ファッション

新体制の第一織物、ナイロン軸の自社開発で春夏シーズンを強化 ニッケ協業の新素材も

テキスタイルメーカーの第一織物(福井県坂井市、中川浩孝社長)は9月10〜11日、6年ぶりの単独展示会を開催した。「高密度のかたち」をテーマに、代表的なテキスタイルブランド「ディクロス(DICROS)」のサステナブルの提案に加え、ニッケグループとの協業によるハイブリッド素材など、最新の取り組みを披露した。

会場では、第一織物が注力する「糸」「織り」「素材」の3軸にフォーカスしたテーマ別の新作を展示。「Shadow Texture」と呼ぶ独自開発の糸は、リサイクル原料を使ったナイロン100%でありながら、シルクのような光沢感となめらかさを特徴とする。“かすり”の技法を生かした独特の陰影感を持たせることで、奥行きのあるテクスチャーに仕上げた。織りの進化を示した「Expressive Constructure」では、高密度素材の表面に凹凸の織組織を加えることで、清涼感と上品さを兼ね備えたテキスタイルを見せた。「Wool Mixture」では、ニッケグループと初の本格協業によるウール混テキスタイルを発表。経糸に第一織物の合繊糸、緯糸にニッケ独自の高機能ウール糸“ニッケ・アクシオ(NIKKE AXIO)”を組み合わせ、ナチュラルな毛羽感と合繊ならではのなめらかさを強みとする。

春夏を強化&主力素材のサステナ化

こうした新素材を軸に、春夏シーズンに向けた商材企画を強化し、従来6割以上を占めていた秋冬との売上比率を半々に近づけたい考えだ。近年の暖冬でダウンジャケットや重量アウターの需要が鈍化するなか、軽量で発色に優れるナイロンにあらためて注目。ポリエステルに比べ、環境配慮に関する証明や基準がまだ厳格に求められていない点にも注目し、軽量アウターを中心にテキスタイル開発の新たな可能性を探っている。

サステナブルの観点への強化でいうと、主力ブランドの「ディクロス」はリサイクル原料やバイオ由来原料、フッ素フリー加工などを取り入れた素材を打ち出す。スポーツウエアで培った高密度製織技術を活用しながら、ファッション性の高いアイテムへの提案を広げていて、リサイクル原料を用いたナイロン100%の素材は、若者に人気の「セシリー バンセン(CECILIE BAHNSEN)」のアウターにも採用されている。

第一織物といえば、「モンクレール(MONCLER)」や「プラダ(PRADA)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などの海外ブランドに、ダウンジャケットを始めとした重衣料の生地を供給してきた日本を代表するメーカーの一つだ。2020年に毛織物大手、日本毛織(ニッケグループ)にグループ入り。23年に中川浩孝社長を招へいし創業75年の家族経営から脱却。また同年には、オリジナルテキスタイルを1mから販売するB to B向けECサイトを開設し、現在までに約600社が顧客登録している。

今回の展示会は、新体制の指針を示す場としての意味合いも強く、会場では福井の自社工場での生産背景を撮影した映像を公開し、モノづくりへの姿勢を伝えた。中川社長は「われわれは商社ではない。自社で企画・開発から生産、販売までを一貫して担うメーカーである。高密度アウター生地で知られるが、ファッション性の高い幅広い商品へ展開を広げるために、進化し続ける技術を知ってほしい」と語った。

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