのは特になく、物語が始まったときにはすでに、林冲と宋江の関係値は出来上がっています。ですので、林冲がなぜ宋江に心を打たれ、共に歩もうと決めたのかが伝わることを意識しました。また、槍の達人の林冲は「強さ」の代名詞的存在ですが、物語が進むにつれて見えてくる、林冲の奥底にある弱さみたいな部分も大事だなと思いました。強そうに見えて、よく見ると実はちょっとアンバランスというか、すごく際際(きわきわ)を歩いている男というか。その繊細さを意識しながら演じさせてもらいました。
——第1話で、大切なものを失うのも大きいですよね。
亀梨:そうですね。身分を偽るという危険を冒してまで、国に対する志を持って立っていた男が、それが原因で大切なものを失ってしまったので。
——織田裕二さんはどのように現場を引っ張っていたのでしょうか。カリスマ的な座長なのか、宋江のように抜け感のあるリーダーなのか。
反町:織田さんはもともとすごくフラットで、誰に対しても接し方が変わらない人なんです。立場的に上の人に対しても、若手の役者さんに対しても、みんなに優しくしてくれる方。その辺は宋江に重なるものを感じます。
——上から引っ張るというよりは、肩を組む感じ。
反町:そうです。
亀梨:僕は織田さんとは「初めまして」でしたが、本当にフラットに接してくださいました。
反町:話しやすいんだよね、織田さんって。先輩だと、例えば「今のタイミングで話しかけても大丈夫だろうか」みたいに、どうしても気を遣うじゃないですか。でも織田さんは、「いつでも話しかけて」という雰囲気なので、スッと(懐に)入りやすいんですよね。
亀梨:本当にそうでした。「みんな来い来い来いー。座れ座れー。大丈夫かー」という感じで、周りに気を使ってくださる。反町さんもそうですが、諸先輩方が「みんなで一つの作品を作ってるんだよ」という空気感を作ってくださるので、後輩も意見が言いやすい現場でした。
過酷な環境に負けない精神力と肉体
——実直なアプローチの作品だなと感じました。アクションシーンも、VFXを駆使してまるでアニメーションのように仕上げるアプローチの作品が目立つ中で、「水滸伝」は“盛らない”。だから、その人が丸出しになる。それは俳優にとって負荷が大きいことであり、やり甲斐だったと思うのですが、いかがでしたか?
亀梨:技術を使ってどうこうするのではなくぶつかっていく、というニュアンスは伝えられてはいたので、頑張りました(笑)。
——林冲は槍の達人です。やはり準備をたくさんしましたか?
亀梨:実は、事前に槍の練習をもっとやると思っていたんです(笑)。もちろん多少は練習しましたが、現場でしっかりと時間をかけながら撮影させてもらいました。反町さんは馬に乗るシーンが多くありましたね。
反町:僕は角川(春樹)さん(製作総指揮)の「蒼き狼 〜地果て海尽きるまで〜」というモンゴルロケの映画で、チンギス・ハーン役を演ったときに、4カ月ぐらい馬に乗っていた経験が役に立ちました。ただ、今回の現場はアクションや乗馬などの技術的なことよりも、とにかく撮影の過酷さに負けないように現場にいることが大変でした。雪山でのロケもそうですし、林冲はずーっと拷問を受けていましたし。
亀梨:長かったです(笑)。
反町:もちろんね、アクション、乗馬、刀を振り回すといった技術を習得することも大切ですし、やれて当たり前。それ以上に、過酷な環境に負けない精神力と肉体の両方を作っていくことが重要な現場だったと思います。
——雑な言い方をしますが、エキストラさんの人数が多いので、全てのシーンにおいて、その都度時間かかるわけですよね。
反町:はい。とにかく全部のシーンに時間がかかるんです。
亀梨:林冲は序盤で拷問されてかなり汚れるんですけど、拷問前の普通の状態を「林冲」、拷問後の状態を「お(汚)林冲」と呼んでました。スタッフさんが「今日はお林冲です」みたいな(笑)。なぜそういう共有の仕方をするかというと、お林冲はスタンバイ(メイクや衣装)に3時間以上かかるんです。日が昇った頃に、全ての準備が整った現場に我々が入るとしたら、メイクさんたちは、何十人、何百人のエキストラさんのメイクを、夜中の2時、3時から作っているわけです。それを考えると気持ちが入ります。
——衣装といえば、晁蓋の托塔天王バージョンの衣装がとても素敵です。
反町:現場では「コスプレ」と言ってました(笑)。
亀梨:どういう経緯でああなったんですか? デザイン画とかありました?
反町:ありました。専門の人が「托塔天王はあの衣装」ということで作ってくれて。衣装合わせで初めて見たときは「これを着るのか!!」とびっくりしました(笑)。
亀梨:反町さん、青色が似合ってかっこよかったです。
——仮面で顔が隠れているカットも全て、反町さんが演じている?
亀梨:全シーン反町さんです。
反町:仮面を被っている場面を他の人が代わりにやってくれるなら、最高ですよ(笑)。
——そのあたりも、やはり実直な作品だなと思います。
亀梨:ワンカットワンカット、全てにおいて、撮影チームの皆さんがそういうスタンスでした。照明部さんと撮影部さんが、「あと30分待っていいですか? この木の影が(画角に)ちょうど入るので、待ちたいです!」と粘ったこともありました。全スタッフが理想を追求しようとする現場でした。
「水滸伝」で得た経験
——「水滸伝」は歴史物、しかも中国の時代劇なので難しそうだと思っている人が少なくないと思います。 私も「水滸伝」は初体験なのでついていけるか心配でしたが、ストーリーがシンプルで、キャラクターがみんな立っていて、異国情緒も含めて非常に楽しみました。
反町:時代劇は、昔はテレビをつければ放送されていましたが、今はほとんどなくなってしまったから、とっつきにくく思う人もいるんでしょうね。でも、時代劇だからこそ描ける人間関係や膨らみみたいなものは、現代でも忘れてはいけないことだと思うので、「水滸伝」を気にかけてくれたらいいなと思います。
亀梨:すごくストレートなメッセージ性のある作品だと思います。登場人物もたくさんいますが複雑ではないですし、しっかりと構築された人間模様が深みになっているとも思います。まずは力を入れずに見てもらって、どんどんどんどんのめり込んでいってくれたら嬉しいです。
——魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、自分以外の役でお気に入りはいらっしゃいますか?
亀梨:皆さん、李富(りふ:玉山鉄二)が好きですよね。
反町:そうそう。我々は「李富がいいね」と言ってます。
亀梨:いいですよね。
反町:ちょっとミステリアスな、悪の感じがすごくいいですね。(演じる上で)いろいろ楽しみようがありそうです。他にいる?
亀梨:楊志(ようし:満島真之介)も、パッと出現する感じがかっこいいです。
反町:公孫勝(こうそんしょう:白洲迅)は?
亀梨:公孫勝はかわいいです(笑)。
反町:セリフがないから(笑)。
亀梨:たまーに長台詞がある(笑)。加藤清史郎の阮小五も、若さゆえの魅力あるキャラクターです。一緒にお芝居をするシーンが多かった白勝(はくしょう:柄本時生)もかわいかったです。
反町:でも、我々の結論は李富ということで。
亀梨:はい(笑)。
——「北方謙三 水滸伝」を経験したことで受けた刺激はありますか? そして人として、俳優としての変化は感じますか?
反町:若松節朗監督と今回初めてご一緒できて、すごく楽しかったです。男くさい感じ、泥臭い感じがすごくいいなあと思いました。
亀梨:僕は監督をはじめとするスタッフやキャストの皆さんのこの作品に対する想いや熱量、責任感というものに触れながら、現場にいられたことが大きな財産です。これだけのスケールの撮影はなかなかないと思います。今後「雪山行きますよ」と言われたら「はい」と即答できるくらいの経験はさせていただきました(笑)。
——「撮影期間が長いんですけど……」と言われても?
亀梨:「8カ月くらいなら全然大丈夫ですよ!」(笑)。
出演作品を選ぶ上で大切にしていること
——最後に、出演作品を選ぶ上で大切にしていることをお聞きしたいです。今回は熱烈に口説かれたということですが。
反町:タイミングが大きい気がします。自分自身の中の「どういう芝居をしたいのか」「どういう内容をつかみたいのか」というマインド状態に、たまたまドンピシャで合うお話をいただくことがあるので。だけどやはり、今回のWOWOW大原さんのように、作り手側に「こういうものを作りたい」「こういうアプローチをしたい」という明確なものがある作品で、オファーをいただけたらうれしいです。しっかりとしたものがあれば、俳優としては、そこに自分がどうやって乗っかるかという楽しみがありますから。
亀梨:長いこと所属させてもらっていた大きな会社では、巡り合わせや出会いにおいて、会社の皆さんが考え、導いてくれました。環境が変わった今は、ありがたいことにいろいろなお話をいただく中で、タイミングとご縁を一番大事にしています。今後は選択肢や優先順位が変わっていくかもしれないですが、今は自分の「こういうことをやりたい」「ああいうことをやりたい」よりも、「あ、今こういうことを求めていただいてるのか」ということを感じながら、物理的なものがいろいろかみ合う作品にチャレンジさせてもらっています。
PHOTOS:TAKUYA MAEDA(TRON)
STYLING:[TAKASHI SORIMACHI]TSUYOSHI NIMURA(hannah)、[KAZUYA KAMENASHI]MIHOKO SATO
HAIR & MAKEUP:[TAKASHI SORIMACHI]INOMATA(&’s management)、[KAZUYA KAMENASHI]KOICHI TOYOFUKU(good)
連続ドラマ「北⽅謙三 ⽔滸伝」
◾️連続ドラマ「北⽅謙三 ⽔滸伝」
2月15 日からWOWOW・Leminoで毎週日曜22時より放送・配信
全7話
出演:織⽥裕⼆/⻲梨和也、満島真之介、波瑠・松雪泰⼦(特別出演)、佐藤浩市(友情出演)・⽟⼭鉄⼆/反町隆史
原作:北⽅謙三「⽔滸伝」(全⼗九巻/集英社⽂庫刊)
監督:若松節朗、村⾕嘉則、佐藤さやか
脚本:藤沢⽂翁
⾳楽:村中俊之
主題歌:「夜を渡る鳥」MISIA(ソニー・ミュージックレーベルズ)
エグゼクティブプロデューサー:⻄憲彦(WOWOW)
プロデューサー:⼤原康明(WOWOW)、古屋厚(ROBOT)、森安彩(共同テレビジョン)
制作プロダクション:ROBOT
製作著作:WOWOW NTTドコモ
©北方謙三/集英社 ©2026 WOWOW/NTT ドコモ
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