ファッション

「サカイ」のバックステージ撮影スタッフに一時退出命令! コレクション・バックステージ録

 2009年から「WWDジャパン」のバックステージ・フォトグラファーとして海外コレクションを撮影する景山郁が、現場で見た最新トレンドや業界ルール、珍事件などを紹介します。世界でも限られた媒体やフォトグラファーのみが入場を許されるファッションショーの舞台裏での出来事をお届け!

今回のテーマ:「サカイ」のバックステージで考えさせられたモデルの着替え中のプライバシー

 「サカイ(SACAI)」はここ最近、「ステラ マッカートニー(STELLA MCCARTNEY)」のショーの後に発表しています。また、売れっ子モデルを起用するので、「ステラ マッカートニー」のショーにも出演する人気モデルが10人前後そろいます。そのため、「ステラ」のショーが終わると大急ぎでモデルたちは「サカイ」のバックステージにやって来ます。

 今回もいつもと同じように、遅れて来るモデルたちを、スタッフとほかのモデルが待っていました。ヘアメイクを済ませたモデルは「サカイ」の美味しいと好評のケータリングを口にしながらおしゃべりをしたりと、遅れて来るモデルが来るまでバックステージはゆったりとした雰囲気に包まれていました。

 私はビューティの撮影とインタビューを終え、スタッフに指示されたスペースで残りのモデルを待っていました。ようやくモデルたちは着替えるように指示されると、モデルのキキ・ウィレムス(Kiki Willems)が進行スタッフに一言。「ここで着替えるとカメラを持った人の横でプライバシーがない、どうにかして」 。(気になるのはごもっとも)!

 そのスタッフは元々設置してあったパーテーションを少し移動させてフィッティング(着替え)スペースを隠そうとするものの、他のモデルが「着替え中はフォトグラファーを外に出してほしい」とコメントし、最終的に私たちはその部屋から出ることになりました。ちなみに(会場にもよりますが)、「サカイ」では基本的にフィッティングルームはヘアメイクの場所とは違う場所に設置されることが多く、モデルへの気遣いを感じます。

 今回は会場の都合上、パーテーションで撮影場所とフィッティングスペースを区切ってモデルのプライバシーを尊重していました。バックステージのスペースが狭いと、フィッティングスペースと撮影スペースが同じ場所だったり、隣り合わせになってしまうことはよくあることです。特にミラノコレクションは狭い会場が多いためか、その可能性が高いです。ニューヨークは結構前からフィッティングルームをヘアメイクルームとは別にしているブランドが大半だったのを覚えています。特定の取材パスがないとフィッティングルームには入れないほど、セキュリティーがしっかりしているブランドも多々あります。パリでコレクションを発表する「オフ-ホワイト c/o ヴァージル  アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」は着替え用のテントがあったりするくらいです。恐らくアメリカとヨーロッパの文化の違いも影響していると思います。

 何にせよ、大勢の人、しかもカメラやビデオカメラを持った人たちの前で着替えなければならないモデルたちの気持ちを想像すると、本当に痛々しいです。10年近く前のことでしょうか、私がまだバックステージで撮影を始めて間もないころは、ミラノとパリのバックステージで活躍する女性フォトグラファーは本当に少なかったです。モデルの着替え待ちをしている間、私は(モデルに気を遣って)モデルがいる部屋ではなく、フォトグラファーやビデオグラファーが立っている方向に視線を向けていました。そのときに気づいたことは、男性フォトグラファーが着替えているモデルを凝視してる数の多いこと!しまいにはこっそり着替え中を撮影したり録画する人までいました。完全にプライバシーの侵害ではありませんか!当時はそこまで大きな問題として扱われていませんでした。盗撮している人に直接話しかけたり、スタッフに通報したこともありますが、深刻に受け取られていなかったのを同じ女性の立場としても本当に残念に思ったのをはっきりと覚えています。

 今はフェミニズム運動や業界のセクハラ問題なども大きく取り扱われるようになり、そういった環境はかなり改善されてきています。そのため、着替え中の退出命令は増加傾向にあります。今後はどこのブランドのバックステージでも、モデルの着替え、そして彼女たちのプライバシーに関してはデリケートになってもらいたいものです。

景山郁:フリーランス・フォトグラファー。2003年からフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。07年に渡米、09年より拠点をパリに移す。10年から「WWDジャパン」でパリ、ミラノなどの海外コレクションのバックステージと展示会などの撮影を担当。コレクション以外にもポートレート、旅やカルチャーなどエディトリアル、広告を手掛ける。プライベートでは動物と環境に配慮した生活をモットーにしている

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