ファッション

UKポスト・パンクの新星、ハートワームスが初来日で語る「音楽遍歴」と「ゴシックの美学」

父親側にアフガニスタン/パキスタン系、母親側にデンマーク/中国系のルーツをもち、10代の頃から路上演奏を行い、生計を立てていたというロンドン出身のアーティスト、ジョジョ・オーム(Jojo Orme)のソロプロジェクト、ハートワームス(HEARTWORMS)。アート系の大学進学をへて現在の原型となるバンドを結成後、ロンドンのブリクストンにある名門ヴェニュー「The Windmill」でライブを重ねる中で頭角を現した彼女は、ブラック・ミディやブラック・カントリー・ニュー・ロードらに続く「英国ポスト・パンクの新星」として位置付けられる存在といっていい。そして、セイント・ヴィンセントやザ・キルズのサポート・アクトを務めるなど活動の場を広げ、シーンの後見人的なプロデューサーであるダン・キャリーのプロデュースのもと、デビュー・アルバムとなる「Glutton for Punishment」を2025年2月にリリースした。

ポスト・パンクの緊張感とゴシック・ロックの陰鬱さを基調に、ダンス・パンクやエレクトロニックの要素を融合し、フォーキーな音色やクラシック音楽のモチーフも取り込んだサウンドは、ミニマリズムとビルドアップの対比が生み出すジャンル横断的かつオペラティックな高揚感が魅力。さらに、孤独や恋愛の執着といったパーソナルな記憶と歴史的/社会的なメタファーを重ね合わせた歌詞のテーマと相まって、「ディストピア的」と彼女が表現する感情の表出がカタルシスをもたらし鮮烈な印象を残すものだ。

加えて、ハートワームスといえば目を引くのが、アルバム・ジャケットからMVに至るまでモノクロームで統一されたアートワークと、ジョジョいわく「Gothic , Military , Fairy」と定義するビンテージ・ライクなルック。パティ・スミスやオスカー・ワイルドといったアイコンからインシピレーションを得たビジュアル・イメージとその美学がサウンドと相乗効果を生み出し、ハートワームスという“アート”全体を形づくっている。

「“色”は音楽の中にあるし、感情の中にあるから」――そう語る彼女に話を聞いたのは、初来日となるジャパン・ツアーの初日公演が行われた25年12月1日、川崎クラブチッタ。開演前の楽屋で、自身の音楽観や審美眼をめぐるエピソードを語ってもらった。

小島秀夫との関係性


——インスタグラムに、ゲームクリエイターの小島秀夫さんとのツーショットをアップされていましたね。

ジョジョ・オーム(以下、ジョジョ):東京のスタジオにも連れて行ってもらいました。といっても仕事ではなく、友人同士として一緒に時間を過ごしただけなんですけど、それがとても心地よくて、楽しかったです。

彼とはインスタグラムでつながったんです。向こうが私をフォローしてくれて、音楽を気に入ってくれたのがきっかけでした。そもそも、私が今の契約に至ったのも、ダン・キャリーにインスタグラムで見つけてもらったことが始まりで。インスタグラムは、ハートワームスというプロジェクトにとって“エネルギー源”みたいな存在なんです。MVを撮ってくれているギルバート・トレホ(※俳優ダニー・トレホの息子)と知り合ったのもインスタグラムでした。

——ジョジョさんから見て、小島さんの印象は?

ジョジョ:たぶん、私たちは音楽の趣味が似ているんだと思います。どちらも黒が好きで、ちょっと変わったタイプというところも共通していて。そういう感覚の近さがあって、自然と仲良くなっていきました。

——他に東京の街をまわる時間はありましたか。

ジョジョ:いろいろ見てまわりました。でも、時差ボケがかなりひどくて……。行きたかったビンテージ・ショップはまだ巡れてないんですけど、それでも渋谷には行ったし、スクランブル交差点も2回渡りました(笑)。

それと私、足がとても小さいんです。「ユニクロ」の靴下が好きなんですが、イギリスではサイズが大きすぎて合わなくて。日本ではサイズがぴったりだったので、靴下は大量に買って帰りました(笑)。

——2025年は飛躍の年になりましたが、振り返っていかがですか。

ジョジョ:正直、「2025年」という感覚がほとんどなくて。全部がぼんやりしている感じなんです。覚えているのは、その時々に起きた出来事だけで、それが今年だったのか、去年だったのか、あるいは一昨年だったのかも曖昧で。

ただ、一つだけはっきりしているのは、2025年にアルバムをリリースしたということ。そもそも、自分がアルバムを書けるなんて思ってもいなかったし、それを実際に書いて、完成させて、世に出したわけで……ああ、そうだった! グラストンベリーのステージは本当に素晴らしくて、ショーもセットもすごくよかった。他にもいろいろあったはずなんですけど……今は、そのあとに何をしてきたのかを思い出そうとしているところです(笑)。

デビュー・アルバムへの想い

——デビュー・アルバムの「Glutton for Punishment」がリリースされて少し時間が経ちましたが、今のジョジョさんの中ではどんな手応えや実感がありますか。

ジョジョ:あのアルバムが好きかと聞かれると、実は、あまり好きじゃないんです(笑)。たぶん、何度も何度も演奏しすぎたからだと思う。私は、同じことを繰り返しすぎると続けられなくなってしまうタイプで。だから今は、新しい曲を書いて、先に進むことがすごく楽しみなんです。

でも同時に、あのアルバムをつくった“過去の自分”には、すごく誇りを感じています。あの作品があったからこそ、日本にも来られたし、いろんな場所に辿り着くことができた。だから当時の自分には、「よくやったね」って肩をたたいてあげたい気持ちです。

——印象的なアルバム・タイトル(「Glutton for Punishment」、嫌なことや厳しいことをあえて好んでやる人」を意味する英語の慣用句)ですが、制作過程はどのような経験になりましたか。

ジョジョ:私はもともと、過去を振り返る癖があって、それ自体が自分の精神にとって、ある種の“罰”のように感じられることがあるんです。自分でも少しマゾヒスティックだなと思うことがあるんですけど。人との出会いや経験について話すのは、どうしても言葉にするのが難しくて……ただ、当時の私は本当にかなり暗い状態にいました。すみません、軽々しく話したくなくて、どう表現すべきか考えながら話しています。

このアルバムは、かなり短い時間で書き上げたんです。もともとあった曲は2曲だけで、残りは「すぐにアルバムを書いてほしい」とレーベルに言われて、部屋にこもって一気に仕上げました。それはある意味、自分に課した“罰”のようでもあって、同時に“discipline(自己鍛錬)”でもありました。当時はいろいろなことを抱えていて、私自身も、周りの人たちも落ち着かない状態で。外に出て過ごすことも多かったと思います。ただ……ごめんなさい、これ以上詳しく話すのは難しいです。この質問には、ここまでしかきちんと答えられそうにありません。

影響を受けた音楽は?

——では、アルバムのサウンド面——多様な影響源を窺わせるハートワームスのエクレクティックな音楽性の成り立ちについて教えてください。

ジョジョ:影響について挙げ始めたら本当にきりがなくて、音楽を初めて聴いた子どもの頃からずっと続いています。母が家でよく曲をかけていたのは、マイケル・ジャクソンやプリンス、ホット・チョコレートみたいな偉大なアーティストたち。それにアラビック・ミュージックまで、本当にいろいろ流れていました。母が留学生を受け入れていたことも大きくて、家には日本や韓国、中国、サウジアラビアなど、さまざまな国の人たちが出入りしていました。彼らはいつも、自分たちの好きな音楽を持ってきてくれて。そういう環境の中で育ったので、子どもの頃から自然と多様な音楽に触れていて、そのあとで少しずつ自分の好みを見つけていったんです。

“ポップ・パンク期”もあって、パラモアやユー・ミー・アット・シックス(You Me At Six)を聴いていたこともあるし、なぜかラップにハマっていた時期もあって、Jmeを聴いていたり。なぜああいうフェーズがあったのかはよく分からないんですけど、たぶん当時付き合っていた人の影響だったのかもしれない(笑)。

そんなふうにいろいろな時期を経て、ザ・シンズに出会いました。彼らのアルバム「Heartworms」から自分の名前を取ったくらい、私にとっては決定的な存在です。そこから、音楽に対する“純粋な愛”みたいなものが一気に開いた感覚がありました。インターポールやレディオヘッドもそうだし、挙げていけば本当にきりがない。だからこそ、私のサウンドは作品ごとに違って聴こえるんだと思う。曲を書くときも「こういうジャンルっぽくしよう」と考えることはなくて、とにかく自分にとって良い音にするだけ。結果的にポスト・パンクっぽく聴こえることもあれば、まったく違うものに感じられることもある。あとは聴く人が自由に判断してくれればいいと思っています。

——「Warplane」や「Just To Ask A Dance」などの曲で顕著なインダストリアルやゴシックのテイストは、ジョジョさんの音楽的なルーツのどの辺りに紐づいているのでしょうか。

ジョジョ:昔一緒にやっていた最初のドラマーの父親がゴシックやポスト・パンクにすごく詳しくて、キリング・ジョークやザ・カルトを教えてくれて。デペッシュ・モードはもともと知っていたんですけど、その人のおかげで改めて深くハマることができたんです。人生の中で、同じ音楽でも”誰と聴くか”によってまったく違って聴こえる瞬間ってありますよね。彼はまさにそういう存在でした。そこから、ポスト・パンクに強く共鳴していったんだと思います。

それに、ブリクストンの「The Windmill」のシーンでも、周りの人たちがみんなそういう音楽に傾倒していたので、自分がどれほどポスト・パンクに影響を受けているかをあまり意識しないまま、自然と流れに入っていった感じでした。

“インダストリアル”というジャンルについては、正直よく分からなくて……ナイン・インチ・ネイルズはそうなのかな? あと、クラフトワークは大学に入ったばかりの頃によく聴いていました。彼らの名前自体はもっと幼い頃から知っていて、きっかけはイライジャ・ウッドのインタビューでした(笑)。12歳くらいの頃、俳優に夢中になる時期があって、彼が「好きな音楽はクラフトワーク」って言っているのを見て聴いてみたんです。そのときは全然ピンと来なかったんですけど、大人になってから改めて聴いたら「めちゃくちゃカッコいいじゃん!」ってなって(笑)。

——今話に出た「The Windmill」は、ハートワームスが活動を始めた頃にキャリアの足がかりを築いた場所でもあります。その頃のエピソードが聞きたいです。

ジョジョ:私が初めて「The Windmill」に行ったとき、ちょうどマーダー・キャピタルが演奏していて、サポートアクトがItalia 90でした。Italia 90は本当に素晴らしいバンドで、ファンキーでシンプルなベースラインと、サウス・ロンドンの”濃いアクセント”で歌うスタイルが印象的で。なんというか、どこかフットボール流れの不良グループみたいな見た目なんですけど(笑)、すぐに夢中になりました。

それと、〈Speedy Wunderground〉(※ハートワームスの所属レーベル)がレコーディングを手がけているBorough Councilという3人組のバンド。彼らの演奏を観てすごくインスピレーションを受けたし、ダンが「The Windmill」に来ていた頃は一緒にモッシュしたり、創作について刺激的な話をしたりしていました。

それで、そんなふうにライブを観ていたら、ふとデクラン・マッケンナ(※イギリスのシンガー・ソングライター)が横を通り過ぎて。「え、今のデクラン・マッケンナ?」って。思い切って外に出て自己紹介したら、彼はかなり酔っていたけど(笑)、私が若い頃に聴いていた大好きなミュージシャンの一人だったので、すごく印象に残っています。初めて「The Windmill」に行った夜にあんな出来事が起きたことは、今でも鮮明に覚えています。忘れられない思い出です。

ファッションのこだわり

——音楽以外にもさまざまなリファレンスを窺わせるハートワームスの表現ですが、そのスタイルを形作っている要素として「ファッション」が占める位置は大きいように思います。その点について、どんな哲学や美学をもっていますか。

ジョジョ:私はあまり派手な色が好きじゃないんです。自分の普段の気分とあまりにも“逆”だから。たいていはもっと内省的で、沈んだ感じなので。でも、帽子だけは別なんです。母もいつも帽子をかぶっていたし、叔父も弟も帽子好きで、家族全員が帽子をかぶるタイプなんです。私たちにとって帽子は、ある意味“安心アイテム”みたいなもので、だから私も子どもの頃からずっと帽子が好きでした。最初に持っていた帽子の一つは、確かカラフルなビーニーだったと思うけど(笑)。

ファッションで影響を受けたアーティストで言えば、マイケル・ジャクソン、プリンス、ボブ・ディラン、パティ・スミス、そしてベック。特にベックは本当に大好きです。インターポールもそうですね。ポール・バンクスが2000年代にしていたファッションは、今思えばかなり「?」がつくスタイルだったけれど、それでもすごくクールだった。シャツにネクタイをして、その上からTシャツを重ねる、みたいな……うん、かなり大胆ですよね(笑)。それと、文学からの影響も大きいです。エドガー・アラン・ポーやオスカー・ワイルドが好きで、オスカー・ワイルドに影響されて、靴下をパンツの中にタックインするようになったくらい。そういう細かいスタイルの引用が好きなんです。

ハートワームスのビジュアルについては、ギルバート・トレホがイメージづくりを助けてくれました。「これいいよ、着てみて」「うん、それも合う」みたいに、全体のバランスを見ながらアドバイスしてくれて。例えば、パラシュートのようなストラップがついたトップスがあって、それはセックス・ピストルズが着ていたことでも知られる、「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」のとても有名なデザインで。私たちが初めて会った頃、ギルバートがちょうどそれを集めていて。結果的に、彼とつくった最初のMV(「Warplame」)でそれを着ることになりました。ああいう“パンク”の美学は、私にとって大きな刺激でした。ヴィヴィアン・ウエストウッドは本当に偉大だと思います。

——アーティスト写真で身につけている、籠のような形のヘッドピースは、どういうものなんですか。

ジョジョ:あれは、ギルバートと一緒に「意味は分からないけど、“Punishment(罰)”というテーマに合う、何かクレイジーなことをやろう」という話から生まれたものです。「Scold's Bridle」と呼ばれる、中世の拷問具に着想を得ていて、女性が“女性らしくない”とされる振る舞い――例えば、おしゃべりやゴシップなどをしたときに処罰としてつけさせられた道具なんです。装着すると舌が押さえつけられて、自由に動かせなくなるような構造になっていて。

ただ、私たちの場合は、あくまでシンボリックに使っただけで、実際に口を締め付けたりしているわけではありません。安全のため、チェーンで吊るように固定していました。そうしないと頭が押しつぶされてしまうので。だから……あれをステージで着けるつもりはありません(笑)。

——ちなみに、初期のハートワームスのファッションのコンセプトは「Gothic , Military , Fairy(妖精)」だったそうですね。

ジョジョ:今は少し変わったかもしれない。あの頃はいつも黒ばかり着ていたけれど、最近は少しだけ色を混ぜるようになっていて。それにしても、我ながらあの頃の私は言葉の選び方がうまかったと思います(笑)。ただ、今はもう“Military”の要素はあまりないかな。

——では、今の自分のスタイルを言い表すとしたら?

ジョジョ:うーん……どうだろう。

同席したマネージャー:「Gothic , Victorian(ヴィクトリア期), Playwright(劇作家)」とか?

ジョジョ:ああ、それ! イエス、イエス、イエス! 私のこと、よく分かってるね(笑)。それより、日本に来て気づいたことがあって。コートの襟がすごく高いデザイン、多いですよね。あれが本当に好きなんです。私はハイネックが大好きで、それだけでクールに見えるし、強さも感じられるから。

——そういえば、「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」の2025年の春夏のキャンペーンで、ハートワームスのアルバムがサウンドトラックとして使われて、さらにジョジョさん自身が作成したプレイリストも提供されていましたね。あれはどのような経緯で生まれたコラボレーションだったのでしょうか。

ジョジョ:ブランドの人たちが私を見つけたのは、たぶんセイント・ヴィンセントのサポートでロイヤル・アルバート・ホールに出演したときだと思います。そのショーのあとにキャンペーンへの参加を打診してくれたんです。

——マックイーンについては、90年代初期に発表された「Jack the Ripper Stalks His Victims」というコレクションが好きだったそうですね。

ジョジョ:はい、特に印象に残っています。タイトルも含めて惹かれたし、少しグロテスクで、ダークなものにどうしても心を引かれてしまうんです。ファッションに詳しいわけではないけれど、あのコレクションは特別に目立っていました。ラフで、”破れた”ような質感があって、他のコレクションとは明らかに違っていた。どこかティム・バートン的というか、シルエットがイラストみたいで、ヴィクトリア朝の雰囲気もあって。すごく記憶に残っています。

今のマックイーンを率いているデザイナーはショーン・マクギアー(Sean McGirr)ですよね。彼のビジョンは本当に素晴らしいと思います。今のマックイーンの方向性はとても魅力的で、どこかハートワームスの美学とも通じるところがあると思います。大きく張り出した肩、印象的な帽子、鋭く角張ったシルエット。あの“Jack the Ripper”的な、突出した感覚。ゴシックで、ヴィクトリアンで、強度のある造形――あれが最高なんです。だからこそ、彼をとても尊敬しています。マックイーンが持っていた大胆なビジョンを、ちゃんと受け継いでいると感じるから。

——最近はどんなブランド、アイテムが気になっていますか。

ジョジョ:最近の自分の気分を振り返ると、たぶんローマでの経験が大きいですね。新婚旅行とツアーで行ったんですが、街にいる人たち——特に年配の男性たちの服装を見て「これ、完全に私のスタイルだ!」って思ったんです。本当に格好よくて。それ以来、イタリアのブランド全般にすごく好感があります。全体的にセンスがいいし、自分のスタイルにもどこかイタリア的なものがある気がする。

特に好きなのは「COLANGELO STUDIO」。ツアーのときに衣装を提供してくれたブランドです。とても小さなブランドなんですが、信じられないくらいクールで。少し破れていたり、粗野でざらついた質感があって、そこが本当に好きなんです。正直、私が知っているイタリアのブランドはそれくらい。ただ、イタリアの人たちの着こなし――特に昔ながらの“良いスタイル”にはずっと惹かれています。「イタリアの農民みたいだね」って、あなた(同席したマネージャー)が言ってたけど、まさにそんな感じ。そう、「Gothic , Italian , Peasan(農民)」ね(笑)。

モノクロの美学

——今日のファッションもそうですが、ハートワームスといえばモノクロにこだわったビジュアル・イメージも印象的です。

ジョジョ:活動を始めた当初、白黒のビジュアルにこだわっていた理由は、実はすごく単純で……ただの怠惰です(笑)。色のことを考えたくなかった。音楽を出すことに集中したい時に、色で迷うのが嫌だったんです。だから白黒にした。ただそれだけで。

でも、それが結果的に特別なものになりました。色がない分、人は形やトーン、質感に集中する。余計なノイズがなくなるんです。ある意味で、「音楽とはこういうものだ」と示している感覚もあって。それに、私にとっては、色よりも白黒のほうがはるかに多くの感情を宿している。

そこから、「いかに白黒で強く、美しく見せるか」を探求するようになりました。ロゴもそうです。パンデミックのロックダウン中に、100ポンド払ってデザインを依頼したんですが、たくさん案を描いてくれて。その中に、すごく美しい星のモチーフがあって、「これだ!」と思いました。しかも描きやすい。どこへ行っても自分で描けるし、それが楽しいんです。

そういう意味で、ハートワームスが生み出すものには白黒が完璧にフィットする。“色”は音楽のなかにあるし、感情のなかにあるから。

——そのビジュアル・イメージとサウンド、そして感情のあいだにあるコントラストが、ハートワームスの表現全体を形づくっている。

ジョジョ:ただ、そもそも私は、ファッションについて深く考えるタイプじゃないんです。そういうことを考えるのがあまり好きじゃなくて。ただ着たいものを着るだけ。ファッション・ブランドの一部になるために音楽をつくっているわけではない。声をかけてくれる人がいたら応じる、というくらいの距離感です。誰かに服を“着せられる”のは、あまり好きじゃありません。自分で選びたい。むしろ、自分自身が一つのスタイルでありたいから音楽をやっている。ハートワームスにはハートワームスのスタイルがあるし、私自身にも私のスタイルがあるんです。

だから、普段はビンテージ・ショップやチャリティー・ショップに行くことが多いですね。自分の目で探して、自分で選ぶ、という感覚が好きなんです。今着ているこのブラウスもそう。1940年代、第二次世界大戦中の女性用ブラウスで、イギリスのブレッチリー・パークで買いました。あそこでは、1940年代の装いをするフェスティバルがあって、そのマーケットで見つけたんです。これは100ポンド以上したので、私にとってはかなり高い(笑)。でも、「これは唯一無二だ」と感じたときだけ買うようにしています。

「アレキサンダー・マックイーン」も本当に大好きです。「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」も大好き。心から尊敬しています。すごくクールだと思う。ただ……正直に言うと、私にはとても手が届かない。買えないものに執着しすぎるとつらくなってしまうから、意識的に距離を取るようにもしています。でも、それでも憧れはあるし、そういう存在があるからこそ、“じゃあ自分は何を着たいんだろう”って考えるきっかけにもなるんだと思います。だから、もし誰かが無料でくれるなら……喜んで(笑)、ですね。

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