
池田エライザ/俳優
今、デニムが売れている。プレーヤーはヤングカジュアルからラグジュアリーまで広がり、ワードローブの定番品を越えて、時代の気分を映すファッションピースへと進化している。本特集では、デザイナーや売り場、生産者までさまざまな視点から現代における「新スタンダード」を探った。(この記事は「WWDJAPAN」2025年8月25日号からの抜粋です)
シルエットはワイド一強
デニムトレンドをけん引する最重要人物として登場してもらったのは、デザイナーのグレン・マーティンス(Glenn Martens)だ。「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」はじめ、際限のないアイデアでデニムのモードな進化に貢献してきた。彼が2020年に「ディーゼル(DIESEL)」のクリエイティブ・ディレクターに就任して以降、同ブランドは一層存在感を増している。グレンにとってデニムは、反骨精神の象徴であり、人々の個性を最大化する素材。彼のクリエイションが際立っているのは、自由を求める時代のムードと呼応し、誰しもが心の中に秘めている、大胆不敵に人生を楽しみたいというマインドをくすぐるからだろう。グレンは、一つの型にはまらない多様な表現こそ、デニムの未来だと予想する。
シルエットはかつてストレートが主流だったが、現在のスタンダードはワイドだ。ルーズにはいたワイドなデニムに、コンパクトなトップスを合わせるY2Kファッションは、この2、3年で若者の間にすっかり浸透した。Y2Kブームを加速させ、今ファッショントレンドに大きな影響力を持つのが、 K-POPアイドルの存在だ。象徴的なのが、その名もNewJeans(NJZ)。彼女たちをはじめ、多くのグループがユニホーム的にデニムを取り入れている。Stray Kidsなどの人気グループのスタイリングを手掛けるスタイリストのイ・ジョンヒョンは、「デニムとは“素材”ではなく、もはや“デザイン”になっていく」と話し、表現はさらに多様化していくと予測する。ストリートのイメージのあるワイドシルエットだが、大人世代にも浸透してきた。日本で一番デニムを売っていると言っても過言ではない、「ユニクロ(UNIQLO)」のデニム企画担当者はコロナ禍を経て快適さが定番選びの条件になったこともワイドが選ばれる理由と分析。軽さやストレッチ性、ウエスト設計の見直しなど、快適さを追求したアップデートを進める。
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