ファッション
2025年ヘビロテ私物ベスト3

スタイリスト・濱本愛弓が選ぶ、2025年本当に使い倒した私物ベスト3

PROFILE: 濱本愛弓/スタイリスト

PROFILE: (はまもと・あゆみ)1988年1月6日生まれ、大阪府出身。2014年からアシスタントを経て、18年に独立。現在はモード誌をはじめ、さまざまなメディアやブランドでスタイリングを担当。エッジの効いた強さの中に、計算されたシルエット選びと肌見せで女性らしさを忍ばせる。その絶妙なバランス感覚に、業界にもファンが多い。

ファッション&ビューティの現場で活躍する注目の“あの人”に、2025年リアルに使い倒したアイテムベスト3を聞く年末の特別連載。その選択には、今の価値観とムードがはっきりと表れる。

第7回は、人気スタイリストの濱本愛弓が登場。仕事と生活――その両方を行き来する多忙な彼女が、2025年に本当に使い倒した3つの私物を語ってくれた。そこに浮かび上がるのは、母になった今の視点、変わりゆく美意識、そして「自分らしさ」への揺るぎない信頼だ。

濱本愛弓が選んだベスト3

BEST1:
強さをそっと添える「ドルセー」の香水

――今年1年で、毎日のように使った相棒は?

濱本愛弓(以下、濱本):1番使ったのは、毎日身につけていた「ドルセー(D'ORSAY)」の香水です。愛用している“インセンスクラッシュ”は、スパイシーでウッディ、さらにレザーが調和したような香り。ちょうど24年の今頃から使い始め、自分の香りとして定着してきました。

――残量も半分以下で、リアルに愛用していたことが分かります。香水をまとうのはどんなシーンですか?

濱本:私の中で、香水とジュエリーはオン・オフの気分のスイッチになるもの。なので、仕事に行く前に必ずつけていて。香りって、目には見えないけれど、その人を印象づけるすごく大切な要素だと思うんです。

スタイリストとして独立したばかりの頃、強く見せるための“鎧”として、少し重くてスパイシーな香りを取り入れていて、それが今では自分の定番になりました。当時は金銭的に余裕もなかったですが、香水は無理してでも買うものという意識がありましたね。

――つけ方のこだわりはありますか?

濱本:つけ方はシンプルで、左右の手首にワンプッシュずつ吹きかけてなじませます。体温と合わさって、どんどんその人だけの香りになっていくのも香水の好きなところ。

この“インセンスクラッシュ”もオリエンタルで妖艶な印象がありながら、肌に溶け込むとふんわり上品に香ってくれます。周囲から、「どこの香水?」って聞かれることも多いんです。

BEST2:
ゴールドが効いた「ミュウミュウ」のバッグ

――使い倒したアイテムベスト2を教えてください。

濱本:ミュウミュウ(MIU MIU)」の“アバンチュール ナッパレザー バッグ”。もともとスモールバッグを持つことが多かったのですが、昨年秋に娘が生まれてからは、必然的に大きなサイズを選ぶように。このバッグは、ビンテージっぽいゴールドのパーツがとにかくかわいい。今日のスタイリングのように、ゴールドバックルのベルトと合わせて、リンク感を出すのにハマっています。

――バッグを選ぶときに、気にしているポイントやこだわりはありますか?

濱本:かわいいデザインを一番重視しているので、機能性は正直あまり重視していないかも。必要な荷物が収まるかはもちろんチェックしますが、細々とした小物類はポーチに分けて入れるので、収納スペースの多さや使い心地は気にしないんです。

――では、このバッグを使ってみて感じた魅力は?

濱本:ラムレザーなのでで、使い込むうちに柔らかさが増して、くたっとしてきたところ。あとは、持ち手が短すぎず肩掛けしやすいのも、使いながら実感した良さですね。

――じゃらじゃら揺れる、キーチェーンも印象的です。

濱本:まず目を引くのは、友人の彼がつくってくれた娘と愛犬の写真のチャーム。ほかには、パリで買ったエッフェル塔のキーチェーン、お土産でいただいたストラップなど、好きなものがここにぎゅっと詰まっています。バッグ自体がシンプルなので、遊び心を足したいときにつけたりしますね。

BEST3:
パンツを解体した「ホダコヴァ」のジャケット

――では、ベスト3は?

濱本:3つ目は、「ホダコヴァ(HODAKOVA)」のジャケット。25年春夏のコレクションを見てからずっと気になっていて、今年の秋頃にファーフェッチ(Farfetch)で購入しました。

――どんなところに惹かれたのでしょうか。

濱本:「ホダコヴァ」は、アップサイクルした布地やファッションピースを用いて、デザインを再構築しているブランド。このジャケットも、パンツを解体して作られているんです。今までジャケットと言うと、キレイめな形を好んで着ることが多かったんですが、こういうメンズライクでちょっと野暮ったい感じも新鮮でいいなと思い、手に取ってみました。

――濱本さん流のスタイリングアイデアは?

濱本:アイテムが持つ雰囲気にド直球なスタイリングよりも、エレガントに昇華させるほうが好き。なので、ともするとワークやストリート感のあるジャケットですが、自分が着るなら足元はヒールがマストです。細身のスラックスやペンシルスカートなど、タイトなボトムスと合わせたいですね。

「ホダコヴァ」のコレクションでは、同素材のスカートとのセットアップで提案されていて、黒のベルトで引き締めていたのがすごくすてきだったんです。それを見て、私も黒のベルトを通して着るようにしています。

――サイズ感へのこだわりや着方のコツはありますか?

濱本:ビンテージにもありそうな作業着っぽいデザインですが、このミニマムなシルエットは新品だからこその魅力だなって思うんです。オーバーサイズをがばっと着るのもいいですが、コンパクトなサイズをモダンに着こなしたくて、XSサイズを選びました。

このジャケットは、高い襟もポイント。首元のシルエットをよりおしゃれに見せるため、髪を短く切りました(笑)。ヘアスタイルを変えるきっかけにもなった1着です。

母になっても「自分らしいファッションで」

――25年を振り返って、どんな1年でしたか?

濱本:昨年の10月に娘が生まれたので、今年はお母さん1年目。彼女の成長に驚かされたり、彼女を通して自分自身の人生を振り返らせてもらったり、学びが多い日々でした。自分が幼い頃の記憶って、全て残っているわけではないじゃないですか。でも、産まれた瞬間からその人生を見させてもらえる、そんな存在ができたことは、すごくワクワクすることだなぁと感じています。

――お子さんが産まれてから、ご自身のファッションやスタイルに変化はありましたか?

濱本:荷物が増えるので必然的にバッグは大きくなりましたし、スニーカーを履く回数もぐっと増えました。けれど、以前と同じように、好きな服を好きなように着ることは変えていません。白いシャツを着て娘を抱っこすることもあるし、汚れたら「クリーニングに出せばいいじゃん」という感覚です。

――お子さんがいると、ファッションの幅が狭まることに悩む方も多いと思うのですが、濱本さんは自分の好きを貫いているんですね。

濱本:そうですね。小さな子どもがいても、自分の気分が上がるものをちゃんと着ていたいなって思うんです。なので、自分のスタイルはそのまま、何も変わりません。最低限のTPOはもちろん考えますが、自分らしくいられる服を着て、堂々と自信を持って過ごしている私の姿に、いつか娘が何か感じてくれたらいいなってひそかに思っています。

2026年の気分は、ベーシック

――26年春夏のファッションで、濱本さんが注目しているのは?

濱本:コレクションのトピックスでいうと、26春夏からのデザイナー交代が印象的でしたね。特に心を掴まれたのは、マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)による新生「シャネル(CHANEL)」のショー。これまでよりも削ぎ落され、モダンに変わったデザインは、どれもすごくすてきでした。中でも、ジャケットが気になっています。

――濱本さんがオーダー済みの26年春夏のアイテムがあれば、教えてください。

濱本:2色買いしたのは、「オーラリー(AURALEE)」のレザートングサンダルです。前シーズンもそうだったのですが、春夏は足元に抜けをつくるのが気分。かちっとしたヒールではなく、トングサンダルを合わせる感じがいいなと思っていて。形はカジュアルですが、レザーなので都会的な雰囲気に。黒か白で迷った末、履きやすく何より合わせやすそうだったので、2色とも購入しました。

――ミニマルなデザインが、濱本さんの最近の気分なのですね。

濱本:そうなんです。ここ数年、洋服はブラウンやグレー、ベージュ、ネイビーといった、今まで選ばなかった色をたくさん着るようになりました。もともと「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」が好きなこともあり、派手な柄や明るい色もよく着ていたのですが、いつの間にか落ち着いた色ばかりを手に取る自分に気づいたというか。

年齢を重ねるほどに、その人自身にしかない深みや奥行きが生まれていきます。そう考えるようになってから、スタイリングも少しずつシンプルに、自分だからこそにじみ出るかっこよさを目指したいと思い始めたのかもしれません。

――最後に、来年の目標や今後チャレンジしたいことはありますか?

濱本:今年1年、家族の協力に本当に支えられて、スタイリストとしても変わらずたくさん仕事をすることができました。来年は海外での仕事のお話もあり、娘と数日離れることへの不安は正直ありますが、楽しみも大きく、少しずつ挑戦していけたらと思っています。まだ先の話かもしれませんが、またパリコレの空気を現場で感じられたらうれしいですし、いつか娘と一緒に、イタリアやコペンハーゲンを旅するのも夢のひとつです。


CREDIT
PHOTOS:TAMEKI OSHIRO

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