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ノエル・ギャラガーも絶賛の英エレクトロ・ソウル&ファンクバンド、ジャングル 「ファッションと音楽には相乗効果がある」

 幼なじみのトム・マクファーランド(Tom McFarland)とジョシュ・ロイド・ワトソン(Josh Lloyd-Watson)の2人を中心に、2013年に結成されたイギリス・ロンドン発の7人組エレクトロ・ソウル&ファンクバンド、ジャングル(Jungle)。エレクトロニックながら1970年代のファンクをほうふつとさせる彼らの楽曲は、米雑誌「ローリング・ストーン(Rolling Stone)」には「ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)をも超えるフォルセットと、跳ねるようなベースラインの軽快なファンク・ポップ」と評され、2014年に発売したデビューアルバム「Jungle」はイギリスとアイルランドでその年の最も優れたアルバムに対して送られる「マーキュリー賞(Mercury priz)」と、同年のiTunesの「最優秀オルタナティブ・アーティスト」に選出されるなど、デビュー早々に世界へと知らしめた。

 そんな彼らが、来年1月の来日公演を控える中、9月14日に2ndアルバム「For Ever」を4年ぶりにリリース。中心メンバーのトムに、バンド結成の経緯から「For Ever」にかける想い、これまであまり公にしてこなかった彼ら自身の姿を映した新曲「Happy Man」のミュージックビデオについてまで、話を聞いた。

WWD:9歳の頃から友人だったというジョシュとあなたを中心にバンドを結成したとお聞きしましたが、経緯を教えてください。

トム:9歳の時に、ジョシュが俺の家の横に引っ越してきた時に出会ったんだ。それからお隣さんってことで、一緒に遊ぶようになった。家にはギターやピアノがあったから、他の子たちがスケボーで遊んでいる間、俺たちは楽器で遊んでいたんだよ。

それからしばらくして、バンドとして2013年にジャングルがスタートした。たぶんだけど(笑)。それまで俺もジョシュもいくつかの違うバンドで活動していたんだけど、それは全部“趣味としてのバンド”だった。ジャングルを結成してからは他人が聴きたいと思ってくれるような音楽をもっと作るようになり、それでいて楽しみながら曲作りができるようになったから本格的に活動するようになった。スタートの時期について“たぶん”って言ったのは、ジャングルがバンドになったには自然の流れだったからなんだ。

デビューアルバム「Jungle」収録で人気曲「Busy Earnin'」。ユーチューブでの再生回数は2000万回近い

WWD:デビューのきっかけは、元オアシス(Oasis)のノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)に「クソ素晴らしい」と絶賛されたことが原因の1つでしょうか?

トム:ははは、違うよ(笑)。自然の流れで活動が本格化していったから、きっかけと聞かれると難しいね。強いて言うなら、出来上がった曲を「サウンドクラウド(SoundCloud)」にアップして音源を直接公開するようになってからだと思う。「デビューしたい!バンドで絶対やっていく!」なんては考えはなかったし、成功を期待しすぎてもいけないと考えていたからね。

WWD:楽曲制作する際、なんらかのテーマやルールなどの決め事はありますか?

トム:あるとすれば“自由に作ること”かな。境界線を定めてしまうと、正直な作品ができないから。あとはできるだけ実験的でいること。

WWD:どういったアーティストに影響を受けてきましたか?やはり同郷のジェイムス・ブレイク(James Blake)などでしょうか?

トム:ミュージシャンだったらフランスのエレクトロニック・ミュージシャンやヒップホップ、特にJ・ディラ(J Dilla)やジャスティス(JUSTICE)、ダフト・パンク(Daft Punk)から影響を受けていて、あとはザ・ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)も好き。別の業界だったら映画監督のウェス・アンダーソン(Wesley Anderson)とかかな。ジェイムス・ブレイクの音楽は大好きだけど、直接的に影響は受けていないね。

英R&Bシンガーのジョルジャ・スミスの代表曲「On My Mind」。ガラージ風なダンストラックは英プロデューサーのプレディターとの共作

WWD:今サウスロンドンを中心にロンドンの音楽シーンが注目されていますが、バンドの音楽に影響していますか?またロンドンで注目しているアーティストは?

トム:ロンドンは多種多様な音楽で溢れていて、それぞれがいろいろな場所から影響を受け、巧みに自分の音楽に取り入れて面白い作品を作っている。自分たちの音楽にどう表われているかはわからないけど、影響されているとは思うよ。注目しているのはR&Bシンガーのジョルジャ・スミス(Jorja Smith)。彼女のタイムレスかつモダンなところがいい。

WWD:14日に発売されたセカンドアルバム「For Ever」のタイトルに込められた想いやエピソードを聞かせてください。また青写真などはあったのでしょうか?

トム:タイトルはつけた時にすごくしっくりきたんだけど、俺たちにも理由はわからなかった。アルバムの内容が愛のサイクルについてだから、“永遠”って意味での理由はあるかもしれない。これはきっと時間と共にクリアになっていくと思う。あとジョークもあって、僕のインスタのアカウント名が”ジャングルフォーエヴァー(@jungle4eva)”なんだ(笑)。青写真は、あると言えばあったね。ファーストアルバムの反応が良かったから、自然と似たものを作ることを意識していたけど、そんな青写真はすぐに捨てた。ジャングルとはなにか、どうやってファーストを作ったのかは全て忘れて、自分たちが今作りたいものをゼロから作ることにした結果が「For Ever」だ。なにかをコピーすると、それは中身のないモノになってしまうだろ?ファーストよりももっと誠実でエモーショナルで、自分たちにとって意味のある作品が出来上がったと思っている。

WWD:サウンド的には?

トム:もっとサイケデリックでディープになって、3Dっぽくなった。以前と比べて感情をより音楽で表現できるようになったし、技術も上がった。特にストリングスの出来にすごく満足しているね。納得のいく作品ができたと思っているよ。

元恋人への後悔を歌った「For Ever」収録曲の「Cherry」

WWD:この4年間でインスピレーション源の変化や大きな経験があったのでしょうか?

トム:最初のアルバムは、自分たちの中のファンタジーなシナリオだったと思う。あの時はほとんどロンドンから出たことがなかったし、外の世界を想像するしかなかった。でも今回は、バンドとして世界を旅して、素晴らしい体験を経て作ることができた。旅をすること自体がとても大きな変化だったし、新しいインスピレーションだった。「For Ever」には前作から今までの自分たちの旅が詰まっている。それに実生活でもいろいろあった(笑)。俺もジョシュも彼女と別れたり、引っ越したりと環境が変わったんだ。それはアルバムに反映されていると思うよ。

「For Ever」収録曲の「House in LA」

WWD:「For Ever」収録曲の「Happy Man」と「House in LA」のイメージは「世界が滅亡した後にラジオから流れる別れの音楽」だとお聞きしました。個人的に世界の終わりというと寒さや暗さ、荒廃を想像するのですが、「House in LA」にはむしろ明るさを感じました。

トム:なにかの終わりって、始まりでもある。だから、なにかの終わりというのは、必ずしも寒い、暗いものではないんだよ。悲しんでいる時は、同時に希望も持つだろ?自然な結果さ。

「For Ever」収録曲の「Happy Man」

WWD:また、それぞれの楽曲のMVはどういったストーリーでしょうか?

トム:みんなでアイデアを考えたんだ、自分たちがミュージックビデオに出演するってアイデアが新しいことだったからすごく楽しかったよ。「House In LA」は「コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル(Coachella Valley Music and Arts Festival)」の後、みんなで休みをとってロサンゼルスに滞在していたんだけど、それがすごくいい場所で楽しかったから、そのままMVを撮ることにしたんだ。俺たちの場合、全てのMVがそんな感じで自然にできていくからストーリーはあまりないよ。

WWD:MVをはじめ、これまで自分たちが写っていないビジュアルが多かったですが、狙いは?

トム:俺たちが作るのは音楽であって、ビジュアルを表現したいわけではなかったからね。ビジュアルアートはそのアーティストの作品だし、自分のエゴはそこには必要ない。音楽もそうで、自分がなにをしたいかよりも自分が誰なのかを表現した方が、より誠実な作品が出来ると思っていたからね。

「For Ever」収録曲「Heavy, California」のMVは、若者たちが広大な草原を舞台に優雅に激しいダンスを披露

WWD:世界観をサウンドとして表現するのと、アートワークや映像などで視覚的に表現するのは、どんな違いがありますか?MVではダンスシーンが多い印象です。

トム:そんなに変わらないよ。最初はサウンドを通してさえも、感情を表現することが難しかったし、躊躇していた。でも今は、感情をしっかりと表現することを意識できるようになった。サウンドでもビジュアルでも、できるだけ人々がつながりを感じることができるものを作り、表現するというのは変わらない。ダンスが多いのは、自分たちがシンプルなアイデアが好きだから。ダンスは音楽に対する人間の自然な反応で、俺たちも音楽を作っている時に身体が動くし、なによりもシンプルで好きなんだ。

WWD:2014年には「フジロック」に出演していましたが、日本のファンの印象は?

トム:「フジロック」は本当に楽しかった。みんなが音楽を真剣に聴いてくれて、すごくうれしかったよ。これはアーティストにとってすごく大切なことなんだ。場所によっては、全然音楽を聴いてくれないところもあるからね。みんなからのリスペクトを感じたよ。

NBCのトーク番組で「Happy Man」を披露するジャングル

WWD:ライブやMVを見る限り、楽曲同様に装いに上品さを感じます。

トム:ありがとう!そう言ってくれてうれしい(笑)。

WWD:ファッションにおいてのインスピレーションやこだわりはありますか?

トム:ファッションに関しては、他の人からインスピレーションを受けることがなくて、自分が着たいものを着ている。最近は農家で働く人がはくようなパンツを買ったんだけど、それを気に入ってはいてるくらいにね(笑)。ファッションも自分を表現できるし、音楽と共通するものがあるよね。音楽でもファッションでも、俺は自分の日常をそのまま出したいと思っているから、ライブで特別な衣装を着るということはない。デザインはシンプルなものが好きで、そこにアクセサリーを足す。あとは上下がちゃんとマッチすることを意識してるね。

「ルイ・ヴィトン」2019年春夏パリ・メンズ・コレクションでは、ジャズ・ヒップホップバンドのバッドバッドノットグッドがショー音楽を生演奏した

WWD:ファッションブランドがバンドをフィーチャーすることはどう思いますか?

トム:ライブでは服を着るし、ファッションショーでは音楽が流れるし、音楽とファッションはつながっていて、お互いに相乗効果があると思っているよ。


WWD:最後に、バンドとしてトライしてみたいことや野望を教えてください。

トム:今はとりあえず新しい作品のリリースのことだけしか考えられない。それでまたツアーに出て、より多くの人に音楽を届けることが当面のゴールだね。日本には来年行くから、待っててくれ。

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