ファッションデザイナーの岡﨑龍之祐による「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)」が10月19日(日)まで、イギリス・ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)で作品展「JOMONJOMON」を開催している。ロンドンデザインフェスティバルの一環として実現した本展は、「リュウノスケオカザキ」初のヨーロッパでの発表となり、同館内の1室を使った特別企画となっている。
岡﨑は原子爆弾が投下された広島で生まれ育ち、「平和への祈り」を制作の中心テーマとしてきた。その思想は代表作「JOMONJOMON」シリーズに色濃く反映されている。縄文人の呪術的な表現や土器の装飾に着想を得て、パターンを引かず即興的に生み出された立体的なシルエットが特徴だ。同展では、ドレス7点に加え、インスピレーション源となったV&A所蔵の縄文土器、火焔土器も展示される。火焔土器は紀元前約3000年頃の縄文時代を代表する土器で、古代日本文化と現代ファッションの対話を生み出す試みとなっている。
V&Aが評価した"平和"の力強いメッセージ
20年以上の歴史を持つロンドンデザインフェスティバルの今年のテーマは「地域紛争」「AIの出現」「資源問題」など現代社会の課題に対して、デザイナーやアーティストがどう応答するかを問うもの。岡﨑の作品が持つ「自然との調和」や「平和への祈り」というメッセージがテーマと合致したことから展示が決まった。V&Aで日本美術を担当する山田雅美(東洋部日本美術担当学芸員)は、「V&Aでは、過去と現在がどのように繋がり、作品が生まれてくるのかを展示を通して伝えている。岡﨑さんの普遍的で力強いメッセージと、広島や神道といったローカルな背景が、同館の理念にマッチした」と選定理由を語った。
また2025年は終戦から80年の節目でもあり、広島出身の岡﨑が平和教育を通じて育んだ創作の原点と深く結びつく展示となった。山田学芸員は「広島の悲劇を国際的な舞台で改めて共有する重要な機会」と意義を強調した。
収蔵作品「Sakura」に込められた日本の死生観
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新作コレクション「004」から制作されたドレス「Sakura」は、V&Aの永久コレクションとして収蔵が決定した。岡﨑は作品について、「今春、ちょうど桜が散る頃に収蔵用の作品を制作。その桜色は日本の歴史の中でも象徴的であり、咲いて散るという死生観のような儚さが日本的で、作品のコンセプトにも合っていた」と語る。また、「持てる技術をすべて注ぎ込み、全力で制作した。2025年、終戦80年の節目の年にこの作品が完成したことにも大きな意味を感じている」と、歴史に残る作品への責任感を示した。
さらにV&Aでは、岡﨑の東京のアトリエや故郷の広島、厳島神社を巡るドキュメンタリー映像も上映され、作品と背景にある日本文化への理解を深める内容となっている。9月19日にはロンドンを拠点にする日本人シンガー・ハチスノイト(Hatis Noit)が「リュウノスケオカザキ」のドレスを着用したパフォーマンスも予定されており、10月にはトークショーの開催も計画されている。
◼️RYUNOSUKEOKAZAKI – JOMONJOMON
日程:2025年9月13日(土)〜10月19日(日)
会場:V&A South Kensington
住所:Cromwell Road, London, SW7 2RL
入場:無料