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俳優・森田剛が挑む舞台「砂の女」 なぜ今、舞台に立ち続けるのか?

PROFILE: 森田剛/俳優

PROFILE: (もりた・ごう)1979年2月20日生まれ、埼玉県出身。2005年、劇団☆新感線の「荒神~Arajinn~」で舞台初主演を務めて以降、数々の舞台、映像作品に出演。近年では、舞台「空ばかり見ていた」(19)、「FORTUNE」(20)、「みんな我が子」(22)、「ロスメルスホルム」(23)、「台風23号」(24)、「ヴォイツェック」(25)など多数出演。主な映画出演作には「ヒメアノ~ル」(16)、「前科者」(22)、「DEATH DAYS」(22)、「白鍵と黒鍵の間に」(23)、「劇場版 アナウンサーたちの戦争」(24)、「雨の中の慾情」(24)などがある。

安部公房の小説「砂の女」が、森田剛主演で舞台化される。森田が演じる人物は、教師の男。昆虫採集のために海際の砂丘を訪れた男は、深い穴の底にある奇妙な民家に泊めてもらったところ、村人たちの策略によりそこに閉じ込められてしまう。民家に1人で暮らす女(藤間爽子)と、家が砂で埋もれないように毎日砂かきをして共同生活を送る男は、そこからの脱出を試みるが……。脚本・演出を手がけるのは、映画、ドラマ、舞台など幅広いフィールドで精力的に作品を発表している山西竜矢。毎年のように主演舞台に挑む森田に、この作品に挑戦する理由と、舞台に立つ意義を聞いた。

演出・山西竜矢との関係

——今回、舞台「砂の女」のオファーを引き受けた理由から教えてください。

森田剛(以下、森田):演出の山西さんとは面識があって。山西さんとは、映像なのか舞台なのかは分からないですが、いつかなにかやりたいなと思っていたところで、今回、舞台「砂の女」をやりたいと声をかけていただきました。「砂の女」は映画(※1964年公開)を見たことがあって、好きな映画だったので、「じゃあぜひ」ということで始まりました。

——山西さんとはどのように知り合ったのでしょうか。

森田:何年か前に長久允監督と作った「DEATH DAYS」(2022年公開)という映画で、メイキングというか、撮影の裏側を山西さんに撮ってもらいました。その恩もあります。裏側をずっと撮ってもらっていたので、自分がどういう人間なのか、どんな芝居をするのかをもちろん知ってくれていたし。山西さんの現場の居方や、人の捉え方にすごく興味がありました。

——「DEATH DAYS」で山西さんにメイキングをお願いしたのはどなたの意向ですか?

森田:僕と長久さんです。

——気になってらっしゃったんですね。山西さんはどんな方ですか?

森田:面白い人です。なんかね、こじらせてる感じです。すごくピュアで、人のことをすごく斜めから見ている感じもするし。人との距離感が面白かったです。すごく遠いところから人を見ているときもあるし、気づいたらこの距離(真横)にいるし。

——カメラを回す距離が?

森田:いや、カメラマンは別にいて、山西さんはディレクション担当でした。

——森田さんがこれまでに会った演出家やクリエイターの中でも一際こじらせているということですよね。

森田:この世界、こじらせている人はいっぱいいますが、その中で自分と合うか合わないかということだと思うんです。山西さんは、合ったんでしょうね。今回声をかけていただいたということは、一方通行じゃなかったということなので、うれしいです。

「共演者が輝いてほしい」

——(舞台「砂の女」の)台本を読んだ感想と、現状でイメージしていることを教えてください。

森田:小説のままの世界観に、山西さんの具合がどれくらい入るのかなと思いましたけど、僕はまだ何も考えてないです。山西さんがこの舞台でやりたいことや、こういう感じで考えているというのは聞きました。映画を撮っている人だから、映像を使ったりするんじゃないでしょうか。

——砂をどう表現するのかな、と想像しました。

森田:本物の砂は使わないと思いますが、それもすごく演劇的というか。でも、使ってもいいし、使わなくてもいいし。

——森田さんにとって、楽しみな要素やチャレンジだなと感じる要素はありますか?

森田:(共演者が)全員初めましての人なので、それが楽しみです。山西さんとどういうふうに作っていけるのかも楽しみです。(稽古が)始まってみないと分からないですけど、ワクワクはしています。

——作品を選ぶ基準はありますか?

森田:その「ワクワク感」だと思います。毎回何かが引っ掛かるんですよね。今回は山西さんと、「砂の女」という題材にワクワクしました。

——一つ前の舞台「ヴォイツェック」の場合は?

森田:(演出家の)小川(絵梨子)さんとやってみたいなというのが最初の引っ掛かりでした。

——森田さんはベテランとまではいかないにしても、中堅で、影響力のある俳優です。自分の仕事により、山西さんのような若い才能を世に出したいという意図はありますか?

森田:全然ないです。ただ、ちょっと違うんですけど、共演者が輝くことは考えているかもしれません。「ヴォイツェック」では相手役の伊原(六花)さんがたぶん20代で、今回の藤間(爽子)さんもたぶん20代で。作品の中でキーになる役なので、見た人が彼女たちを「いいね」と思ってくれないと、作品が成立しないなということは意識しています。ものを作っていく中での(共演者との)関わり方を変えなきゃいけないなと思っていたこともあって。

——「変えなきゃいけない」と思ったのはなぜでしょうか。

森田:それだけ年が違うと、人間的に感覚が違うんです。(40代以上の)サラリーマンの方も経験されていると思いますが、20代の人とは会話が噛み合わないというか、通じない(笑)。悪い意味ではなくて。そういう人たちとものを作ったり向き合ったりすると、僕はすごく勉強になるんです。こっちが諦めてしまったら何も生まれないと思いますし。そういう人たちとどう関わっていくのか、自分がどういう立ち回りをしたらいいのかというのはすごく考えます。

——それが自分のアップデートや成長につながりそうです。

森田:それもあると思いますけど、全ては作品のためですよね。ざっくり「20代」と言ってしまったけれど、20代でもいろいろな人がいるので、そこもこっちがチューニングしていかなきゃいけないことだと思います。自分が若いときだったら、自分のことだけ考えてがむしゃらにやって、それを見たちょっと上の先輩が「あ、こいつがこんな必死こいてやってるんだったら、手を貸してやろう」みたいな感じでチームができていたと思うんです。今の自分が若い頃のようにがむしゃらにやっても、20代や10代の子はそもそも俺を見ていないという可能性があって(笑)。例え話ですけど、「見てるなー」と思いながら俺がやっていて、振り返ったら「見てねえわ」ってなったときには、(チームづくりとして)もう遅いんです。ゴールに向かって進んでいるから(時間が足りない)。だから、あらかじめ「若い子は俺のことを見ていない」という意識を持ちながら、自分から振り返って接しないといけないなというのは考えます。

——座長として、実際にどのようなコミュニケーションをとるようにしていますか?

森田:自分から「どう?」って聞いたりします。向こうは向こうで俺に対して「通じねえな」と思っている可能性もあるので(笑)、「俺はこう思う」と自分の意見を言って、(相手の意見も)聞く。関わっていくことをこっちが諦めないことですね。

演技をする上で大切にしていること

——森田さんにとって、舞台に立つ意義とは。

森田:舞台も映像も同じで、呼んでいただいたからいく、というスタンスです。あとは勉強になるということですかね。ふだん経験できないことをさせてもらえる場所なので。舞台をやっていると、経験として自分の中に刻まれている感じがあるんです。まあ、好きというのもありますし。

——どんなところがですか?

森田:役について深く考えられるし、それを試せるし、人とも深く関われるという意味で好きなんだと思います。

——演技をする上で森田さんが大切にしていることをお聞きしたいです。

森田:一生懸命やる。そのときそのときできることを全力でやる。シンプルだけど難しいですよね。

——「砂の女」もそのスタンスで。

森田:とにかく頑張るということですよね。全力を出す。それ以上ないです。なかなか出せないんですよ、全力って。ストッパーがあるから。みんな、自分の中にあるんじゃないですか? これを外さなきゃいけないんですよ。そもそも、初めましての人と芝居をすること自体、めちゃくちゃなことじゃないですか。恥ずかしさもあるし、怖さもあるし。そういうストッパーを毎回外すということをしたいです。

——外した先にはどんな世界が待っているのでしょうか。

森田:外したから感じられる喜びがあります。でも傷つくし、悔しい気持ちにもなります。いいことも悪いこともいろいろあるけど、それを自分で感じにいってるんですよね。で、(自分から感じに)いくから学びもある。だからまずはストッパーを外す。外さないことにはそういう経験もできないので。自分は経験が何よりも好きだし、自分のためになっていると思います。だから人から聞いたことや、噂話や、人伝てみたいなことに、あまり興味がないんです。自分が経験したことや見たことを信じてやりたいし、そういうのが好きなんだと思います。

「言われる人」でい続ける

——映画、ドラマ、舞台はご覧になりますか?

森田:ほぼ見ないです。だから(映画の)「砂の女」をいつ見たのかも、なんで見たのかもまったく覚えてない(笑)。自分から積極的に情報をとりにいかないから、知り合いの人が出てるという話が入ってきたら、「じゃあいこうかな」となるけれど、それがないとまったく見ない。家でテレビや映画を見ることもないし、音楽も聞かないし。エンタメと言われているものをまったく入れてない。好きじゃないのかなあ(笑)。

——(笑)。お芝居の勉強をしたこともないんですよね?

森田:だから舞台に出ることが勉強になります。そこで得られるものが大きいし。もちろん緊張も怖さもあるから。普段こんなんじゃないですか。なにも見ないし勉強しないから、舞台でグッと吸収します。「じゃあなんのためにやってんだ」となっちゃうから。

——共演者の皆さんで「あの作品見た?」という会話になりますよね?

森田:だいたい入れないです。映画の話とかされると、ただ時が経つのを待つ(笑)。

——(笑)。趣味はありますか?

森田:植物が好きです。あとはゴルフとスノボぐらいですかね。それはこれからも引き続きやっていきます。

——2025年を振り返り、印象に残っている出来事をお聞きしたいです。

森田:何も残ってないです。終わっちゃったらもう、消えていくだけなんで。(「モススタジオ(MOSS STUDIO)」の)ポップアップも「やったなあ〜」とは思いますけど、もう過ぎたことですし。「ヴォイツェック」は終わったばかりだから残ってるんですけど、時間が経てば自分の中で消えていくし。記憶もそうですけど、時間と共にだんだん薄れていく感覚です。

—諸行無常という言葉がよぎりました。では、物質の話を。2025年に買って一番よかったものは?

森田:「アンブロ(UMBRO)」のセットアップはよかったですね。「モス(スタジオ)」でコラボした。4色あって、自分では黒とカーキを買ったんです。それなのによく着るのは、いただいた紫なんです。買うときは、紫は着ないだろうなと思ったのに、意外と着ちゃうっていう。だから、自分の感覚なんて信じちゃダメってことですよね(笑)。自分の感覚で選ぶことも大事だけど、人から与えられるものも大事だなって、アンブロに教わりました。流されることも大事だなって。

——分かるような気がします。「アンブロ」以外でありますか?

森田:洋服は好きだからちょこちょこ買うんですけど、何がよかったかな…。スエットの上下かな。ボリューム感と褪せ具合が。

——楽な格好が好きなのでしょうか。

森田:そうですね。肩こりがひどいので、重い服は好きじゃないです。だいたい肩が凝るか凝らないかで服は選びます。「アンブロ」もそうです。軽くてあったかくて肩が凝らない(笑)。

——では、26年に挑戦したいことはありますか?

森田:何かあったんですけど。なんだったかな…。

——ぜひ思い出してほしいです(笑)。

森田:せっかくですから宣言したいですよねえ。(しばらく考えて)でも、出てこないってことは、たいしたことじゃなかったのかもしれないですね(笑)。たぶんもうね、この先の人生でやりたいことなんて、自分からは出てこないと思うんです。趣味もあるし。強制されないと、新しいことはやらないと思うので、2026年はそれを待っています。

——紫の「アンブロ」のように。若い頃は無茶なことをいろいろやらされて失敗もしますが、年齢を重ねると、周りから「お前、これやってみろ」と言われにくくなりますよね。人からお誘いを受けたり、お題を与えられる年の取り方ってすごく素敵だなと思います。世界が広がるので。

森田:いいですよね。人に言われなくなったら本当にね。

——森田さんはどういう状態ですか?

森田:両方あると思います。言われなくなってるなーという感じもあるし、ありがたいことに言ってくれる人もいるんで。そういうふうに「言われる人」でいなきゃなって思います。

PHOTOS:TAKAHIRO OTSUJI
STYLING:SO MATSUKAWA
HAIR & MAKEUP:TAKAI(undercurrent)

ジャケット 7万7000円/ノンネイティブ( the nonnative shop 03-5728-5691)、パンツ 6万6000円/カル(カル 03-6441-3661)

舞台「砂の女」

◾️舞台「砂の女」
原作:「砂の女」安部公房
脚本・演出:山西竜矢
キャスト:森田剛 藤間爽子 大石将弘 東野良平 永島敬三 福田転球
企画・制作:レプロエンタテインメント
製作:「砂の女」製作委員会
協力: Abe Kobo Official through Japan UNI Agency, INC.
©1962 安部公房
https://stageoffical.com/sunanoonna/

【東京公演】
公演日程:2026年3月19日~4月5日
会場:紀伊國屋ホール
主催:「砂の女」製作委員会
提携:紀伊國屋書店

<チケット発売スケジュール>
主催先行:1月22~26日
プレイガイド先行:1月29日~2月2日
一般発売:2月7日~
チケット料金:全席指定1万1000円

【仙台公演】
公演日程:2026年4月8日
会場:電カホール
一般発売:2月7日~
チケット料金:全席指定1万1000円

【青森公演】
公演日程:2026年4月11日
会場:SG GROUPホールはちのへ(八戸市公会堂)
主催:青森朝日放送、ニイタカプラス
共催:アート&コミュニティ
一般発売:2月7日~
チケット料金:全席指定S席1万1000円、A席7700円

【大阪公演】
公演日程:2026年4月18〜20日
会場:森ノ宮ピロティホール
主催:「砂の女」大阪公演事務局
一般発売日:3月15日~
チケット料金:全席指定1万1500円

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