「トーガ(TOGA)」は英国現地時間9月20日、2026年春夏コレクションを発表した。テーマは「ORDINARINESS, MEDIOCRITY, VERSATILITY(平凡さ、凡庸さ、汎用性)」。古田泰子デザイナーは「今季は難しいことを考えすぎず、単純な服作りに立ち返りたいと思った」と語る。
出発点となったのは、彫刻家クレス・オルデンバーグ(Claes Oldenburg)のインタビュー番組だ。アイスクリームやコンセント、スプーンなど、日常にありふれたモノを巨大化させる作風で知られるオルデンバーグ。彼の言葉から古田デザイナーは、「シンプルなモノは、いかに予想外でユニークな存在になり得るのか」という問いを得た。
シャツと膝上丈のスカートの合わせなど、ごくごくシンプルな装いをベースにしながら、繰り返し登場したのは、ボトムスに取り付けられた控えめに波打つラッフル状の布パネル。まるで小さなトレーンのように後ろへ流れ、“凡庸性“に”意外性“を加えている。ボタンで取り外し可能な仕様で、今季のキーワードである“汎用性“も体現する。
シャツの袖をたくし上げたようなディテールや、さまざまなルックに散りばめられたどこか懐かしさを感じさせるフローラルプリントは、“平凡さ“に軽やかなユーモアを添える。無骨なバックルのベルトと華奢なベルトを重ね付けするスタイリングや、シャフトを大胆に余らせたブーツなど、エッジの効いたアクセサリー使いが、「トーガ」らしさを完成させた。
「NTS」とのコラボティザーも
そんなコレクションに差し込んだのは、古田デザイナーが毎朝聴いているというイギリス発の音楽ラジオ「NTS」のロゴを配したTシャツ。プレコレクションでは、「NTS」とのカプセルコレクションを控えていると明かした。
ありふれた服を出発点にしながら、小さな仕掛けで変化を加え、凡庸でありながら個性的という矛盾を成立させた今季の「トーガ」。凡庸であることを否定しない、むしろその中にある面白さを引き出す古田デザイナーの視点は、素直に「着たい」と思わせるコレクションだった。