企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は過去最高業績をマークした良品計画を解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年12月8日号からの抜粋です)
2024年11月に良品計画の社長が、ファーストリテイリング出身の堂前宣夫さんから生え抜きの清水智さんになって1年がたちました。今回は良品計画の現在地について紹介します。
直近15年の売上高と営業利益の推移を見ると、コロナ禍で落ち込みましたが、基本的には伸びています。
20年2月期までは2月決算でしたが、そこから決算期変更があり、21年から8月期になっています。営業利益率は19年2月期までは10%前後で推移してきましたが20年2月期で8%台に落としています。20年に米国子会社をチャプター11申請し、再生手続きをしています。コロナ禍の影響も大きい時期の変則決算でした。
21年7月に社長に就任した堂前さんのミッションは売上高を2ケタ成長に戻すこと、そして営業利益率を10%台に回復させる基盤を作ることだったようです。堂前さん体制の4期は、売上高は2ケタ成長を維持し、国内と東アジアの利益率が改善し、欧米事業を再構築して黒字化し、成長の“土台作り”が進みました。そして25年8月期の好業績の見通しが立ち、清水さんへのバトンタッチとなったと思われます。実際に25年8月期連結決算は、売上高に当たる営業収益は7846億円(前期比18.6%増)、営業利益は738億円(同31.5%増)。売上高・営業利益共に過去最高を更新しました。
地域別の売上高を見ると、国内が大きく伸びていることと、中国を中心とした東アジアが伸び続けたというのが特徴です。大きな要因としては、まず出店です。既存店は1ケタの伸びですが、25年8月期でグローバルで107店増やしています。中でも国内は60店舗増えています。特に郊外型の大型店を、スーパーやドラッグストアと同じようなNSC(近隣商圏型ショッピングセンター)立地に出す戦略が成功しているとのこと。国内の店舗数は683になっています。他は東アジアで30店増、中国で24店増、東南アジア・オセアニアで19店増。欧米では2店減ですが、不採算店の閉鎖が完了し、26年8月期から出店を再開するそうです。
「ヘルス&ビューティー」がけん引
それと、「ヘルス&ビューティー」カテゴリーの躍進です。良品計画は19年8月期までは細かいセグメント開示をしていて、同期の最大カテゴリーは「婦人服」でした。清水さんは商品部時代「ヘルス&ビューティー」をけん引していた人物です。当時から「ヘルス&ビューティー」は勢いよく成長していましたので、翌年には「婦人服」を抜いたと予想されます。堂前さん時代においても重点カテゴリーになっており、国内の年間売上高は3年間でほぼ倍増し、1000億円を超えています。
加えて、「食品」にも注力して伸ばしています。特に日本のお菓子は海外で人気が高いです。
利益で見ると、国内は1度低迷したものの22年8月期を底にV字回復し、東アジアは順調に拡大。欧米はコロナの影響で赤字でしたが、スクラップ&ビルドで黒字化しました(良品計画は、「グローバル販管費」を別立てで管理し、地域の損益計算書に配賦しない特殊な方式を採用)。
良品計画は24年5月に三菱商事ファッションの一部門を取得しましたよね。衣料品の開発・生産体制強化の一環ですが、これによって仕入れ原価率が下がったそうです。その一方で「無印良品週間」での購買が集中して「粗利率が上がり切らない」という課題も指摘されています。
28年1月期に売上高1兆円、営業利益1000億円、営業利益率10%を達成するという目標を掲げています。そのために全社の生産性改善強化というのが挙げられていて、委員会を立ち上げると書いてあります。具体的な施策についての明記はありませんが、確かに現状の数字を見ると伸び代は大きいです(下記グラフ参照)。
国内無印良品直営店と国内ユニクロ事業直営店比較
〜無印良品の生産性と販売効率の伸び代〜
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