1. ムラ・マサから見たネイオ、ネイオから見たムラ・マサ

ムラ・マサから見たネイオ、ネイオから見たムラ・マサ

インタビュー

2018/12/27 (THU) 12:00
ムラ・マサ(左)とネイオ

 12月初旬、イギリス海峡に浮かぶガーンジー島のベッドルームから世界の音楽シーンを席巻するプロデューサーのムラ・マサ(Mura Masa)と、同じくイギリス出身でかわいらしいハイトーンボイスが特徴的なネオソウル・シンガーのネイオ(NAO)が、それぞれ来日公演を果たした。

 ムラ・マサは15歳から本格的に曲作りを始めると、すぐにその才能を開花。エレクトロニックからヒップホップ、ファンクまでさまざまなジャンルを横断しながらも、どこか懐かしさを感じさせるメロウなサウンドはたちまち評判を呼び、一昨年20歳で発表したデビューアルバム「Mura Masa」はグラミー賞にノミネートされた。同アルバムはその音楽性もさることながら、豪華アーティストが参加していることでも話題に。何を隠そうネイオもエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)やデーモン・アルバーン(Damon Albarn)、チャーリー XCX(Charli XCX)らと共に参加アーティストの1人として名を連ねている。

デビューアルバム「Mura Masa」収録曲で、もともと発表していた楽曲「Lovesick Fuck」にエイサップ・ロッキーを迎えて新たにリリースした「Love$ick」

 そんな2人は同郷ということもあって公私ともに仲が良く、今回のムラ・マサの来日公演ではネイオがオープニング・アクトとして急きょ出演が決定。当初「WWDジャパン」は、ライブ前のムラ・マサに単独インタビューする予定だったが、前述のこともあり、ネイオも交えてインタビューすることに。ライブ直前にもかかわらず終始リラックスした様子を見せた2人のインタビューをお届けする。

WWD:2人はいつ日本に到着しましたか?

ムラ・マサ:2日前だけど、着いてから昼に寝て、夜起きる生活で時間帯がひっくり返っちゃってるんだ。いま(15時ごろ)ぐらいの時間は、寝ていたほうがいいんだろうな……。

ネイオ:ライブ(19時)の前に昼寝するつもり?

ムラ・マサ:まさか(笑)。もうすぐ始まるしこのまま起きているつもり。インタビューもこのまま続けて問題ないよ。

WWD:ありがとうございます(笑)。ネイオは初となる来日公演ですね。

ネイオ:とにかく楽しみ!でもパフォーマンスするのは初めてだけど、旅行では来たことがあるの。2016年に3週間ぐらいだったかな。東京の下北沢って街にエアービーアンドビー(Airbnb)を利用して泊まって、札幌、京都、大阪とかに遊びに行ったわ。だから昨日渋谷に行ったとき「私、ここ知ってる!」って感じだったの。

今年1月に恵比寿LIQUIDROOMで行われた来日公演の様子

WWD:ムラ・マサは今年1月に来日公演を果たしていますが。

ムラ・マサ:あれ?今年の1月だっけ?......本当に時間が経つのはあっという間だね。一昨年にも「フジロック」に出演するために来たから、これが3度目。日本は「RAGE」(国内最大級のeスポーツイベント)もあるし大好きな国さ。

WWD:再来日までの間にグラミー賞の発表がありましたが、ムラ・マサはノミネートされていました。環境など何か変化はありましたか?

ムラ・マサ:特に変化という変化はなかったかな。(ノミネートは)予想外だったけど、とにかくお祝いの言葉をたくさんもらってうれしかったよ。

ムラ・マサの公式インスタグラム(@the_mura_masa)から

WWD:あなたのインスタグラムを見ていると、今でもベッドルームで曲作りをしているように見えますが……。

ムラ・マサ:今年ようやく自分のスタジオを持てたから、半々ぐらいかな。とはいえ、今でもベッドルームで作業をするのは楽しいし、何より家と仕事場が一緒だと楽でいいよ。

WWD:ライフワークの一部ということでしょうか?

ムラ・マサ:そんな感じ。もう生活の一部だね。ヘッドフォンとパソコンがあれば十分だし、高い機材よりも楽しんでやることが重要さ。

「Firefly」。再生回数は2000万回を超えている

WWD:2人はノミネートされたアルバム「Mura Masa」収録曲の「Firefly」で共演していますが、同楽曲は15年に発表してたものですよね?協働した経緯を教えてください。

ムラ・マサ:それについて聞く?(笑)。僕はその頃18〜19歳で、まだ赤ん坊みたいなもんだった。

ネイオ:あなたは本当に小さくて、シリアルばっかり食べてたね(笑)。

ムラ・マサ:きっかけは単純、ネイオと僕のマネジャーが同じだったから。君はそのときのこと、どんな感じだったか覚えてる?

ネイオ:ベッドの上でくつろいでいたらマネジャーから「ムラ・マサが君のために曲を作った」って聞いて、「本当!?」って答えたのを覚えてるわ。最初はすごくストレートに素直な感じで歌詞を書いていたんだけど、「もっと変な感じにしてほしい」ってムラ・マサが言ってきて悩んだの。

「Firefly」の制作に大きな影響を与えたサブトラクトとリトル・ドラゴンの「Wildfire」

それで当時の私は、リトル・ドラゴン(Little Dragon、日系スウェーデン人のユキミ・ナガノがヴォーカルを務めるスウェーデンのバンド)にすごいハマってて、彼らとサブトラクト(SBTRKT)との楽曲「Wildfire」が大好きだったから、「Fire, Fire, Fire……Firefly」って感じで歌詞が生まれたの(笑)。

ムラ・マサ:そうなんだ、その話は知らなかったよ。でも歌詞は最初に作ったものから少し変えたけど、あとはあまり変わってないよね?すごいすんなりと曲が完成したのを覚えてる。

ネイオ:そうね。でもあの時はまだ実際にムラ・マサと会ったことがなくて、お互いよく知らないのにネットを通じてコミュニケーションしているから不思議な感じだったわ。

ムラ・マサ:すごく現代的だよね。今はもちろんよく知っているけど。

「Complicated」の監督を務めたヨニ・ラッピンは、ムラ・マサのほぼ全てのMVで監督を務めている

WWD:8月に発表した「Complicated」でも共演していますが、何かエピソードはありますか?

ムラ・マサ:「Complicated」はもともと、ネイオが僕ではなくスクリレックス(Skrillex)のために書いた曲だったんだ。

ネイオ:私はMVの撮影をすごく覚えているかな。ヨニ・ラッピン(Yoni Lappin)が監督で、私に踊ってほしいと思っていたみたいなんだけど、私はMVで踊ったことなんかなかったから、彼は私にあえて事前にそのことを伝えず、カメラを回した状態でいきなり「踊って!」って言ってきたの。「え?なに!?」ってもうパニックだった(笑)。でもダンサーがいたから、私がダメでもちゃんといい感じに撮れてたし、楽しかったわ。

ムラ・マサ:ネイオもちゃんといい感じだったよ(笑)。

WWD:いま、2人の間で進んでるプロジェクトはありますか?

ムラ・マサ:実は、「Firefly」と「Complicated」以外にもいろいろと一緒にやっているけど、まだ発表してないのもあるんだ。最近だとネイオの最新アルバム「Saturn」に入ってる曲でもコラボしてるよ。

ファンの間でも人気が高い「If You Ever」

ネイオ:「If You Ever」って曲のプロデュースをしてもらったの。私のスタジオで歌詞を書いて、ブラック(6Lack、アトランタ育ちのシンガー・ソングライターでラッパー)も参加してくれたわ。

READ MORE 1 / 2 アーティストとして、友人としての2人

WWD:アーティストとして、友人として、お互いをどう思っていますか?

ネイオ:デートしているときみたいに相手を褒めなくちゃいけないってこと?(笑)。彼は……とにかく多才ね。

ムラ・マサ:もっと多才になりたいくらいだけど。

ネイオ:十分多才でしょ(笑)。ムラ・マサは、カルチャーが後追いでコピーしてるくらい時代の先を行く人かな。いつも想像の限界を超えながら、それでいてみんなが楽しんで聴けるものを作っている。今、ムラ・マサをリファレンス(参考に)しているアーティストがたくさんいるでしょ?芸術性や才能に関しては本当に尊敬しているの。1人のファンとして彼の次のアルバムがどんなものになるのか楽しみにしてるくらいにね。そしてきっとすごく変なものを作るんじゃないか、ともね(笑)。

ムラ・マサ:ネイオは、自分をとても正直に表現できる素晴らしい才能の持ち主だね。多くのシンガーは「他人が書いてくれた曲を歌ってます」って感じがするんだけど、ネイオは自分で作詞作曲してるし、プロジェクト全体もコントロールしている。女性が音楽業界で全体をコントロールするには、かなり強くないと難しくて、見えないところでいろいろと闘っているんだと思う。そうして闘って、コントロール権を勝ち取っているところを本当に尊敬するし、当然音楽そのものも素晴らしい。心からいいと思える音楽を作っている彼女と友達でいられるのが最高だよ。

ネイオ:ありがとう!こういう質問がいつもあればいいのになー。

ムラ・マサ:(褒められるのは)自信をつけてくれるからね(笑)。

アフロテイストで低音ビートが特徴的なオクタヴィアンとの楽曲「Move Me」

WWD:ムラ・マサはオクタヴィアン(Octavian、ロンドン出身の若手ラッパー)、ネイオはクワーブス(Kwabs、ロンドン出身のシンガー・ソングライター)など、2人ともイギリスやロンドンにゆかりのあるアーティストとコラボすることが多いですが、相手はどうやって選んでいますか?

ネイオ:クワーブスと最初に会ったのは、私がまだ“ネイオ”になる前に彼のバックコーラスをしていた頃。彼がアーティストになる道のりを一緒に歩いたから、私が“ネイオ”として活動する物語(旅)の一部になってほしくて一緒にやることになったの。彼は一時期音楽業界から離れていたんだけど、あの声は世の中に必要だと思って「Saturn」で共演してもらったのよ。

ムラ・マサ:彼を復活させなくちゃ、みたいな感じだったんだね。僕の場合は、自分が相手のファンかどうか。そして同じく相手が僕のファンかどうかが全てかな。お互いにリスペクトできることが何よりも大事だからね。あと常に新しいものを作っている人、限界や境界線を超えようとしている人がいないかと探しているんだ。最近だと、スロータイ(Slowthai、ノーサンプトン出身のグライムMC)がそうだね。

スロータイが先月リリースした「Doorman」。ムラ・マサがプロデュースし、パンクマインドを感じさせる1曲に

彼はまだ世界的に有名じゃないけど、今後パワフルなアーティストとしてグローバルに活躍すると思っている。相手がどれだけビッグなアーティストかだったり、これまでどんな曲を発表してきたかだったりは一切関係なくて、相手を信じる心が大事なんだ。今までコラボしてきた相手は、みんなそういう感じさ。

READ MORE 2 / 2 次回作は日本で制作?

WWD:チャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)が「(音楽において)ジャンルという概念は死んだ」と発言していましたが、ムラ・マサの音楽はいろいろなジャンルのアーティストとコラボしていて、まさにそう感じます。

ネイオ:私も「ジャンルなんてない」という考えにはかなり共感するわ。今の音楽は、好きなものを放り込んで混ぜて作る、でいいと思っているから。ただ私の場合は、見た目や人種的に“どんな曲だろうと勝手にカテゴライズする人たち”からとりあえずR&Bだと思われる(笑)。

ムラ・マサ:「スポティファイ」や「アップル・ミュージック」のような音楽ストリーミングサービスが登場したことが大きいと思うね。みんないろいろなジャンルを聴くようになったから、「何聴いてるの?」って質問されて、「Rock」みたいにジャンルで答える人はもういなくて、だいたい「いろいろ。何でも聴くよ」って答えるでしょ?それで自分が個性的だと思っている人も多いみたいだけど、今やみんながそうなんだ。ネイオの楽曲を例に出すと、ファンクやディアンジェロ(D'Angelo、米シンガー・ソングライター)っぽい部分もありながら、エレクトロニックな部分もある。意図的にそうしているわけじゃなくて、単に好きなものを混ぜていたら自然とそうなったという感じがエフォートレスで面白いよね。

代表曲の1つ「What If I Go?」は、冒頭で日本語のニュースがサンプリングに使用されている

WWD:2人とも日本語や和楽器をサンプリングに使用してますが、同じような理由でしょうか?

ムラ・マサ:僕たちが単にジャパノファイル(親日家)だからさ。僕の場合は子どもの頃、日本のテレビゲームをたくさんやったし、アニメや漫画も見て読んだ。日本の文化が本当に大好きなんだ。音楽だとマキシマム ザ ホルモンをよく聴いたね。あとFACTやGackt、BUMP OF CHICKENも好き。そういう音楽を聴いてきたから、日本のカルチャーにすごく興味が湧いて、自然に好きになった感じさ。

WWD:日本の音楽が好きなのは、主に歌詞?それともメロディー?

ムラ・マサ:僕は日本語をほとんど話せなくて歌詞があまり分からないから、メロディーだね。

WWD:2人の次のコラボは、ぜひ東京で作られては?

ネイオ:最高!

ムラ・マサ:日本にいる間に、アルバムを作るっていうのもアリだね。

ネイオ:じゃあ、レーベルに頼んでこのまま日本にいさせてもらう?あ、クリスマスが来ちゃうか……。でもEPなら作れるかも!

ムラ・マサ:そういえば、日本ではクリスマスディナーにケンタッキーを食べる人が多いって聞いたんだけど、それ本当?

WWD:本当です。商業的な動きでそうなったんだと思います。予約したり、並んで買ったりしないといけないぐらい混雑しますよ。

ネイオ:本当!?ケンタッキーとクリスマスがどう関係あるの!?冗談だよね!?

ムラ・マサ:テーブルを予約したり、家族で囲んで食べたりしてるんだって。

ネイオ:嘘!?やばい!(笑)。

WWD:日本はケンタッキーに洗脳されているんです(笑)。

ムラ・マサ:まぁ、国によっていろいろあるよね。イギリスのニューイヤーズは、ただお酒を飲んで騒ぐだけなんだけど、日本では家族でゆっくり過ごすでしょ?逆にイギリスのクリスマスは家族で過ごすし、お互いちょうど逆なんだね。

ネイオ:なるほど。お酒とケンタッキー……最高に合いそう(笑)。

LINEでフォローして最新ニュースをチェック 友だち追加
メールマガジン登録

毎週月、水、金に注目コンテンツをお知らせするメールマガジンをお届けします。
今ならデジタルデイリーの1週間試し読みもご利用いただけます。
※ @icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。

フォーカスランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間
ブランド検索
シーズン検索
false false true true true false true true